初めての女装は・・・

文字数 4,097文字

 であった。文字の通りの意味である。


 ての肌があらわになるよう、

(ころも)(くだもの)でも剥くかのように脱いでいく。

 果実を引き合いに出したのは、全裸の因数分解がしたかっただけではりません。この虚弱な肌は、そのように扱う必要がありました。


間近で凝視すれば所々に見て取れる擦り傷、この肌に刻まれた辿られた物語を一つ聞き齧んで頂けたなら、フルーツという比喩もまんざらではなく、皆々様の肌の様に馴染むことでしょう。

 それはチャックを恐れる肌でありました。

 袋でも挟まれたかといえば、それだけに止まらない。

 柔い肌にとって、チャックのギザギザは幾重にも並べられた(くわ)の如し。

 触れて横に滑らせば、たちまち田畑を耕したような凹凸の腫れが赤く線を引いた。

 それだけの虚弱さ故、裏地の縫い目まで気になる始末であり、日々の脱衣にもミカンを剥く以上の慎重を要した。


 痛みによって学んだコツはズバリ、

 滑らず剥がす。

 響きに棘はあれど、傷を点に抑えるならば後者である。

 海水浴で疲れ切るまで遊んだ者であれば容易に想像できよう……とはいえ、今のご時世はレジャー離れが進んでいるようなので、この場を借りて具申する。もし__

 __もしも日焼けした肌と、ひたりと吸い付く水着の間に浜辺の砂を挟んでしまったなら用心なされ。

 決して滑らせてはならない、剥がすのだ。


 手本であれば、ホレ。

 先程から服を脱いでいるそこな(わらし)が適人であろう。

 その丁重さといったら、冒頭からここに至るまでのくだりで、やっとこさ下着に手をかけたところではないか。

 脱いだ服は、千切れずに剥けた桃の皮の如く裏返っている。

(スッポンスポポン♪)

 さて、剥かれた桃実のように瑞々(みずみず)しい肌を(あら)わにした男児がシャツをカゴに放り込んだところで、全裸女装の話しを進めるとしよう。

 やがてポロリンするスッポンネックと二つの卵……いわゆる♂の象徴である竿と玉を如何にして隠したか?

 種明かしは後に回す。

 あれは長くはもたないない、どんどんいこう。

……ふぅ




 脱衣カゴの山は、やんちゃな服から成っていた。

 押し付けがましい母のセンスも、これだけ剥がせば随分と男色は薄くなる。

 中でも最も濃ゆきは白のブリーフ。それを下げれば、社会の窓に覆われていた場所が白日の元に晒される。

 白日の元というのは、脱衣所の照明に他なならない。

 照らした裸体は数知れず、女に限ってしまえば、アダルトカメラマンのフラッシュより多くの人々を輝かせたであろう光である。

 赤寄りとも青寄りともつかぬ色温度、その中性的な昼白色が照らす|彼処《アソコ》は、不思議と、どちらかというと、女風味を醸し出したはず……のような形状をしていた。

 因みに筈というのは、弓矢の矢の末端にあるへこみみを指す。

 この弓糸を引っ掛ける筈が有ると無いとでは、命中精度に大きな差が出るそうな。


 なれば、時は変わって昔々の戦国時代。

 筈つきの矢が出始めた頃かどうかは知らないが。

 逸早く筈を手にする者と持たざる者はいたはずで、

 矢筈(やはず)を用いる上級兵と、旧世代の矢を使う下級兵の間には、次の様なやりとりがあったのではなかろうか__

そんな粗末な矢など使っているようでは

万に一つも敵将を射抜けやしまい!


何故ならば__

当たるが無いからだ!


ワッハッハッハ

 __などと自慢した

 性能差を見せつけられた下級兵は、悔しさから筈付きの矢を使うようになり__

背伸びして買った矢だベ

絶対打ち取ったるど!

なんつったってこん矢にゃあるさよ筈がぁ!

 __などと意気込む


 この様に、生命線をかけられた筈は幾度となく、そして力強く吐かれ世間に馴染むのも自然な成り行きであり、何かとがん掛けするにも、確信的な意味合いを籠めるにも、人々は(いん)を踏む様に筈を掘り、強く引き絞るよう射って今に至った…………かどうかはさて置いて。


 今は戦国の時代でなく十と少し前の現代。

 此処は男の合戦場ではなく女の洗場。

 餓鬼の自分には言葉の成り立ちなんぞどうでもよく、説いたところで手に持った脱ぎたてブリーフと一緒にカゴへ放り込まれるのが関の山。

 その山とて、少し冷え込んだ秋に着込まれながらも、カゴの中ではチョン盛りにしか成れなかった脱衣のように些細なものである。

 ロッカーを閉じ、足下へ目を落とす。


 パチリとした(つぶ)らな瞳が映すのは、ひばりの床板にも浮かぶ明るい肌……ただの一字で画を表すなら“凹”だった。

 通常であれば、凹の谷間に生えているはずの(ナニ)は見てとれないが、少年は歴とした♂である。戸籍上、性自認上、生物学的見地からみても紛れない男である。


 いったいぜんたい、凸はどこへ消えたのか。

(まだ……


だいじょぶぅ)

 お答えしよう。

 重要なのは矢筈の凹みより股間の凹み。

 スーパー銭湯の赤き垂幕の内で生死を別つは女を装う男根の収まり具合なのだ。


 さてさて続きましてはお待ちかねのコーナー!

