第13話 町長(マスター) 

文字数 2,641文字

「どりゃゃゃゃ!!!」

ガンッ

ヒュー

ドガガガッ

マーニさんが刀剣を野球のバットのようにフルスイングすると、飛ばされた敵であるレギオンは、後列にいる仲間たちもろとも弾き飛ばし、動きを止めた。

「ありがとう、マーニちゃん。
ここで一気に仕留める!!!
失楽園(ロスト・アヴァロン)」
パチンッ

そこに先生がその術式を唱え、指を鳴らすと草原に包まれた大地からリンゴの木がいくつも生えて、立ち上がろうとするレギオン達を一斉に串刺しにし、破壊した。

だが、それでも続々と敵は飛行艇から降り立てきた。

どうする、今はいいけどこのままだと、みんな魔力切れになって敵に捕まってしまう。

「マコト、アスラ、手伝ってくれないか」

バサッバサッ

「うわっ!!!」

突然、空から翼の音声が聞こえたと思ったら、目の前に現れたのは水のような色をしたウロコに包まれた、自身の数倍の大きさを持つドラゴンが現れた。

「そのドラゴンはマスターですよ」

隣にいたアスラさんの言う通り、ウロコのところを見てみると液状になっているところもあり、確かにドラゴンはこんなものはないけど、ここまでそっくりになるなんて、マジックスライムといい、この世界には不思議な種族が沢山いることに心を躍らせた。
そうやって興奮していた俺にマスターは恥ずかしそうに空を見上げながら話した。

「まぁ、とりあえず行こうか」

バサッー

そして、俺たち二人が背中に乗ると、翼を羽ばたかせ一気に飛行艇と同じぐらいの空まで飛んだ。

バッ

ウィーン

それを知ったのか、飛行艇は砲台を続々とこちらに構えた。

「一気にあの飛行艇に近づくから、しっかりとつかまっといてくれ」

ガチャ

マスターが近づくと同時に一気に放った。

ボンッ
 ボンッ
  ボンッ

「あぁ、すまないがマコト、あの数はボクでは全部は防げない量の砲弾だ。
さっきの使ったマギアで防いでくれ」

確かにこんな砲弾の壁、さすがに魔力を使うマスターでは防げない。
でも俺にはこの力がある、なら全力でするまで。

「分かりました、強者のマギア展開!!!」

ぐぅいん

ババババッ
 バババッ

砲弾に強く壊れるようにイメージしながら手をかざすと、一気に弾丸は破壊した。
そう、砲弾の目の前に小さなマギアのシールドを作り、魔力切れになるためできるだけ最小限のマギアだけで済ました。

ヒュッ

しまった、一つ逃した。

ガンッ 
 バンッ

すると、その逃してしまった砲弾は氷の塊のようなものが飛んできて破壊された。

「マコトは集中してください、残ったものは僕が撃ち落としますので」

「いやいや、本当に君には驚いたよアスラ。
ここまでとっさに氷魔術を使い、撃ち落とすのだから。
まったく、その機転と魔力量があれば十分に魔王軍の幹部になれるよ。
将来はボクもゆっくりできるよね」

「すごいなアスラさんは、でも俺も負けないからな」
   
「ふふっ、その気持ちを大事にしてください」
あっ、いつもはクールなアスラが少し微笑んだ。
なんだろう、ちょっとギャップでかわいいと感じてしまった。
でもそんなこと言うと、怒っちゃうかもね。

そして、俺たちは放たれる砲弾を次々と壊し、すり抜けて徐々に飛行艇に近づいた。
そして、俺のマギアを使い飛行艇にも張り巡らせている遮断シールドを無効化させた。

「マスター、今です」

「あぁ、二人とも僕の全力を放つしっかり捕まっていろ!!!」

そして、俺たち二人が振り落とされないようにしがみつくことを確認して、マスターの体に様々な魔法陣が浮かび上がり、そこから生じた光が彼の頭に集中して、太陽にも負けない光を放つ光球を作り出した。

そして高く持ち上げた頭を振り下ろすと、その光球は発射されて飛行艇に向けて直撃した。

バーンッ

直撃した瞬間、目を覆うほどの閃光が辺りに降り注いだ。
とっさに目を隠した、いやぁマスター凄すぎるでしょう。

そしてしばらく、閃光が収まり飛行艇を見ると、飛行艇の先端部分は完全に溶け落ちて無くなっており、全体として溶けかけていた。

「まぁ、ここまで損傷すれば相手も退くだろう、もう降りるかも、彼らも無駄な争いは避けたいと思うからね」

「マスターにこんな力があったなんて」

「まぁ、これでもモルガーナと同じ魔王軍幹部だからね」

「えっ?」

「んっ、どうしたんだいマコト?」

「マスターって、魔王軍幹部だったんですか」

「あっ、しまった、内緒にしていたんだった。
まぁ、そうボクは元魔王軍幹部のマキュリーだよ」

「えぇぇぇ!!!」
ウソッ、まさかマスターがあの街のみんなに慕われている魔王軍幹部のマキュリーさんだったなんて。

✳︎✳︎✳︎

そして、俺たちが地上に降り立つと、対魔獣兵器レギオン型も飛行艇を攻撃したからなのか、完全に動かずに立ち止まったままだった。

そして、マスターがマキュリーさんだとモルガーナさん達にも言うと。
「わはははっマキュリー、アンタって浮かれすぎて正体明かしたの。
あーあ、おかしい」
先生は大笑いしていた。

「まぁ、やっちゃったよね。
久しぶりの戦いだからテンションが上がっていたようだ」
マスターも少し苦笑いしていた。

「ところでマーニちゃんは知っていたの」

「確かに私が魔獣に負けたとき、いつも助けてくれたりしたから疑ってはいたけど、やっぱりマスターだったんだね。
遅れたけどあの時はありがとう、マスター」
そう言われるとマスターは照れ笑いしながら頭をかきながらあさってのほうを見ていた。

「まぁ、別にマーニはボクの娘だからこれぐらいは当たり前さ」

あの時、マスターがマーニさんを守って欲しいと言う気持ちといい、やっぱりマスターは彼女のことを大切に思っているんだな。
ちょっとこっちまで感動して涙が出そうになりそうだった。

「ヒュー、かっこいいパパね、アタシは涙が出る。
誰か、誰かハンカチくださーい」

「フッ、冷やかす前に君も早く相手を見つけたらいいんじゃないのか」

「ハッ、ちょっとマジありえないんですけど。
マキュリー、アナタの苦手な氷結魔術アイス・リベリオンで凍らせようか」
先生は微笑みながら手には冷気をまとわせていた。

「あぁ、ごめんごめん」

「アハハハ」
あまりの先生の逆ギレっぷりに俺とマーニさんはもう苦笑いするしかなかった。

アスラさんは何をしているのか思い、彼を見ると何やらこちらを心配そうな顔で見ていた。

「マコト、ちょっと顔色悪くない」

「えっ、そうかな。
確かにちょっと気分が悪いよう……」
すると全身の力が無くなった感触に襲われた。

バタンッ

「マコト!!!」

アスラさんに呼びかけられたのを最後にここから先の記憶は俺にはなかった。





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