◆01それは心に起こる-Ⅶ 美貌の弟子

文字数 498文字

 最後の一人が去りました。
 あなた様と(くだん)の女、それにこのヨハネのほかは、もう誰もおりません。先ほどの一言のあと、ずっと指で地面になにか書くふりをしていたあなた様も、やっと身を起こされて、ヨハネもほっといたしました。

「婦人よ、あの人たちはどこにいるのか。だれもそなたを罪に定めなかったのか」
「主よ、だれも」
 あなた様がかけた言葉に、女は泣きじゃくり、両手で顔を(おお)っています。
「わたしもそなたを罪に定めない。行きなさい。これからは、もう罪を犯してはならない」
 二度もうなずいて女は去っていきました。

 あなた様は、なんというお方でしょう。
 人は死後のことを知りたがり、神を信じる根拠として、奇跡のしるしを求めます。
 でも奇跡とは、湖の上を歩いたり、パンや魚を増やしたり、盲目(もうもく)の者に光を見せたり、死んだ者を生き返らせたりすることではない、あなた様はそうおっしゃりたいのではありませんか。
 まことの奇跡とは、今日ここに集まった者たちの心に起きたようなことであると。

AAΛY(アーメン・アーメン・レゴー・ヒューミン) ヨハネによる福音書8:1~11
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