第19話 おじさんはネタバレを書く

文字数 16,353文字

(19)おじさんはネタバレを書く

おじさんは異世界恋愛ファンタジー的なミステリーを書き上げた。
今回はミステリーのネタバレです。
分かった人は見なくても大丈夫です。

おじさんは異世界恋愛を書くと宣言しました。

なぜなら、題名が『異世界ラブ(恋愛)』

ダジャレですね。
おじさんですから・・・

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題名:イニシエーション・異世界・ラブ
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<登場人物>
【第1章:肉食系女子は王子を狩りに宇宙を旅する】
・マリア・コリンズ:第1章の主人公
・マーク・コヴィントン:コヴィントン惑星の王子

【第2章:草食系王子は王女を求めて宇宙を旅する】
・マーク・クレイ:第2章の主人公
・マリア・クーパー:マークの結婚相手

<目次>
第1章 肉食系女子は王子を狩りに宇宙を旅する
1.そして私は王子を探す旅に出る
2.オラオラ系にメンタルをやられる肉食系女子
3.肉食系女子はバカに疲れる
4.肉食系女子にも息抜きが必要
5.肉食系女子はパリピになれない
6.肉食系女子は青年と再会する
7.肉食系女子は好青年との結婚を迷う

第2章 草食系王子は王女を求めて宇宙を旅する
1.僕は王女を探す旅に出る
2.僕はメンヘラの扱いが上手くない
3.僕は運動がそんなに好きじゃない
4.僕も優柔不断だけど・・・
5.金銭感覚は重要かもしれない
6.僕はスパイを尾行する
7.健やかなる時も、病める時も

<本文>
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第1章 肉食系女子は王子を狩りに宇宙を旅する

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【1】そして私は王子を探す旅に出る

私の名前はマリア・コリンズ。ある惑星の下流貴族の家に生まれた。

私の生家は貧乏だった。家族全員で領地の畑を耕し、細々と自給自足の生活をしていた。

服が破れても買ってもらえなかった。理由はお母さんが安い服を買いたくなかったから。

お母さんの口癖は『安物買いの銭失い』。
安い服を買っても直ぐに着られなくなるから、高い服を買いなさいという趣旨だ。

お金があれば、もっともな意見だと思う。
でも、貧乏な我が家が高い服を買えるはずがない。
我が家には安い服こそが必要だったのだ。

お父さんは王宮勤めだ。能力が低いので出世は見込めない。

お母さんは貴族ぶって働こうとしない。プライドだけ高い落ちぶれキャラだ。

さらに子沢山。
兄が3人、弟が4人。

典型的な『大家族の落ちぶれ貴族』だ。

***

私は今年、貴族学校を卒業した。
この家には大家族を養うだけの財産はないから、そろそろ家を出ないといけないだろう。
この世界では、私は既に結婚適齢期なのだが、残念ながら相手はいない。

貧乏生活に疲れた・・・

お金持ちと結婚すればお金を心配しなくていいのに。
だから、私はお金持ちの王子と結婚することにした。

王子と探す旅に出よう!

昭和の少女漫画のような発想だ・・・。

私は魔法が少し使える。中でも、ポーションや美容系の薬品を作るのが得意だ。

少し前に私は美容成分ピラテを開発した。
ピラテを使った乳液を開発したところ、貴族令嬢に受けて大ヒット。
美容業界でピラテを知らない人はいない。

私はピラテの特許権を保有しているから、世の女性がピラテ乳液を購入する度に、私にお金が入ってくる。

家は貧乏だけど、私はお金を持っている。
王子探し旅の資金は十分に賄える。

ちなみに、私がお金持ちなのは家族には内緒だ。
アイツらは金があると分かると、私が生まれて以降の食費、学費、宿泊費など難癖を付けて請求してくるだろう。

***

私はある筋からサイコ惑星の王子が今フリーであるという情報を入手し、サイコ惑星に秘密裏に向かうことにした。

ロケットで移動するから旅費は高額だ。
でも、王子を釣り上げるために必要な出費だから仕方ない。

予約したロケットに乗り遅れそうだったから空港のロビーを走っていたら、横から同じく走ってきた青年とぶつかった。そして、私は衝突の反動で床にこけた。

青年は、床に倒れた私を起こしながら「大丈夫ですか?」と笑顔で言った。
私は「大丈夫です。こちらこそ、すいませんでした」と青年に誤った。

ふと見た青年のスーツケースには『MC』と書いたキーホルダーが付いていた。

― 私と同じイニシャルだ・・・

青年は急いでいたようで私に「良い旅を!」と言って去っていった。

私も「良い旅を!」と青年に言って、ロケットの搭乗口に急いだ。

親切な青年に会えたし、王子探しはうまくいきそうだ。


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【2】オラオラ系にメンタルをやられる肉食系女子


私の名前はマリア。私はある筋からサイコ惑星の王子が今フリーであるという情報を入手し、サイコ惑星に入国した。

私が入手した情報によれば、サイコ惑星のパス王子はナルシストだ。筋トレを毎日欠かさない。
そして昭和風に言えば『ガテン系』、今風(?)に言えばオラオラ系男子とのことだった。

