第14話 追及②
文字数 1,699文字
絶マキコは俄然原を改めてじっくりと眺めた後、構えた両手を降ろし戦闘態勢を解いた。それに呼応して絶ヨウコも構えるのを止める。
「じゃあ、やっぱりこいつは只のパシリだったのね。」
「そうみたいだな。俄然原さんは通常業務をやっただけって感じか。それにしても、芥 の野郎…、分かりやすいことしやがる。こんな、調べたらすぐに足が付くような依頼の仕方… …。まぁお前ら姉妹が俺を滞り無く殺して依頼完了て算段だったんだろうが、そうは都合良くいかなかったな。」
俺はソファの背もたれに身体を預けながら、煙草を取り出し火を点ける。
「…畜生。仇違いだったとはいえ、あんたに殺 られたのは、本当に癪 だわ。」
まとまったボブに指を通しながら、マキコが苦々し気に言う。
「そりゃあの戦闘は、お前ら姉妹まったくもって冷静さを欠いてたからな。其処を突かせてもらっただけだよ。まともに殺ってりゃ分かんなかったかもな。」
「…そんな慰めは求めてないわ!」
「ハハ。それはそうと…俄然原さん。じゃあ、それ以外の情報は特に持ってないってことで良いかな?他にも何か知ってるなら教えてくれないかな。」
俄然原は肩を落としてすっかり意気消沈している。完全に観念したようなので、もう力づくで脅迫する必要は無いと思った。只、恐らく今俄然原が考えていることは、俺たちの圧力により情報を吐いてしまった事で生じた自身の身の危険だろう。
「今あんたは屹度、情報漏洩による自身の身の上を心配してるんだよな。それについては大丈夫だと思うよ。何故なら、これから俺たちは芥を殺しに行こうと思ってるからさ。奴さえ殺せばあんたの心配の種も消えるだろう?」
俄然原の身の上等俺にとってはどうでも良い事だったが、俺は俺の事情で芥を始末する必要があり、それは結果的に俄然原の安全にも繋がるので、其処は事実として説明した。憔悴した俄然原の顔に少しだが安堵の色が見て取れた。
「あ、あぁ…。と、とにかく、どんな形であれ私の身の安全が確保できるのなら助かるよ… …。……私が芥次郎 から受けた依頼内容は、あんた、『竹田雷電の殺害』だ。そして、其処に因果を含めてきた。つまり、絶夫婦を殺した犯人は竹田だ。だからこの案件は絶姉妹に依頼したいと。私たち事務の人間も、絶姉妹が仇討を欲していたのは知っていたから、丁度良いと思ったんだ。私が知っていることはこれだけだ。」
「そっか。了解した。」
どうやら俄然原から聞き出せる事は此処までのようだ。まぁ大まかなアタリをつける事が出来て俺はやっと安心する事が出来た。やはり、敵の正体が分からない状態というのは精神的にきついものがある。相手は此方の素性、つまり能力・弱点・環境要因等を把握しているにも関わらず、此方は何も分からないという状態。是程不利で恐ろしい状況は無いからだ。名前だけでも分かれば対策を立てる事ができる。そして、今回のようにその相手が知り合いとなれば、話は早い。だだし、この芥次郎という男は単純だが身持ちの固い奴だ。そいつが、こんな簡単に自身の面が割れるような殺害依頼をする。其処には面がバレても対応できる自信がある、という余裕が見て取れるのだ。芥次郎自体は無能力者なのですぐに殺せるが、もしかしたら、俺に対する何等かの対策を講じているのかもしれない。殺るにしても少し警戒が必要だと思った。
「それで、その芥次郎って奴が、私たちの両親を殺したと考えて良いのかしら?私たちに嘘の因果を含めたからと言って、それがイコール、奴が両親を殺したって事にはならないと思うけど。」
絶ヨウコが腕組みをして赤眼鏡の縁を上げながら呟いた。
