第2話 料理

文字数 1,061文字

 お昼前。
「せいちゃんは、ご飯は食べるの?」
 分体って、ご飯たべるのかな。ふと、疑問に思った。
「せいかは分体だから、食べなくても生きていけるよ。でも、食べることも出来る」
「そっか。食べるのは好き?」
「うん、好き」
 最近、あんまりちゃんとご飯を作っていない。出来合いのものを買ったり、億劫だったらそもそも食べなかったり。でも、せいちゃんがいるから、ちゃんとしたもの作った方がいいかなって気持ちになった。
 せいちゃんは食べなくてもいいって言ったけど、私が食べてる横でほったらかしにしちゃうのも、どうも気まずい。
「じゃあ、なんかお昼ご飯作るね」
「やった」
「何が好き?」
「うーん、パスタとか、オムライスとか、あとチーズケーキ」
 嬉々として目をきらきらさせて答える。
 私の好きな食べ物と同じだなあ、さすが、分体。
「じゃあ、今日はナポリタンにしよっか」
「うれしい」
 近所のスーパーまで、具材を買いに行く。せいちゃんと一緒に外に出るのは初めてだった。周りの反応がちょっと気になったけど、特に好奇のまなざしを感じることもなく。思えば私も何回か分体を連れた人を見たことがあるけれど、別に気にも留めなかった。珍しいとはいえ、分体と一緒の人は、たまにいるからね。
 私は、具沢山のナポリタンが好き。ピーマンや玉ねぎ、ベーコンといった定番どころの他に、ほうれん草とか、なすびとか、マッシュルームとかを入れる日もある。今日は、ほうれん草を入れることにした。
「せいちゃん、どれくらい食べるの」
「聖良とせいか、あわせて一人分でいいの」
「そうなの?」
「うん。分体だから。せいかが食べた分も聖良のエネルギーになるの」
 なんだか、不思議な話だ。けど、私はセイブツガクやイガクの専門家じゃないから、難しいことは考えないことにした。
 パスタを半分に折って、フライパンでゆでる。うちには大きなお鍋がないから、仕方ない。苦肉の策だ。ぐつぐつとパスタをゆでる片手間に、具材を切ったり洗ったりする。
 料理自体は嫌いじゃないけど、最近ずっとしてなかった。自分のために作って、自分一人で食べるのって、味気なくてモチベーションが上がらなかったから。
 せいちゃんが食べるなら、これから、ちょっとはちゃんとしたものを作ろう。
「よし、できた」
 私の分と、あとせいちゃんの分を小さめのお皿に取り分ける。
「聖良、めっちゃおいしい」
「おいしいね」
 誰かと一緒に食べるのって、久しぶりだな。いつもより楽しい。ご飯をたべる、みたいな日々日常の営みが楽しいと思えるのは、大事なことだなって思った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み