韓流ドラマの財閥系プリンスのような奴だ。

私はその手の男子を落とすために恋愛バイブル本を読みあさり、万全の備えをした。
そして何とかツテを使って王子様が出席する舞踏会に参加した。

「初めまして、パス王子。私はマリアと申します。パス王子のお噂はかねがね伺っております。なんて素敵な筋肉でしょう。ちょっと触ってみてもいいですか?」

この手の男子は褒めるに限る。そして私はイエスマンに徹する。

「いいよー。特に何もしてないんだけどね」

テスト前の優等生のような発言だ。勉強してないのにいい点とれないよね?
トレーニングしてないのに、マッチョになるわけがない。

このタイプはスケベだ。だから、私はワンレン・ボディコンを着てきた。
バブルの時に流行ったセクシーなドレスを選んだからガツガツ来るはずだ。

「そのドレス素敵だね?」

釣り上げた!
ワンレン・ボディコンはパス王子の好みだったようだ。
私はパス王子好みの女性を演じてデートの約束を取り付けた。

順調に交際がスタートした。
デートの誘いは3回に1回は断るようにしている。
ワイルド系男子はハンティングが好きだ。
少し思い通りにならない方が燃えるらしい。

パス王子とは暫く順調にいっていた。
でもマンネリ気味になってくると、パス王子は本性を出すようになった。

「お前、下流貴族出身だろ?だから下品なんだよ。しぐさとか」
「申し訳ございません。直すように心がけます」

何が下品なのかは分からなかったが機嫌を取るために、私はイエスマンに徹する。


「お前、よく見たらそんなに可愛くないよな」
「申し訳ございません。化粧で可愛くなるように努力します」

化粧で何とかなるかは分からなかったが機嫌を取るために、私はイエスマンに徹する。


「その態度はなんだ?なんか文句でもあるの?」
「申し訳ございません。特に文句はありません」

どんな態度をとったのか分からなかったが機嫌を取るために、私はイエスマンに徹する。


私はパス王子に腹が立ってきた。
このまま結婚しても幸せになれない。
一生罵倒されて生きていくのは嫌だ。

最初はオラオラ系でかっこいいと思っていた。
でも、暴言が多いから好きという感情も薄れてきた。
そして、心も病んできた。

だから、私は別の王子を探すことにした。

私は夜逃げのようにカインド惑星行きのロケットに乗った。


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【3】肉食系女子はバカに疲れる

パス王子との結婚は失敗に終わったが、私はカインド惑星にとても優しい王子様がいるとの情報を入手した。

私はメンタルをやられていたので優しさを求めていた。
だから、次のターゲットをカインド惑星のスイート王子に決めた。

前回は恋愛バイブルに頼って失敗したので、次の作戦は惚れ薬を作って王子を落とすことにした。
私は何度も惚れ薬の試作を繰り返し、バーで知り合ったカインド惑星の男性にも試した。
でも、私の作った惚れ薬の効果はイマイチだった。

私の惚れ薬は改善の余地はあるものの、精神的に疲れていた。
だから、未完成の惚れ薬をスイート王子に試すことにした。

スイート王子はとても優しく思いやりがある。でも、人をすぐに信用してしまう。
要はバカだと分かった。

私は惚れ薬を染み込ませたハンカチをスイート王子の前に落とした。

親切な王子は私の落したハンカチを拾ってくれるはずだ。
そして、惚れ薬を嗅いで私に惚れるはず・・・。

予想通りスイート王子はハンカチを拾って私に渡した。

そして、スイート王子は私に恋をしたようだ。

惚れ薬が効いたのだろうか?
私が美しいから一目惚れなのか?