「あぁ、それはお前の言う通りだ。だが、奴を知っている俺から言わせれば、芥が絶夫婦の殺害に関与している可能性は高いと思う。まぁ、其処は直接本人に会って直に聞いてみれば良いだろう。いずれにせよ、芥次郎と赤龍会を殺る事には変わりないんだからな。」
「…そう。分かったわ。」
赤眼鏡の奥の眼光が鋭く光り、両手の指の関節を忌々し気に何度も鳴らす。いよいよ仇討が叶うかもしれないと、絶姉妹の身体が火のように揺らめいた。
「じゃあ、やっぱりこいつは只のパシリだったのね。」
「そうみたいだな。俄然原さんは通常業務をやっただけって感じか。それにしても、
俺はソファの背もたれに身体を預けながら、煙草を取り出し火を点ける。
「…畜生。仇違いだったとはいえ、あんたに
まとまったボブに指を通しながら、マキコが苦々し気に言う。
「そりゃあの戦闘は、お前ら姉妹まったくもって冷静さを欠いてたからな。其処を突かせてもらっただけだよ。まともに殺ってりゃ分かんなかったかもな。」
「…そんな慰めは求めてないわ!」
「ハハ。それはそうと…俄然原さん。じゃあ、それ以外の情報は特に持ってないってことで良いかな?他にも何か知ってるなら教えてくれないかな。」
俄然原は肩を落としてすっかり意気消沈している。完全に観念したようなので、もう力づくで脅迫する必要は無いと思った。只、恐らく今俄然原が考えていることは、俺たちの圧力により情報を吐いてしまった事で生じた自身の身の危険だろう。
「今あんたは屹度、情報漏洩による自身の身の上を心配してるんだよな。それについては大丈夫だと思うよ。何故なら、これから俺たちは芥を殺しに行こうと思ってるからさ。奴さえ殺せばあんたの心配の種も消えるだろう?」
俄然原の身の上等俺にとってはどうでも良い事だったが、俺は俺の事情で芥を始末する必要があり、それは結果的に俄然原の安全にも繋がるので、其処は事実として説明した。憔悴した俄然原の顔に少しだが安堵の色が見て取れた。
「あ、あぁ…。と、とにかく、どんな形であれ私の身の安全が確保できるのなら助かるよ… …。……私が
「そっか。了解した。」
どうやら俄然原から聞き出せる事は此処までのようだ。まぁ大まかなアタリをつける事が出来て俺はやっと安心する事が出来た。やはり、敵の正体が分からない状態というのは精神的にきついものがある。相手は此方の素性、つまり能力・弱点・環境要因等を把握しているにも関わらず、此方は何も分からないという状態。是程不利で恐ろしい状況は無いからだ。名前だけでも分かれば対策を立てる事ができる。そして、今回のようにその相手が知り合いとなれば、話は早い。だだし、この芥次郎という男は単純だが身持ちの固い奴だ。そいつが、こんな簡単に自身の面が割れるような殺害依頼をする。其処には面がバレても対応できる自信がある、という余裕が見て取れるのだ。芥次郎自体は無能力者なのですぐに殺せるが、もしかしたら、俺に対する何等かの対策を講じているのかもしれない。殺るにしても少し警戒が必要だと思った。
「それで、その芥次郎って奴が、私たちの両親を殺したと考えて良いのかしら?私たちに嘘の因果を含めたからと言って、それがイコール、奴が両親を殺したって事にはならないと思うけど。」
絶ヨウコが腕組みをして赤眼鏡の縁を上げながら呟いた。
「あぁ、それはお前の言う通りだ。だが、奴を知っている俺から言わせれば、芥が絶夫婦の殺害に関与している可能性は高いと思う。まぁ、其処は直接本人に会って直に聞いてみれば良いだろう。いずれにせよ、芥次郎と赤龍会を殺る事には変わりないんだからな。」
「…そう。分かったわ。」
赤眼鏡の奥の眼光が鋭く光り、両手の指の関節を忌々し気に何度も鳴らす。いよいよ仇討が叶うかもしれないと、絶姉妹の身体が火のように揺らめいた。