第1幕 Introduction
文字数 982文字
とある事務所内。局長がデスクで新聞を読んでいる。ドアをノックする音。
はい。
おぅ。すまんな、突然呼び出したりして…。
どーいったも、こーいったも……。
実はな、今日ここに呼び出したのは他でもない。あまり大きな声では言えんのだが……。
まぁ、まずはこれを見てくれ。(何枚かの資料を手渡す)
分からんかね。その線と数字が何を意味しているのか…。
そのまさかだよ。ここ数ヶ月の我が「クリスチャンネル」の月間視聴率の推移だ。
まぁ、君も重々承知のこととは思うが、我が弱小ケーブルテレビ局は、クリスチャン人口が多少なりとも増えたとはいえ、もともと非常に少ない限られた視聴者をターゲットにしているわけで、ある程度の覚悟はできていた。
しかし、しかしだ。
この数字は何だ。ぇえ!? いまどきテレビ〇〇でも取らんぞ、こんな数字。
はぁ、じゃ済まんのだよ、はぁじゃ!
いいか?
これはこの「クリスチャンネル」にとって、局の存亡がかかった大問題なのだよ。
いいや、分かっとらん。局内の誰一人として分かっとらん!
そうだ。そこで、だ。
かつては局内随一の敏腕プロデューサーと呼ばれた君の腕を見込んで、一つお願いしたい。
この危機的、末期的状況を打開するために、起死回生、一発逆転ホームランとなるような、特番を撮ってもらいたいのだよ。
我々も一蓮托生。死なばもろともだ。
あほぅ!! この期に及んで神も仏もあるか!
我々の運命もそれに託すしかないと、そう言っとるのだ。
いいか? 今年の年末が運命の別れ道だ。
もし仮に、これがコケるようなことがあったら、その時はわしら全員クビだ!
マジもマジ、大マジだ。頼んだぞ!