こうして私はスイート王子と付き合うことになった。

スイート王子は噂通りとても優しかった。
気配りが素晴らしく、私に何でも買ってくれた。
私は病んでいた心が回復していくのを実感した。

パス王子のお陰だ。少しバカだけど・・・

***

私とスイート王子の結婚の話が進んでいた時、その事件は起きた。

ある日、カインド惑星のカリスマスタイリストが私たちの婚礼の儀の使う布を持ってきた。王子のタキシードと私のウェディング・ドレスを作るための特別な布だ。

私にはその布が透明のビニールにしか見えない。

カリスマスタイリストはスイート王子に言った。

「この布はアパレル惑星から取り寄せた、大変高価で珍しいものです。心の綺麗な人間には素晴らしい色に見えます。心の汚い人間には何も見えません」

私はどこかで聞いたことがある話だと思った。
それにしても、『カリスマ』を自から自称するスタイリスト。胡散臭い・・・。

しかし、人のいいスイート王子はその話を信じた。

スイート王子はその布を使って仕立屋にタキシードを作らせた。

スイート王子は私に嬉しそうに言った。

「マリア、どう?似合ってる?」

小太りのスイート王子。
透明の服だからムダ毛の1本1本までハッキリ見えた。

仕方ないから私はスイート王子に進言した。

「スイート王子、それはビニールですよ。あなたはカリスマスタイリストに騙されているのです」

するとスイート王子は私に優しい声で答えた。

「そんなことないよ。この布は素晴らしい。マリアは心が綺麗ではないからそう見えないのかい?」

バカな王子は完全に洗脳されている。

「結婚式のウェディング・ドレスはこの布で作らせるから」

ちょっと待って・・・・

結婚式には多くの国民が集まる。私の家族も来る。

裸で結婚式を挙げるなんて、ただの変態じゃないの・・・。


私はスイート王子に騙されていることを何度も説明した。

でも、スイート王子は戻らなかった。
洗脳されている人を説得するのは並大抵のことではない。

この先も同じようなことが起こるだろう。
変な宗教にはまったり、詐欺に引っかかったり、犯罪に巻き込まれたりするかもしれない。

私は悟った。

バカと結婚してはダメだ・・・

そして、私は別れを決意した。

私はスイート王子に母親が危篤だと嘘をついてクレバー惑星行きのロケットに乗った。


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【4】肉食系女子にも息抜きが必要

やはりバカに人生を預けるのは心元ない。

そこで私はクレバー惑星のスマート王子を次のターゲットに決めた。
スマート王子はとても頭が良くて真面目な王子で有名だ。

ある情報筋から『スマート王子は読書が好き』との情報を入手した。
スマート王子は定期的に図書館に訪れると聞いたから、私は毎日その図書館に通った。

それとは別に、私は昭和の少女漫画でよく登場したシーンを練習した。
知らない人のために説明すると、

男性が図書館で本を取ろうとしたときに、女性が同じタイミングでその本を手に取り、男性と女性の手が触れ合う・・・

そういうシーンだ。

私はこれをスマート王子との出会いに使おうと考えた。
題して『タイミングを合わせて同じ本を手に取るときに手が触れて見つめ合う作戦』だ。

この作戦は単純なように見えるが、実際には高度な技術が要求される。

まず、王子のタイミングに合わせるのが難しい。

早すぎると「こいつ何横取りしようとしたな」という目で見られ、遅すぎると「なんでもありません」みたいな感じで上げた手で頭を掻いたりして、ごまかさなければならない。

それに、そんなに王子に近づいたら、王子は私に気付いて離れるだろう。
ボクシングの『ヒット・アンド・アウェイ』に似たテクニックが必要になる。

※ヒット・アンド・アウェイとは、有効射程と索敵能力の許す限り遠くから攻撃を仕掛け、即座に撤退する戦術のこと。

私はこの技術を習得するため、図書館で知らない男性を相手に何度も何度も練習した。
何度も練習を繰り返し、30人目でコツをつかんだ。

私は、王子に気付かれることなく死角からササっと本棚に近づき、自然な感じで同じ本を手に取ることができるようになった。


私の技術が完成した頃、ついにスマート王子が図書館にやってきた。

私は練習した通り、『タイミングを合わせて同じ本を手に取るときに手が触れて見つめ合う作戦』を決行した。

相当の練習の成果が功を奏し、私と王子の手が触れ合い、見つめ合った。

そして、私たちは恋に落ちた。

***

スマート王子とのデートはいつも図書館かお城の図書室だった。
早朝から朝食まで読書し、朝食後に昼食まで読書をし、昼食後に夕食まで読書をした。
たまに残業・・・、ではなく王子の読書の切りが悪い時には夕食後も読書をした。

ある日、私は読書の途中で居眠りをして、その本に涎(よだれ)を付けてしまった。
その本はスマート王子一押しの1冊だった。

スマート王子は私に怒った。

「本に涎が付いている!君の行いは本への冒涜だ。本に謝れ!」

「申し訳ございません。申し訳ございません。申し訳ございません」

私は本に何度も謝ったけど、残念ながら本は『もう謝らなくていいよ』とは言ってくれなかった。

私がスマート王子との読書生活を1か月続けた結果、私は頭が良くなった。
でも、目は悪くなったし、運動不足で少し太った。

そして、メンタルをやられた。

読書は本来、仕事や勉強の息抜きにするものだ。
でも、私はいま息抜き(読書)が仕事になっている。

息抜きがない・・・

こんなことなら、息抜きに仕事をした方がいいのだろうか?

その後も読書生活を続けていると、私は活字を見ると蕁麻疹(じんましん)がでるようになった。

私には息抜きが必要だ。

娯楽を求めた私はパリピ惑星行きのロケットに飛び乗った。


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【5】肉食系女子はパリピになれない

私の婚活は試練の連続だ。
途中まではいくけど、ハッピーエンドは訪れない。

何がいけないのか?
私がダメなのか?
王子がダメなのか?
失敗の要因は何なのか?

