第11話 王子さま来訪
文字数 732文字
次の日、朝食を取った後、家族はそのまま食堂でくつろいでいた。
追い風に恵まれ、船団は予定より早く港に到着している。今日一日は航海の疲れを癒し、積み荷を降ろすのは明日からでいい。
他愛のない会話を楽しんでいたところへ飛び込んできたのは、席を外していた勇利である。
「梨華、来たよ! 本当に来た!」
「はあ?」
外を指差し、あわてふためく兄の言葉がさっぱり理解できない。
「来たって、何が来たの?」
「昨日の王子さまだよ!」
梨華はこめかみに指を当てて記憶をたぐる。そういえば、あのナントカという王子さまは、もう一度会ってお礼が言いたいとか話していた。
自分も確か、会いたかったら水軍の旗艦に来て、とか答えたような……。
「とにかく甲板に来てごらんよ。お供を大勢引き連れてやって来てるから」
梨華は席を立ち、急いで甲板へ向かった。この事態に家族も興味深々で、ぞろぞろと梨華の後に続く。
甲板に出て桟橋の方を見ると、梨華はあっけにとられて口を開けた。
確かに昨日の金髪の青年を先頭に、ずらりと衛兵たちが背後に並んでいる。
「……梨華、何かやらかしたのか?」
声をひそめ、たずねてくる母に、梨華は思いきり首を横に振る。
「何もしてないわよ。昨日話した通り、人助けしただけだってば!」
「白馬に乗った王子さまだわ……」
姉の隣で梨奈がうっとりした声を出す。碧眼の整った顔立ちにかかる金髪。マントを羽織り、腰に剣を差している姿は、絵本で見た「王子さま」そのものだ。
「本当に王子さまだったのね……」
昨夜は半信半疑で聞き流していた梨華は感心してつぶやいた。
追い風に恵まれ、船団は予定より早く港に到着している。今日一日は航海の疲れを癒し、積み荷を降ろすのは明日からでいい。
他愛のない会話を楽しんでいたところへ飛び込んできたのは、席を外していた勇利である。
「梨華、来たよ! 本当に来た!」
「はあ?」
外を指差し、あわてふためく兄の言葉がさっぱり理解できない。
「来たって、何が来たの?」
「昨日の王子さまだよ!」
梨華はこめかみに指を当てて記憶をたぐる。そういえば、あのナントカという王子さまは、もう一度会ってお礼が言いたいとか話していた。
自分も確か、会いたかったら水軍の旗艦に来て、とか答えたような……。
「とにかく甲板に来てごらんよ。お供を大勢引き連れてやって来てるから」
梨華は席を立ち、急いで甲板へ向かった。この事態に家族も興味深々で、ぞろぞろと梨華の後に続く。
甲板に出て桟橋の方を見ると、梨華はあっけにとられて口を開けた。
確かに昨日の金髪の青年を先頭に、ずらりと衛兵たちが背後に並んでいる。
「……梨華、何かやらかしたのか?」
声をひそめ、たずねてくる母に、梨華は思いきり首を横に振る。
「何もしてないわよ。昨日話した通り、人助けしただけだってば!」
「白馬に乗った王子さまだわ……」
姉の隣で梨奈がうっとりした声を出す。碧眼の整った顔立ちにかかる金髪。マントを羽織り、腰に剣を差している姿は、絵本で見た「王子さま」そのものだ。
「本当に王子さまだったのね……」
昨夜は半信半疑で聞き流していた梨華は感心してつぶやいた。