第1話 恋愛迷子

文字数 596文字

〇駅前(夜)



   女のところへ男がやってくる。

「お待たせ!」

「(指さして)遅い!」

〇居酒屋・店内(夜)



   お酒を飲んでいる男と女。



   乾杯。

「好きなヤツとかいないの?」

「いませんよ。好きな人ができたら一番に報告いたします!」

女、お酒を飲みながら、ハッとする。

(あっ! 間違えた! これじゃあ、あなたは恋愛対象じゃありませんって、線を引いたと思われちゃう!)

女、男の方を見る。

「その報告、楽しみにしてるよ」

男、酒を飲む。

(あれ!? 逆に線を引かれた!? それともこれは私に興味ないフリをして、気を引こうとしているというやつですか!? 全然わからない……!)

〇駅前(夜)



   男と女、並んでいる。

「明日も仕事だ!」

「確かに!」

「明日も頑張ろう! えいえいおー!」

「おーっ!」

笑いあう男と女。

〇駅・ホーム(夜)



   女、ホームにやってくる。

(はたから見れば、私たちはバカみたいなカップルなのだろうか……)

反対のホームに男。




女、男に手を振る。




男、女に手を振り返す。

(ああ……。あなたは気づいていない。私はあなたが好きなのだ。でも、臆病な私にできるのは『また明日!』とおやすみの挨拶を交わすことだけなのである!)

ホームに電車が入ってくる。

〇走っている電車・車内(夜)



   窓の外を物憂げに見つめる女。

(答えの出ない迷子の私は一体どこへ向かっていくのだろう……)
おわり
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