私は自問自答を繰り返した。

クレバー惑星では読書ばかりしていたから運動不足だ。
運動して充実感を得たかった。

今回のターゲットはパリピ惑星のディージェイ王子だ。

ディージェイ王子は毎晩パーティを開催している。
そしてディージェイ王子はその名の通りパーティでDJをしている。

ディージェイ王子に近づくのは、パーティに参加すればよかったから簡単だった。
パーティに通っているうちにディージェイ王子と仲良くなって、私たちは付き合うことになった。

ディージェイ王子に彼女が何人いるか分からないのだが・・・。

ディージェイ王子とのデートは専らパーティ会場だった。

私は読書漬け生活の反動で毎日踊り狂った。
朝まで踊り明かし、昼過ぎまで寝てまたパーティに繰り出した。
すっかり夜型人間だ。

最初の1週間は楽しかった。
でも、しばらくすると毎日パーティに参加するのに飽きてきた。
1カ月くらいすると、パーティに参加するのは週2~3回くらいになった。

ディージェイ王子は毎晩パーティを開催することに夢中だ。
結婚のことは眼中にない。
このままディージェイ王子と付き合っていても何の進展も望めないだろう。

私は諦めてこの惑星を去ることにした。


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【6】肉食系女子は青年と再会する

私はパリピ惑星での連日のパーティ通いで疲れていた。
心も肌もボロボロだった。何より婚活がうまくいっていないことに落胆していた。

そこで私はリフレッシュするために自分の惑星に帰ることにした。
温泉があるから疲れた心と体を癒すにはもってこいだからだ。

当然のことながら、私は帰ってきたことを家族には知らせていない。
金があると知れたら集(たか)られるかもしれないからだ。


私は空港を出てホテルに行こうとしたところで、横から歩いてきた青年とぶつかった。

よろけた私を抱えて青年は「大丈夫ですか?」と言った。

私が「大丈夫です」と言いながら青年を見ると、青年のスーツケースには『MC』と書いたキーホルダーが付いていた。

「ああ、この前の!」と私は青年に言った。

青年も私に気付いたようだ。

「旅はどうでしたか?」と青年は私に尋ねた。

「散々でした。疲れたので温泉にでも行こうと思って帰ってきました」

「そうでしたか。私も散々でした」

私と青年は少し話をした。
青年の名前はマークと言うらしい。
親切な青年だった。

***

この惑星には未婚の王子がいるようだが、私は王子の情報を何も知らない。

私はホテルの温泉でリフレッシュした後、王子の情報を集めるために散歩に出かけた。
王宮の周りをウロウロしてみたが、何も情報が出てこなかった。

ホテルに帰る途中、一人の青年に声を掛けられた。
空港で再開したマークだった。

「この辺りに薬を売っているところを知りませんか?」

マークは薬局を探しているようだ。この惑星出身ではないのだろうか?
ここは私の生まれ育った惑星だから、もちろん薬局の場所は知っている。

「薬局ですか?この道をまっすぐ行って右に曲がったらありますよ。私の泊まっているホテルの近くなので案内しますよ」

「ありがとうございます。助かります」

私はマークを薬局に案内した後、ホテルに帰った。

***

次の日、私は連日のクラブ通いの疲れが取れずに昼過ぎまで寝ていた。
昼過ぎに起きたら空腹だったから、近くのレストランに行くことにした。

身支度をするのが面倒だったから、顔はノーメイク、服装はパジャマだ。

私がレストランを探しているとマークに会った。
この惑星に着いてからもう3回目だ。
近くのホテルにでも泊まっているのだろうか?

私が「お腹が空いたからレストランを探している」と言うと、マークは「じゃあ、一緒にご飯を食べに行きませんか?」と誘ってきた。

顔はノーメイク、服装はパジャマだ。
でも、お腹が空いていたからレストランに行くことにした。
ノーメイクでパジャマだけど、マークを狙っているじゃないからいいだろう・・・。

マークの話は面白かった。
私はレストランでとても楽しい時間を過ごした。


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【7】肉食系女子は好青年との結婚を迷う

それから、私はマークと一緒に出掛けるようになった。
ピクニックに行ったり、温泉に行ったり。
すっかりいい友達だ。

マークと出かけるときはオシャレをしないし、メイクもほとんどしない。
気を使わなくていいから楽だ。

私は次第にマークに惹かれていった。
このままマークと結婚してしまおうか・・・と考えたほどだ。

でも、私は王子と結婚するために旅をしてきたはずだ。
だから私は迷っていた。

王子と結婚するか?
マークと結婚するか?

***

ある日、マークとランチをしていたら、私は飲んでいた赤ワインを服にこぼしてしまった。
私は白いワンピースを着ていたから、赤ワインの染はとても目立った。

「すぐに落とさないとダメだね。僕の家に染抜きがあるよ。すぐ近くだから来る?」とマークは言った。

「そうね。染抜きを借りても大丈夫?」

私はマークの家に行くことにした。

レストランを出ると、マークは王宮に入って行った。
入り口の門番がマークを止めないから、マークは王宮に住込みで働いているのだと思った。

王宮に入ると、マークは女性に私のワンピースの染抜きと着替えを頼んだ。

すると女性は「王子、かしこまりました!」と言った。

え?
もしかして・・・
いやそんなことは・・・

マークが王子?