 聞き慣れない表現が出てきたところで、全裸女装の種明かしといきましょう。

 なにぶんググったところで意図したページは見つからず、思いの他メジャーな手段ではないようです。

 類似する方法としては睾丸(タマキン)鼠径官(そけいかん)付近……股間よりやや右上と左上の皮下脂肪に潜り込ませます。男根の方は肛門へ伸ばしたままパンティで押しつけたり、テーピングや接着剤を用いて女性器を模る……んだと? おいおいマヂかよそこまでやんのかよオイッ、ご苦労なこっt__ゴホンゴホン、失敬。

 なんとも世界は広う御座います。


 はたして人工物を使った女装に全裸の箔をつけるのは如何なものか、といった指摘は御もっともでありますが、その出来栄は中々のもの。

 卓越した者にもなれば、注視せずに見分けるのは困難でしょう。

 自前の慧眼けいがんを確かめたい方は、下に検索ワードを置いておきますので、どうぞ御利用下さい。


股間タック 女装

*無修正の男性器が表示される場合があります。


 女装子や男の娘によってやり方は人それぞれのようですが、当時行った股間タックと一致するものは見つけられませんでした。

 そうそう話は逸れますが、沖縄空手には骨掛こっかけという技があるそうで、なんでも腹筋の力で睾丸を体内まで持ち上げるといいます。

 実際にタックをした身からしても、手を用いないという時点で驚くほど高度な技とお見受けします。若輩者にはとうてい真似できません。

 薄い緩めのゴムでも被せたものでも良いので、実演ビデオを拝みたいものです。


 遅れまして、話しは当時スーパー銭湯で行った股間タックに戻ります。

 ムスコのタック動画をここに貼り付ける事も叶う便利な時代ではありますが、垢BANは避けたいので口頭にて失敬します。

 一般的な股間タックが鼠径管に睾丸を摘めるのと同じように、勃起した男根を潜らせます。

 下に残された睾丸はどうするかというと、反対側がお留守なので二つまとめて詰めます。鼠径管の真下の玉は奥に、逆側の玉も後に続くように入れて、押し上げたら、先ほど折り挿った男根の付け根に掛けるようにすると__

 なんということでしょう!

 男性器を呑み込んだ左右の鼠径管は隆起し、女性さながら……否、女以上に発達した恥丘を形成するではありませんか。

 とはいえ流石に左右対象とはいきませんし、谷間に詰まったオイナリさんの残り袋が年頃にしてはグロテスクなヒダヒダぶっていますが形は歪……それはそれで相手の良心に眼を背けさせれば願ったり叶ったり。

 一先ず、遠目を欺くには十二分なカモフラージュを発揮してくれることでしょう。


 このような事は誰にでもできるわけではありませんが、出来るからといって危険が伴わない訳ではありません。


 無理矢理亀頭を露出させたカントン包茎の皮が亀頭を絞めつけて鬱血させるように、鼠径管に嵌ったきり帰らぬモノになるやもしれませんので、くれぐれも股間タックは自己責任の元、挑戦下さい。

 当然、児童を超えたら男湯で__ってかやっていいもんなのコレ?


 玉も竿も大きく育つと苦しゅうございます、かといって小振りすぎても嵌りにくくなってしまいます。

 挿れる竿の硬さが足りないと中に居られないのは、女の穴だろうと、男の穴からだろうと同じです。男の女穴めあなとて例外ではありません。

 そう、この芸当は勃起している束の間しか叶いません。

 竿が萎えた途端、たちまち魔法は解けてポロリンコしてしまうことでしょう__おっと、


 話が長引きました。

 のんびりしていては魔力が底を尽きてしまいます。

 時間がありません、気を抜くと魔術が解けそうなのでとっとと次へいってください!

 申し遅れまして、何を隠そう彼の勃起を司る仕事をしている者です。

 はいはいそうだよそーですよー、たった今思いつきましたあああ!っと。

 あとはヨロシクぅ!

・・・・・



 ピアスもメイクもウィッグも無しに女を装う。

 頼るは股間の擬態のみ。

(風呂まで持てばいい……


がんばれモグラちんちん!)

 股間タックの事である。

 何せ年少、知らない現象には好き勝手に名前を付けた。


 因みに勃起は膨らむことから風船ちんちんという。


 硬さに余力があっても、モグラは不意な動作に驚いて飛び出すこともあるから歩くのは慎重に……かといいのんびりもしてられない、風船が萎んでもゲームオーバーだから迅速に__

痛ッ
 ドアの足元に敷いてある水切りが足裏に食い込み、痛みが走る。公共の場に罠を仕掛けたのは誰か。
あ……
 残念ながら時間は尽きてしまった。

 六月は終わってしまった。


 この地の文は謂わば後書きである。

 完全なペース配分ミスだ、文字遊びが楽し過ぎた。


 書く時間が残ってたところで、残り二千字で初めてのお仕事まで書ききれるとも思えない。

 この調子では、浴室に待ち受けるショタコン売女のお姉さんも超えられそうにない、当初300字で片付けようとしてごめんなさい。舐めてました。


 寝る。おやすみ……。


〜終〜

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