八白嘘

文字数 1,707文字

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「──…………」
ヰ三郎の眼前で、コンビニが炎上した

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溜め息をつく

珍しいことではない

炎を見るのも、職場がなくなるのも

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「──ヒィー、ハハハッ! アハハハ! これがホントの吉原炎上! お代は見てのお帰りよってな!」
「っと、おお、カッコええ兄ちゃん! なんじゃ怖くてうごけんのか! イヤんバカんよ、この世の中! 笑ってコラえて生きようや! なはは!」
「……魔人か。またか。クソッタレ」
「最近、こんなことばっかりだ。まだ半月分の給料貰ってねェんだぞ……」
また、溜め息

幸せは既に枯渇している

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そのまま踵を返そうとして、

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「──おい、兄ちゃん。ワシのこと無視してくんか、えェ!?」
「……ま、そう上手くは行かねェよな」
「無視されたら、ワシ悲しいわあ! 涙で琵琶湖が溢れるわァ!」
「……随分イヤな湖だな」
ニヤ
──キュボンッ!

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「つッ……!」
瞬間、ヰ三郎と男性のあいだの空間が、爆砕した

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「だァーめ、だァめえ、ぜーんぜんなっとらん! ツッコミは、もっとキレよくテンポよく!

 そうでないと──」

「……苦しむで?」
「ちッ……」
ヰ三郎が、右手の指を鳴らす

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その瞬間、


世界が、


──逆転した

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「……はッ!」
男性の目の前には、無傷のヰ三郎

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「兄ちゃん、魔人か!」
「……ああ、そうだよ。魔人だよ。

 クソほども使えねェ能力持ちの魔人だよ」

「俺ができるのは、一定範囲の時間を十秒間巻き戻すことだけ」
「はっはァ! なるほど!

 その能力で、自分が無傷の時刻まで戻したってわけかいな!」

「……ところで、おっさん」
「なんや、兄ちゃん」
「能力までバラしたんだ。

 見逃してくれ。

 明日は工事現場のバイトがある」

「あんたらみたいな魔人がいるから、現場はいつでも人手不足でな」
「ンっン~、どうしよっかなァ~」
男性は、コマネチの動きをしながら言った

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「ダメネチ!」
「そりゃ、無理が──」
──キュボンッ!

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「くッ!」
指を鳴らし、即座に時間を巻き戻す

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「そうか。

 ツッコむと、爆発するのか」

「バレちゃあしょうがねェ! 死んでもらうぜ兄ちゃん!」
もともと殺す気だった癖に

その言葉を飲み込み、ヰ三郎はナイフを取り出す

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要は、ツッコまなければいい

喋らなければいい

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「疾ッ!」
コートの下からナイフを取り出し、四本一気に投擲する

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しかし、

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「──それはツッコみだねえ、兄ちゃん」
「布団が吹っ飛んだァ!」
ナイフが男性に触れた瞬間、みたび空間が爆砕する

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「……ああ、そうかい」
パチン!

巻き戻る

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「あんたがギャグだと思えば、ギャグ。

 あんたがツッコミだと思えば、ツッコミ」

「──ああ、そうだ。そうだった。

 魔人って連中は、どいつもこいつもそうだ」

「──…………」
「さァて、死ぬ覚悟はできたかね? ワシは、ボケまくる準備オッケーだがね!」
「……お前は自殺する」
「は?」
ヰ三郎がナイフを数本投擲する

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「──猫が寝転んだァ!」
──キュボンッ!

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「がッ……!」
爆発の衝撃で、ヰ三郎が吹き飛ぶ

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だが、指を鳴らさない

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「つまーらない、つまらないぞう!

 諦めた人間ってやつほど笑えないものはない」

「ほら! 立て!

 足掻け!

 ツッコめ!

 それで死ななきゃ楽しくないだろ!」

「…………」
「──十メートル」
パチン!

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「は?」
「十の背反(テベリオン)の効果範囲は、十メートルだ」
「それで?」
「──効果範囲の、内と外。

 その狭間にいる人間は、どうなると思う?」

「わはは、知るかいそんなこと!

 ほうら、ほうら、イタリアに行ったりあ!」

「動かないほうがいい」
男性が、ヰ三郎に向かって歩き出す

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「だあれが兄ちゃんの言うことなんざ」
ずる。

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「あへ」
男性の肉体が、"前後"に寸断されていた

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寸断された肉体は、左右に分かたれてその場に倒れ、

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建造物の炎上する地獄の中で、汚らしい体液をアスファルトに垂れ流した

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「……はァ」
「夜のバイトは、探し直しか。

 時給よかったんだけどな」

ヰ三郎は、後頭部を掻きながらその場を後にする

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敵を倒した爽快感も、命を拾った安堵感も、そこにはない

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頭にあるのは、明日の生活のみだ

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──それが、土筆 ヰ三郎という男である

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〈了〉

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登場人物紹介

名前:ギャグおじさん

本名・藁田草生(わらたくさお)
低レベルなギャグと爆発オチをこよなく愛する、お笑い好きの魔人。
国際指名手配を受けている無差別テロリスト。

能力1:ギャグ補正
ギャグおじさんが展開するギャグ空間の中では、どんな攻撃にもギャグ補正がかかり「ほんま死ぬかとおもたわ!」で済まされてしまう。
ギャグおじさんが苦手なシリアス展開になると、ギャグ補正が切れる。

能力2:爆発オチ
ギャグおじさんのネタに突っ込んでしまうと、その突っ込みの激しさに比例して爆発が起こり、相手はダメージを受ける。

動機:自分のネタで相手を爆発させることが楽しくてしかたない。

アイコン:トークメーカー公式 男性キャラ 最新の画像


作者:高波一乱

「──言っとくけど、俺ァ、弱いぞ」



【名前】

 土筆 ヰ三郎(つくし いさぶろう)


【性別】

 男性


【年齢】

 二十歳


【能力】

 十の背反(テベリオン)

 指を鳴らす行為をトリガーとして、自分を中心とした一定範囲の時間を十秒間だけ巻き戻すことができる

 一見チートに思えるが、時間系能力者お得意の「無限の試行回数によってパターンを構築しゴリ押す」という戦法を取ることができない

 何故なら、共に巻き戻された相手にも、遡行時の記憶が残るからだ

 使用感としては「仕切り直し」に近いと言える

 燃費が悪く、クールタイムを設けなければ、十回程度で体力が枯渇してしまう

 自分が弱いことをよく理解しており、能力に頼らない戦法として、ナイフを使用した格闘術を採用している

 コートの内側には数百本のナイフが格納されているという


【来歴】

 五年前、ヰ三郎は、旅行の際に事故に巻き込まれて家族を失った


「たった十秒でいい。時間よ、巻き戻ってくれ──!」


 その強い願いがヰ三郎を魔人と化し、彼は願い通りの能力を得た

 だが、家族は助からなかった

 魔人になった際の、僅かな──一秒にも満たないほどの逡巡が、家族の未来を決定づけてしまったのだ


 現在、彼は、誰の力も借りることなく、ひとりきりで生活している

 朝昼晩のアルバイトで、寝ることすらままならない日々だ

 その生活は、ひどく自暴自棄で、自罰的で──彼はまだ自分を許すことができていないのだろう


【戦う理由】

 特になし

 ただし、降りかかる火の粉は払う


【アイコン】

 自作


【作者】

八白嘘

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