竹青(1)

文字数 615文字

 むかし、中国のいなかの村に、魚容(ぎょよう)という名まえのわかものがいました。顔も心もきれいで、まじめな、よい人でしたが、どういうわけか、運のない人でした。
 早くに親をなくし、親の残してくれたお金も、親せきの人たちにだんだんとられてなくなってしまい、いまではすっかりびんぼうです。
 それでも魚容は、いっしょけんめい努力すれば、いつかいいことがあると信じて、まいにち、勉強をつづけていました。



 ある日、親せきのおじさんが、よっぱらって上きげんで、いいました。
「魚容、おまえもそろそろ、結婚しなさい。わしがいいよめさんを見つけてあげよう。ういー。ひっく」
 魚容はこまってしまいましたが、しかたありません。おじさんのいうとおり、結婚しました。

 ざんねんなことに、このおよめさんは、顔も、心も、あまりよくない人でした。
「あなた、本ばっかり読んでないで、お金をもうけてきてくださいな」
「むりだよ。わたしには、むいていない」
「まあ、やくにたたない人ね。じゃあ、川へ行って、おせんたくしてきてちょうだい。あたしは、つかれてるんだから。ほら、さっさと行ってきて」



 気のよわい魚容は、いいかえすこともできず、とぼとぼと川へ行って、よごれものをあらいながら、
「あーあ……」
と、ためいきをつきました。
「こんなことじゃ、いけない。ようし、わたしは、お役人になる試験を受けよう。そうしてみごとに合格して、うちのおくさんも、親せきの人たちも、みんな見かえしてやるんだ」
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