第二幕(4)

文字数 437文字

僕がそりの引き具を外すか外さないうちに、エストラヴェンはさっさとテントを張ってしまった。そして僕に中に入って寝ろと言うのだ。

――大丈夫だって。

いいから、早く。
じゃ、せめて食事を作るよ。
寝てなさい。
ハース。
うん?
なんで、そう、いつも、上から目線なの?
ウエカラメセンって、何?
そこから説明しろってか?!
何を怒ってるの? そんなことより、体調が悪いときは、悪いとはっきり言おうね。
(ぶつぶつと)だから、そういう言い方が。
何か言った?
別に。今日は、何キロ進んだ?
(優しく)8キロ。
(落胆)ノルマの半分以下だ……
気にしない。

エストラヴェンは庇護者面[づら]をしたわけではなかった。僕が病気だと判断し、迅速に対応しただけなのだ。

だけど、やっぱり、くやしい。だって向こうのほうが僕よりずっと背が低いし、体つきもぽちゃぽちゃだし、いっしょにそりを引くとき、僕は力も歩幅も合わせてセーブしてやっているのに……

よく休みなさい。まだまだ先は長いのだから。

くそっ。明日は絶対、20キロ突破してやる!

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登場人物紹介

ゲンリー・アイ

地球出身。惑星同盟《エキュメン》の特使。惑星《冬》ことゲセンに単身降り立ち、カーハイド帝国の皇帝に開国をうながす。長身。性格は誠実で直情的。推定される容貌はアフリカ系。男性。

セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェン


ゲセン出身。帝国カーハイドにおける《王の耳》(宰相に相当する最高実力者)。ゲンリーの使命の重要性をただ一人理解する。やや小柄(ゲセン人の平均的体躯)。性格は慎重かつ大胆。推定される容貌はアジアあるいはエスキモー系。中性(両性具有)。

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