「予感の物語」

文字数 1,999文字

 NITRODAYの「少年たちの予感」について語りたいと思います。

 その前にボクがNITRODAYをどうして好きになったかを伝えなきゃいけない。

 まず、NITRODAYはボクたちにとても近いところにいるバンドだと思うんだ。
 歌詞なんだけど、自分では思っていても言葉にすることが難しいことってたくさんあるよね? 例えば、自分がみんなとは違うって思うこと、自分に自信がなかったり不安を持ちながら毎日を過ごしていること、とか。そんな気持ちをNITRODAYが言葉に表してくれると、ボクたちと一緒なんだ、って思えてくる。それに曲をつけて演奏してくれるなんてスゴイじゃないか!
 あと、メンバーの格好のこと。これも親近感を与えてくれる。ロックっていうと自分たちは普通の奴らとは違うアピールをする人もいる。でも、NITRODAYはカジュアルで見た目には全然こだわっていない。街中や電車ですぐそばにいるような感じがいい。格好でなくて中身で勝負っていうところがカッコいいんだよな!

 そして、NITRODAYの音楽、楽器のこと。
 ロックにもいろんな種類があるんだ。その中でも不安や抑圧された思いを、テンション高いドラムやベースのリズム、エッジの効いたメロディアスなギター、エモーショナルなボーカルで表現する「グランジ」っていうのでNITRODAYは音楽を聞かせてくれる! 今のボクたちの気持ちを一番良く表してくれる音楽じゃないか!

 楽器はドラムにベースとギター×2! 普通のロックならここでキーボードとギターっていう編成なんだけど、NITRODAYは「グランジ」とギターの音にこだわりがあることをハッキリと宣言しているんだ!

 うまく伝えられたか自信はないけど、これがボクがNITRODAYを好きになった理由なんだ。

 ここからは「少年たちの予感」について語るね。

 他の人みたいな“カッコいい”ことはできないけど、自分には音楽がある! しかし簡単にはいかないことも分かっている… でも、それしか自分にはない、っていう思いを元気が良く広がりのある曲で表した「ヘッドセットキッズ」。アップテンポのドラムにベースがうねり、ギターはジェットサウンドで疾走し、叫ぶボーカルは希望か諦めか… 檸檬のように爽やかさと苦酸っぱさが混ざって苦爽やか。

 メランコリーでロマンス映画のような恋を楽しむ二人。いつもと違う感じにドキドキだけど、結末はまだ先延ばし…という気持ちを描き出す「ダイヤモンドキッス」。飛び跳ねるドラムにデートを楽しむノリノリベース、高ぶる思いを厚めのリフとコーラスをかけた爽やかアルペジオで表すギターズ、ダブルボーカルが恋人たちの幸せで不安な気持ちを紡ぎ出す。林檎のように甘さとシャキシャキした感触が混ざり合う。 

 何かに吸い込まれそうな不安がありながら一人でいたい思いを、静けさにアグレッシブさが混ざる曲で表現している「ブラックホール」。ninoheronとの共演でラップの陰影と凄みが曲に溶け込んでいる。タイトドラムとビートフルベースによるグルーブ、リフの繰返しで抑えた余韻を感じさせるギターズ、韻を踏んだリンスにこだわるボーカル。葡萄のような色彩の豊かさとエグ味を一緒に味合わせてくれる。 
 
 怒りや不安のあふれ出る気持ちをそのまま剥き出しで表現した、予感の最後の物語「アンカー」。抑圧に対抗するパワフルドラムと厚みのあるベース、自由に動き回るギターズのコードバッキングと音のすき間を縫うプレイが見事で、投げやりのようでありながらコントロールされているエモーショナルなボーカルが花を添える。一見感情のほとばしりに過ぎないように見えるこの曲も実は緻密な計算によることを感じさせる。

 このほか、今までの発表曲のライブ演奏が含まれている「少年たちの予感」。今のNITRODAYを今感じて欲しい!


 
 「熱い… 長い… そしてところどころ意味分かんない…」

 私は山崎君からもらったNITRODAYの紹介の手紙(本人はレビューって言ってたけど)を見ていたところ。一緒に貸してもらったカセットテープ(今どき…)を前に途方に暮れている。手紙を受け取った時に少しは期待してたんだけどね、山崎君…

 「あの嬉しそうな笑顔でこれだけの思いを託されたら、聞かない訳にはいかないよ…」

 本当にカセットテープ聞くだけでも一苦労なんだから。でも、いったいどんな音楽なんだろう?

 「山崎君はとっても気に入っているみたいだけど、その良さが私にも分かるかな?」

 私って今までクラシックしか聞いてないから、ロックの良さが分るか不安になってきた。

 「ここは当たって砕けろ、ね…」

 お父さんに借りて来たラジカセにNITRODAYのカセットテープを入れてプレイボタンを押した。
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