「ついでだから、僕の父と母を紹介するよ」

そう言うとマークは私を王宮の奥に連れて行った。

歩いていると私は気付いた。

ノーメイクだ・・・・

部屋に着くとマークは私を父王に紹介した。

「お父様、この前話していたマリアです」

ノーメイクのまま国王に対面する私。
しかたないから、私は国王に挨拶した。

「お初にお目に掛かります。マリアと申します」

その後、私は国王と少し雑談をした。
国王はすごく話しやすい人だった。

私たちがしばらく話をしていると、マークが改まって言った。

「この場で言うのは恥ずかしいけど・・・」

「どうしたの?」私はマークに聞いた。

「マリア・コリンズ、僕と結婚してくれないか?」

私は急だったからビックリした。
でも、私の答えは決まっている。

「はい」

そう私は答えた。


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第2章 草食系王子は王女を求めて宇宙を旅する

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【1】僕は王女を探す旅に出る

僕の名前はマーク・クレイ。僕は第2王子だ。第1王子の兄がいる。
第1王子である兄はイケメンだ。そして、勉強、剣術、政治力、人望など、どれをとっても僕よりも優れている。
残念ながら僕には勝ち目はなさそうだ。ほぼ間違いなく兄が王の座に就くだろう。

兄はどの惑星の姫にもモテモテだ。結婚相手に困ることはないだろう。

一方、僕はモテない。僕に近づいてくるのは金目当ての姫か、兄に紹介してほしい姫くらいだ。要は、ろくな姫が寄ってこない。

僕は理想の姫との結婚を夢見ている。
何なら『妄想王子』と呼んでくれても構わない。

僕は理想の姫と結婚するためには何が必要なのかを考えることにした。

― 宇宙は広い!

だから、どこかの惑星に僕の理想の姫がいるはずだ。


― 理想の姫はどこにいるのか?

分からない。でも、どこかにいるはずだ。


― 理想の姫は待っていれば会えるのか?

答えはNO!だ。
理想の姫に会うには、僕の方から探しに行かないといけない。

だから、僕は結婚相手となる理想の姫を探すことにした。

宇宙は広いから、どこかの惑星に理想の姫がいるはずだ。

***

僕はメンヘラ惑星に素敵な姫がいるという噂を耳にした。
だから、まずはメンヘラ惑星に向かうことにした。

国王(父)、王妃(母)と兄に「結婚相手を探しに行く」と言うのが恥ずかしかったので、「社会見学のために、お忍びで他の惑星を見てみたい」と言った。
家族はすぐに了承してくれた。

僕はロケットに乗るために空港に行った。
ロケットを待つ間、空港のラウンジで雑誌を読んでいたら予約したロケットに乗り遅れそうになった。
ロケットに乗るために僕がロビーを走っていたら、女性とぶつかった。

運悪く女性がこけてしまったので、僕は女性を引き起こしながら「大丈夫ですか?」と聞いた。

彼女のスーツケースには『MC』と書いたステッカーが貼ってある。

― 僕と同じイニシャルだ・・・

彼女は「大丈夫です。こちらこそ、すいませんでした」と僕に誤った。
とても綺麗な女性だった。

僕は急いでいたので、彼女に「良い旅を!」と言ってロケットに向かって走った。


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【2】僕はメンヘラの扱いが上手くない

僕はメンヘラ惑星のドリーミン姫がとてもかわいいという噂を耳にし、メンヘラ惑星に向かった。

僕は別の惑星の王子だ。
だから、ドリーミン姫に会うのは簡単だった。

僕は空港から直接ドリーミン姫がいるお城に向かった。
お城にはすんなりと入ることが許され、さっそくドリーミン姫にお目通りした。

ドリーミン姫はぬいぐるみ好きという情報を入手していたから、僕は特大サイズのうさぎのぬいぐるみをプレゼントした。
すると、ドリーミン姫は僕もぬいぐるみも気に入ってくれた。

僕は何度かぬいぐるみを持ってドリーミン姫を訪問して口説いた。
そして、僕はドリーミン姫とお付き合いをすることになった。

ドリーミン姫はまるで人形のようにかわいい顔をしていた。
肌は透き通るように白く、小柄で華奢だ。

僕たちはいろいろな所に行ったし、ドリーミン姫が欲しいものは何でもプレゼントした。
僕もドリーミン姫に夢中になった。
僕はドリーミン姫と片時も離れたくなかった。

ある時、僕とドリーミン姫は遊園地でデートをしていた。

僕は不用意にもドリーミン姫に言ってしまった。
「ちょっと太った?」

それを聞いた途端、ドリーミン姫の顔が険しくなり、泣き出した。
「うぅぅ・・。私が太ったから別れたいとおっしゃるのですか?」

「いや、そんなつもりは・・・」僕は弁解する。

「そうなんですね。私はあなた無しでは生きていけません。あなたに嫌われるくらいなら死んでやるー!」
ドリーミン姫はそう言うと、公園の噴水に飛び込もうとした。

「そんなことないよ。僕は君を愛してる!」
僕は必死にドリーミン姫を止めた。

「死んでやるー!死んでやるー!」

ドリーミン姫が大きい声で叫ぶので、大勢のやじ馬が集まってきていた。

「愛してる!君を愛してるよー!」
僕は羞恥心を捨ててひたすら愛を叫んだ。すると、何とか姫は落ち着いた。

それ以降、何度か似たような出来事が起こった。
僕はドリーミン姫のことが少し怖くなっていた。

ある日、ドリーミン姫から「ポエムを作ったので聞いてほしい」と言われた。

ポエムとか怖すぎる・・・

僕は恐怖を感じたが、ドリーミン姫を傷つけないために喜ぶふりをした。

ドリーミン姫はポエムを読み始めた。

--------題名:愛しの君へ------

その目で他の女を見ないように 君の面玉をえぐってペンダントにしたい。

その耳で他の女の誘いを聞かないように 耳を引きちぎってイヤリングにしたい。

その口で他の女と口づけをしないように 唇を取り除いて髪飾りにしたい。

君がどこかへ行ってしまわないように 君の血を一滴残らず飲み干したい。

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怖い、怖い、怖い・・・

殺される、殺される、殺される・・・

耳をイヤリングってどういう状況?
耳4つ?

