somewhere -3-
文字数 395文字
〈それ〉は声を殺して泣いていた。
様々な記憶が、次から次に〈それ〉の脳裏に閃いては消え、閃いては消えを繰り返してゆく。〈それ〉は混乱の境地にあった。
〈それ〉は息も絶え絶えに、何か喚き続けていた。そうしている間も、フラッシュバックは止まらない。〈それ〉は首を横に振り、頭を抱えて泣いていた。
覚えていない、知らない、俺は悪くない。……――〈それ〉はとにかくこの三つを繰り返し、泣き喚いていた。
〈それ〉が、はたと動きを止めた。
海。
海、と、そう呟いた。すると〈それ〉は糸の切れた操り人形のように、ぷっつりと動かなくなった。