第17話 種原山自然公園内、脳機能研究センター

文字数 914文字

バス停で困惑するクローブ。
さっきのお爺さん、私が流氷に落ちて死ぬって言った。


どうして私の流氷が見えたの?

クローブは、お爺さんからもらった名刺をひっくり返す。


そこには脳機能研究センターの簡単な地図が載っていた。

あ、ここって図書館裏の種原山自然公園だわ。


昔、お兄ちゃんが生きていて、お父さんとお母さんが仲良かった頃、みんなでよくハイキングに行った……

あそこにそんな建物なんてあったかしら。

ちょうどそこに、種原山自然公園行きのバスが来た。

急に衝動が走り、バスに飛び乗るクローブ。


引っ込み思案で慎重なクローブにしては、とても珍しい行動だった。


20分後、終点の種原山自然公園に到着する。

バスを降りると、さっきのお爺さんが交通安全の旗を振って立っていた。

ようこそ、来てくれると思っていたよ。
驚くクローブ。
どうやって移動したの?っていう顔だね。


私はホウジ。『緑のおじさん(ナビゲーター)』です。

みんなが道に迷わないための案内役さ。


さあいらっしゃい、同年代の子がたくさんいるよ。今年は豊作の年だ。

なだらかな山道を少し登ると、大学のような最新設備の建物の裏側に、木造の校舎が見えてきた。


校舎の入口で、高校生の男女が言い争いをしている声が聞こえる。



また君たちか。もうエスケープはしないでくれよ。


君たちをスカウトした私の立場も考えておくれ。

ちょっと、緑のおじさん!


私達女子だけのチームにしてよ!

そうだよ、ジジイ。

こいつらと組むなんて聞いていなかったぜ。

こっちだって、ギャーギャーうるせえブスの相手なんかしたくねえんだよ。
なんでこいつらとセットなんだよ、緑の爺さんよ。
アルゴリズムで最適解なのさ。


喧嘩するほど仲がいいって言うじゃないか。

君たちが起こす衝突や摩擦は、絶妙な化学反応になるらしいんだ。

停滞は悪だからね。

(停滞は悪、それはわかるような気がする)
私は認めない。
ジジイは小難しい話でアタシらを煙に巻こうとするけど、騙されないぜ。
ホウジさん、その子は?
クローブはホウジの影に隠れながら、小さい声で、
こ、こんにちは。
私がスカウトしたての子さ。


シャイな子みたいだね。でもスキルは、みんなのように見所ありそうな原石なんだ。

へえ、なんか俺達と違って賢そう。
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