僕がドリーミン姫と結婚したら、毎日この恐怖が続く。
もし別れ話をしたら、僕はドリーミン姫に刺されるだろう。

僕は恐ろしくなって、夜逃げのようにストロング惑星行きのロケットに飛び乗った。


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【3】僕は運動がそんなに好きじゃない

僕はドリーミン姫との交際によって心に傷を負った。
やはりメンヘラの姫と付き合うのは大変だった。

僕はサバサバした性格の強い姫を探そうと心に決めた。

ストロング惑星にサバサバした性格のタフ姫がいる情報を入手した。
だから僕はストロング惑星へやってきた。

タフ姫は剣をたしなんでいる。
僕はタフ姫に近づく口実に手合わせをお願いした。

僕は剣術に自信があった。
惑星では僕の実力は2番。1番は兄だけど。

タフ姫は剣の達人だった。
でも、僕の剣術の腕が数段上だったので、あっさりとタフ姫に勝った。

タフ姫は自分を打ち負かした僕に惚れた。
僕も美人でサバサバした性格のタフ姫に好意を持った。
こうして僕はタフ姫と付き合うことになった。

タフ姫は努力家で負けず嫌いだ。

タフ姫の提案で山の中で修行することになった。
タフ姫は僕に負けた事が悔しかったらしい。
僕に勝つまで修行を続けると言い出した。

僕は惑星を離れてから運動不足だったから、最初は修行を楽しんでいた。

山での修行は過酷だった。
山を登ったり下りたりを繰り返し、筋トレと剣の練習。
これが一日中続く。

食事は自給自足だった。
イノシシや鹿を捕まえたり、山菜やきのこを採ったりした。
自然の中で食べるバーベキューは楽しかった。
最初のうちは楽しく過ごしていたのだが、僕は毎日の単調なトレーニングに飽きてきた。

僕は修行生活に飽きてきたのでタフ姫に提案した。

「タフ姫、たまには息抜きに山を下りて街に出てみないか?」

「1日さぼったら、取り戻すのに3日かかります。それはできません」

僕の提案は却下された。

僕は考えた。

― 試合で僕が負ければタフ姫は山を下りてくれるのではないか?

僕はタフ姫と手合わせすることにした。

「修行の成果を確認するために、僕と手合わせしないか?」

「いいわね。やりましょう!」

僕はできるだけ自然にタフ姫に負けた。

― これで山から下りてくれるはずだ

僕はそう思っていたのだが、タフ姫は僕への興味をなくした。

そして、僕はあっさりと捨てられた・・・。

捨てられた僕は、優しい姫に会うためにインディサイド惑星へ向かった。


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【4】僕も優柔不断だけど・・・

タフ姫のサバサバした性格と忍耐強さは尊敬に値する。
だた、僕は一緒にいてとても疲れた。

だから僕は優しい姫を探すことにした。
インディサイド惑星のへジテイト姫が優しいと聞いたから、僕はインディサイド惑星に向かった。

僕はインディサイド惑星に到着すると早速、へジテイト姫にお目通りを申し込んだ。
へジテイト姫からは1週間後に返事が来た。
ちょっと時間が掛かったのだが仕方ない。きっと忙しかったのだろう。

僕はお城に出向いた。

へジテイト姫はとても優しくて気遣いの出来る姫だった。
僕はヘジテイト姫のことが気に入ったのでデートを申し込んだ。

「僕と今晩夕食でも一緒にいかがですか?」

へジテイト姫は少し考えてから僕にこう言った。

「少し考えてから返事をしてもいいですか?」
姫は返事を先送りにした。

「わかりました。お返事をお待ちしています」
僕はそう言ってお城を後にした。

へジテイト姫から1週間後にデートの返事がきた。オッケーのようだ。
僕たちはその1週間後に夕食に行くことになった。

僕はヘジテイト姫の好みを知らなかったから、約束の当日、一緒にレストランを選ぼうと思った。
僕はインディサイド惑星のレストランを完璧に下調べしたから、ヘジテイト姫の好みさえ分かれば直ぐに予約できる。

「ヘジテイト姫はどんな料理が好きですか? フレンチ、イタリアン、和食?」と僕は聞いた。

「どんな料理でも大丈夫です」とヘジテイト姫は答えた。

僕はレストラン街にある有名なフレンチレストランにヘジテイト姫を連れて行った。

「ヘジテイト姫、ここのフレンチは美味しいと評判です。ここにしますか?」

「う~ん、今フレンチは重いかな」

― フレンチの気分ではないようだ・・・

次に、僕は有名なイタリアレストランにヘジテイト姫を連れて行った。

「ヘジテイト姫、ここのシェフはいくつも賞をとっています。ここにします?」

「う~ん、イタリアンの気分じゃないかな」

― イタリアンの気分でもないようだ・・・

仕方ないから、僕は有名な和食レストランにヘジテイト姫を連れて行った。


「ヘジテイト姫、この和食レストランのメニューは健康にいいと評判です。ここにしますか?」

「う~ん、和食か~」

― 和食の気分でもないようだ・・・

何でもいいって言ったじゃないか!

