ぷろろおぐ

文字数 467文字

 女は後ろを向いた。微かな衣擦れの音がしたかと思うと、(うなじ)から右の肩あたりまでの(はだ)が露わになった。
 一点の穢れなき乙女の雪の膚が、羞恥で桜色に染まっている。
 (びん)のほつれが行灯の明かりを受けて光り、えも言われぬ(なまめ)かしさだ。
 ごくり、と男の喉が鳴った。
 蠱惑(こわく)的な芳香が鼻孔を()つ。髪油でも、この年齢の娘に特有の甘い膚の匂いでもない。これはそう――
 雪白の膚の下を熱く流れる乙女の血潮の香。
 脳が沸き立つようで、ともすれば理性が吹き飛びそうになる。
「よ、よいのか。し、しかし――」
「女に何時(いつ)までも恥を見せるものでは……は、はやく……」
 絶え入りそうな声だった。
 男の身体の奥底から、嵐のように荒れ狂う衝動が湧き上がる。それはどこかに放出しなければ、己の身を滅ぼしかねぬ凄まじい威力を有していた。
 ふっと行灯の()が消えた。
 漆黒の闇が部屋を閉ざす。
 刹那。 
「――あぁっ」
 小さい悲鳴が上がった。
 やがて、微かな欷歔(ききょ)の声が闇の中に溶けてゆく。

 奇妙なことに、それは苦悶の声というより、むしろ何処(どこ)か甘えるような、切ない響きを帯びているようだった。
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登場人物紹介

妹・ひさ江(作中では武家の娘だが、もし現代人だったらこんなイメージ)

Q:神崎将夜に対する気持ちを一言で表すと?

A:すごく心配です。

美少女剣士・瑠璃(町道場の女剣客だが、もし現代人だったらこんなイメージ)

Q:神崎将夜に対する気持ちを一言で表すと?

A:生意気だ、神崎将夜のくせに。

女医者・志乃(町医者の娘だが、もし現代人だったこんなイメージ)

Q:神崎将夜に対する気持ちを一言で表すと?

A:命の恩人として感謝してもしきれません。

くノ一・桔梗(公儀隠密であるお庭番の忍者だが、現代人だったこんなイメージ)

Q:神崎将夜に対する気持ちを一言で表すと?

A:…………。

おみよ(居酒屋で働く娘だが、現代人だったらこんなイメージ)

Q:神崎将夜に対する気持ちを一言で表すと?

A:すてきなお武家様です。宗助様のお友達でなければもっといいのですけれど……


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