第1話
文字数 999文字
今日俺は、世界が変わる瞬間を見た。
うそだ? いやいや、ほんとだよ。
身をもって体験したんだから間違いない。
自信を持って言える。
世界なんて、瞬きする間に変わるんだって。
今日、高校の卒業式で俺の学ランのボタンは完売した。
ほんとに売ったわけじゃない。でももし売ったらプレミアがついたかもな。
自慢話はよせ? 違う。こいつが災難の始まりだったんだ。
とにかく、クラブの後輩の子たちに囲まれて浮かれた俺は、幼馴染の由香との約束をすっかり忘れちまってた。由香が来た時には、ボタンは全部無くなって、学ランはだらしなく開いたままだった。
文句を言われるだろうなと覚悟したら、なんとアイツ泣いたんだ。あんなに気のキツイ女が泣くなんて。びっくりだ。
そんなひどいことしたつもりはなかったんだけど。
なんか罪悪感っての?そんなので胸が痛くなったよ。
アイツそのまま走って逃げちゃってさ。
120パーお前が悪いって女どもにつるし上げられるし、散々な卒業式だった。
仕方なく、帰りに花屋で薔薇を一輪買って、由香の家に行った。
俺と由香は、子どもの頃からお互いに気になるけど素直になれない腐れ縁で、そうしてるうちに、いつか彼氏彼女になるかもなあ。くらいに思ってた。
あったかくなったり寒くなったりを繰り返して、季節が冬から春へ移ろってく。そんなふうに、ゆっくりと俺たちも変わってくんだって。
だけどそいつはとんだ見当違いだったって、すぐわかった。
花を抱いた由香が、まだ赤い目で、嬉しそうに俺に向かって微笑んだ瞬間。
世界が鮮やかに色づいたんだ。
見慣れた制服の見慣れた髪型の由香。こんなに綺麗な女の子だったっけ。
突然、心臓が暴れ出した。いつもより早く収縮を繰り返して、全身に血液を巡らせる。なんでいきなり仕事熱心になったんだ? おい!
答えは決まってた。
恋に落ちてしまったからだ。
どうしたらいいんだ。とにかく戦略的退却だ。決して敵前逃亡じゃないぞ。
走れ!
24時50分。
そういうわけで、俺はまだ眠れないでいる。
あー、由香に何て言おう。
今までこんな悩みとは無縁だったのに。めんどくせーと思ってたのに。
由香とのこの先を思ってワクワクしてる自分に、実は驚いている。
明日は単なる今日の続きだ、くらいに感じてるだろうけど、明日、おまえの世界も変わるかもしれないぜ。
それはきっと瞬きひとつする間のことさ。
うそだ? いやいや、ほんとだよ。
身をもって体験したんだから間違いない。
自信を持って言える。
世界なんて、瞬きする間に変わるんだって。
今日、高校の卒業式で俺の学ランのボタンは完売した。
ほんとに売ったわけじゃない。でももし売ったらプレミアがついたかもな。
自慢話はよせ? 違う。こいつが災難の始まりだったんだ。
とにかく、クラブの後輩の子たちに囲まれて浮かれた俺は、幼馴染の由香との約束をすっかり忘れちまってた。由香が来た時には、ボタンは全部無くなって、学ランはだらしなく開いたままだった。
文句を言われるだろうなと覚悟したら、なんとアイツ泣いたんだ。あんなに気のキツイ女が泣くなんて。びっくりだ。
そんなひどいことしたつもりはなかったんだけど。
なんか罪悪感っての?そんなので胸が痛くなったよ。
アイツそのまま走って逃げちゃってさ。
120パーお前が悪いって女どもにつるし上げられるし、散々な卒業式だった。
仕方なく、帰りに花屋で薔薇を一輪買って、由香の家に行った。
俺と由香は、子どもの頃からお互いに気になるけど素直になれない腐れ縁で、そうしてるうちに、いつか彼氏彼女になるかもなあ。くらいに思ってた。
あったかくなったり寒くなったりを繰り返して、季節が冬から春へ移ろってく。そんなふうに、ゆっくりと俺たちも変わってくんだって。
だけどそいつはとんだ見当違いだったって、すぐわかった。
花を抱いた由香が、まだ赤い目で、嬉しそうに俺に向かって微笑んだ瞬間。
世界が鮮やかに色づいたんだ。
見慣れた制服の見慣れた髪型の由香。こんなに綺麗な女の子だったっけ。
突然、心臓が暴れ出した。いつもより早く収縮を繰り返して、全身に血液を巡らせる。なんでいきなり仕事熱心になったんだ? おい!
答えは決まってた。
恋に落ちてしまったからだ。
どうしたらいいんだ。とにかく戦略的退却だ。決して敵前逃亡じゃないぞ。
走れ!
24時50分。
そういうわけで、俺はまだ眠れないでいる。
あー、由香に何て言おう。
今までこんな悩みとは無縁だったのに。めんどくせーと思ってたのに。
由香とのこの先を思ってワクワクしてる自分に、実は驚いている。
明日は単なる今日の続きだ、くらいに感じてるだろうけど、明日、おまえの世界も変わるかもしれないぜ。
それはきっと瞬きひとつする間のことさ。