僕はとりあえず初デートなので我慢した。

その後、僕とヘジテイト姫はいくつかレストランを周ったが、食事をするレストランは決まらなかった。

最初のフレンチレストランに戻ってきたのだが、その頃には長蛇の列ができていた。

仕方ないから、僕とヘジテイト姫は有名でもない定食屋に入った。
僕たちの話は盛り上がらなかった。

気まずかった・・・

でも、『優柔不断だけど優しい姫なはず』と思ったから、僕はヘジテイト姫に次のデートを申し込んだ。

ヘジテイト姫から1週間後にオッケーの返事がきた。

ちょっと時間がかかりすぎる。
僕は次のデートで交際を申し込むことにした。

「ヘジテイト姫、僕と付き合ってもらえませんか?」

「ちょっと考えさせて下さい」

ヘジテイト姫から返事は2週間来なかった。
僕はこれ以上待てないからお城に返事を聞きに行った。

僕がお城に着いて受付係に要件を伝えると、受付係は僕に紙を渡した。

― 74番

僕は受付係に案内されて待合室に入った。

そこには若い男がいっぱいいた。
ヘジテイト姫は人気者のようだ。
僕はしばらく待合室で待っていると、数名の若者が話していた。

「君も返事を聞きにきたのか?」
「そうだよ。君もか?」
「そうだ。今日は返事を聞けるかな?」

どうやら待合室の全員がヘジテイト姫の返事を聞きに来ているようだ。

僕は考えた。

― 僕は74番だ。
― 1人30分として、僕は何日待てばヘジテイト姫に会えるんだ?

僕は74番の整理券をゴミ箱に捨てて、ゴージャス惑星に向かうロケットに乗った。


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【5】金銭感覚は重要かもしれない

ヘジテイト姫は優しかったが優柔不断すぎて僕は疲れた。

だから僕は決断が速い姫を探すことにした。
ちょうどその時、僕はゴージャス惑星のラグジュアリ姫が美人で決断力があると耳にした。

僕はゴージャス惑星に到着するとラグジュアリ姫に会う約束を取り付けた。
ラグジュアリ姫に会うために訪問したお城は無駄に豪華だった。

僕はラグジュアリ姫を一目見て心を奪われた。

ラグジュアリ姫はとても綺麗だった。
ドレスが無駄に豪華なのは気になったが、僕は王子だからお金のことは大丈夫だろうと考えた。

ラグジュアリ姫も僕を気に入ってくれたようだ。
僕がデートを申し込んだら、すぐにオッケーの返事がきた。
事がスムーズなのでとてもいい気分だった。

デート当日、ラグジュアリ姫はとてもゴージャスな装いで現れた。
すべて高級ブランド品だ。

夕食はラグジュアリ姫が指定した高級フレンチレストランに行った。
ラグジュアリ姫が注文したワインは高かったが、僕は『ラグジュアリ姫の気を引くためには仕方ない出費だ!』と考えた。

食事をしながら僕はラグジュアリ姫に話しかけた。

「素晴らしいドレスですね」

「そうでしょ。だって見た目って大切だもの」

「そうですね」

「このドレスいくらしたと思う?」

「高そうですね」

「高かったわよ。私は1度着たドレスは2度と着ないの」

「どうしてですか?」

「なんか貧乏くさいでしょ」

「もったいないような気が・・」

「いいえ、これは私のポリシーよ。高級品しか身に着けないけど、同じドレスは2度着ない」

その後、僕はラグジュアリ姫に延々と自慢話を聞かされた。

何度かラグジュアリ姫とデートをして、僕とラグジュアリ姫は付き合うことになった。

デートはいつも高級レストランで食事。
デートはいつも高級デパートでショッピング。

お金が掛かるだけで、僕は全然楽しくなかった。

― ラグジュアリ姫は綺麗な人だ。でも金遣いが荒い。

ラグジュアリ姫と結婚したら僕は破産するかもない。


― ラグジュアリ姫と過ごしていても、僕は楽しくない。

多分、僕は贅沢に興味がないからだと思う。
金銭感覚がずれているから結婚はないな・・・

僕は自分の惑星に戻ることにした。


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【6】僕はスパイを尾行する

婚活がこんなに難しいとは・・・

僕は婚活を舐めていたようだ。

疲れも溜まってきたから、リフレッシュした後に婚活を再開しようと僕は考えた。
だから、僕は自分の惑星に戻ることにした。

ある日、僕はお城の周りを散歩していたら、城の周りをウロウロする女性がいた。
お城の塀に沿って歩きながら、たまに中を覗いている。
僕はその女性をどこかで見たような気がしたが、思い出せない。

これは怪しい・・・
どこかの惑星のスパイなのか?

