(二)-11

文字数 277文字

 尾てい骨を強く打って痛かった。
 足は大丈夫だったけど、よく見ると、右足のヒールがなくなっていた。驚いて左右を見回すと、階段を降りてきた男性の革靴のつま先にあたり、折れたヒールが地下一階部分の床に転がっていくのが見えた。
 急いで立ち上がった。左右の足で高さが違うので戸惑ったけど、周囲に「ごめんなさい」と言いつつ、すぐに折れたヒールを拾い、ポシェットの中に入れた。なんでこんなときにヒールが折れるのか。ちょっと泣きそうになった。でももうすぐ素敵な出会いが待っているのだ。ここで負けるわけにはいかないんだ。
 そして三番線の根岸線のホームに向かった。

(続く)
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