僕は他の惑星のスパイだったら即答できない質問をしてみた。

「この辺りに薬を売っているところを知りませんか?」

その女性は僕に話しかけられたことに少し驚いたようだ。

「薬局ですか? 宿の近くなので案内しますよ」
女性は親切に薬局の場所を答えてくれた。

「ありがとうございます。助かります」

どうやら土地勘はあるようだ。
僕はこの女性がスパイかどうかを探るため、薬局に着くまで会話を続けた。

話してみると普通の女性だった。
特に怪しいところはない。

それに、自分の宿を僕に教えるなんて、無防備すぎないか?

僕はその女性はスパイではないような気がした。
きっと、観光に来た旅行者だろう。

その日は薬局の前で女性と別れた。

***

次の日、僕は暇がったからお城の外を散歩していた。

お昼過ぎに通りを歩いていると、昨日の女性(?)が歩いていた。
正直言って、同一人物かどうかは自信がない。

だって、ノーメイクだから。
それに、目にクマができてるし、髪もボサボサだし、パジャマだし・・・。

でも、きっと昨日の女性に似ている。

― スパイの変装か?

僕は後をつけることにした。
女性はマーケットに向かっているようだ。
前かがみでお腹を押さえている。

ケガをしているのだろうか?
お腹が空いているのだろうか?

僕は女性に近づいて声を掛けた。

すると、女性はバツが悪そうに立ち去ろうとした。

― 怪しい・・・

それに、こんな格好で何をしているんだ?

僕は女性について調査が必要だと判断した。

調査のための口実として、その女性を食事に誘った。
「一緒にご飯でも食べに行きませんか?」

彼女はちょっと躊躇していた。
でも、お腹が空いていただろう。
僕たちは一緒にレストランに行くことになった。

レストランで僕たちはご飯を食べながらいろんな話をした。

女性の名前はマリア。
旅からこの惑星に戻ってきた。
王子と結婚するのが夢みたいだ。
僕と空港で会ったことがあるようだ。

マリアは隠さずに話してくれた。
マリアの旅の話はとても楽しかった。

― マリアは王子と結婚したいのか・・・

僕が王子なのは隠すことにした。
マリアが知ったら、僕に対する態度が変わるかもしれない。

***

それから僕はマリアを誘って遊びに行くようになった。
彼女はいつも自然体だった。というか、少し気を抜きすぎている気もする。
僕はマリアと一緒だと楽しかった。

僕とマリアがピクニックしていると獣魔に遭遇した。
僕が剣で戦おうとすると、マリアは獣魔をあっさりと素手で倒した。

「すごいでしょ?」

マリアは笑顔で僕を見た。
僕は少しドキッとした。


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【7】健やかなる時も、病める時も

僕はマリアに結婚を申し込むことを決心した。

僕は王子だから、僕の一存で結婚するのは難しいだろう。
だから、事前に父と母にマリアの話をしてみた。
二人とも感触は良くて『紹介しろ』と言われた。

ある日、マリアとランチをしていたら、僕はマリアの白い服に赤ワインをこぼしてしまった。

― やってしまった・・・

僕は怒られると思っていたのだが、マリアは特に気にしていない。

でも、シミが目立っている。
服が汚れたのは僕のせいだ。
だけど『新しい服を買うよ』と言うと嫌がるかもしれない。

僕はいいアイデアを思い付いた。

「僕の家にシミ抜きがあるよ。近くだから家においでよ」
僕はそう提案した。

「そうね。借りてもいいかな?」

僕たちは僕の家(お城)に向かった。

お城に入っていく僕にビックリしながらも、マリアは僕の後をついてきた。
それもそのはず。マリアは僕が王子だと知らない。

僕はお城に入ると、メイドにマリアの服を洗って着替えを用意するように命じた。

「王子、かしこまりました!」
この瞬間、マリアは僕の正体に気付いたようだ。

「ついでだし、僕の父と母を紹介するよ」
僕はマリアを両親に紹介することにした。

僕は国王と王妃がいる部屋にマリアを案内した。

「父上、この女性が話していたマリアです」

「お初にお目に掛かります。マリアと申します」
マリアは緊張しながら父に挨拶した。

マリアが緊張している姿がとても可愛かった。
その姿を見て、僕は思わず言ってしまった。

「マリア、僕と結婚してくれないか?」

― 両親の前でプロポーズしまった・・・

恥ずかしい。
なぜ言ったんだろう?
タイムリープできたら1分前に戻りたい・・・

僕は気が動転している。

マリアが何か言ったようだが、動揺している僕には聞き取れなかった。
でも、マリアが小さく頷いたのは分かった。

***

今日僕たちは結婚する。

結婚式は順調に進んでいった。

『誓いの言葉』を言うタイミングがきた。
まずは僕の番だ。

神父は僕に尋ねた。
僕は「誓います」と答えた。

次に神父はマリアに尋ねた。

「マリア・クーパー、あなたはマーク・クレイを夫とし、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

「誓います」
マリアはそう答えた。

<終わり>
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