5 持続可能性を実現する技術

文字数 1,994文字

4つの政策における課題として、
3つの持続可能性を実現しなければなりません。

しかし、ある技術水準の文明段階において採用できる政策には限界があり、
その限界を越えるため、新たな技術の開発・普及も重要になります。

昔、高校の先生がおっしゃいましたが、
古代社会では民主政といっても、多数の奴隷に依存せざるを得ませんでした。
農業時代に工業時代の豊かな生活や、
工業時代に情報時代の便利な生活をすることはできませんでした。

しかし現在では、人工知能など、文明の持続可能性の実現を可能とする、
新たな画期的技術が開発されつつあります。



それらの次世代技術は、①人工知能(AI)を中心として、
②生物など自然物と、機械など人工物の垣根を取り除き、
いわば()いとこ取りで両者の持続可能性を高める、
③(体内環境を含めた)自然環境や社会環境に優しい、
持続可能性(環境親和)技術ともいうべき技術です。

具体的には、人工知能の導入によって可能となり、あるいは飛躍的に発達する、
IoTとビッグデータ処理、知能ロボット、生物工学(バイオテクノロジー)生体工学(バイオニクス)
新素材や新エネルギー、先進医療・教育などの技術だと思います。

技術と政策は相互支援の関係にあるので、
技術の健全な開発・普及や利用を助ける技術的政策が、
他の政策とも連携しながら、これらの新技術を助ければ、
新技術もまた、各種政策の実現を助けてくれると考えます。

ではなぜ、人工知能が中心となるのでしょうか?
それは人工知能が、従来は人間にしかできなかった仕事(問題解決)のために、
変化する膨大な情報(入力)の中から一般的な法則性を発見・判断し、
それを迅速的確に活動(出力)に活かすことが、できるからだと思います。

知的生命活動の過程(プロセス)とは、
試行錯誤と学習によって、様々な物事の間にある一般的な因果関係を発見し、
それをもとに自己の活動を制御して、原因となる物事に働きかけることで、
自己や種族の保存に好ましい結果をもたらすことだからです。

これまでの電算組織(コンピュータシステム)に対する演算指示(プログラム)では、
『ああいう時はああする、こういう時は、こうする』ということを、
一々教えておかなければいけませんでした。
一方、人工知能という自己改良型の認識・制御演算指示(プログラム)は、
ああでもこうでもない時にも、所定の目的を達成するにはどうすればよいかを、
自ら〝学んで〟いきます。
様々な情報を元に、自ら法則性の発見や適用といった高度な認識を行い、
それに基づいて活動を変化させていくことができるのです。

しかも、電算組織(コンピュータネットワーク)の演算・記録・通信能力は高いので、
その学習能力は人間よりも桁違(けたちが)いに大量高速であり、
同様の事例があれば忘れることなく迅速的確に法則を適用し、
学習内容を他の電子頭脳に広めることも簡単確実です。

小規模電力を集めて広い地域の需要を(まかな)うには、どう分配したらいいか?
一定の機能を持つ物質を見つけて作り出すには、どうしたらいいか?
事故や渋滞を防ぐため、どう運転や交通を制御したらいいか?
ある内容を他の言語で伝えるには、どう翻訳・表現したらいいか?
人々の生活を幸せにするため、どんな助言をしたらいいか?
人間同様の仕事ができるよう、どうロボットを作り、動かしたらいいか?
顧客の需要を満たし収益を増すには、どんな商品をどう提供したらいいか?
難病を治すために、どんな新薬製造や遺伝子治療を行えばいいか?
様々な子供達全てに教育を提供するため、どんな個別的配慮を行えばいいか?
国民の満足を高め行政費用(コスト)を下げるには、どうしたらいいか?
……それらに必要な法則性を発見し、情報提供や機械操作につなげるのです。

あくまでもその最終目的は人間が決定し、
結果も人間の不利益にならぬよう管理することを前提に、
従来は人間にしかできなかった仕事(問題解決)を
より良く可能にしていけるのが、人工知能技術の画期的な点であると思います。

農耕技術は体外物質の利用により、文明を成立させました。
工業技術は体外動力(エネルギー)の利用により、文明活動を世界規模に拡大しました。
情報技術は体外情報の利用(演算・記録・通信)により文明活動を効率化し、
地球という環境的限界への到達による衝撃を緩和しました。

それらに続き、上記のような機能を得た人工知能(AI)は、
新たな知性の創造により、文明活動を環境親和化し、
地球上における持続可能性を実現する、
次世代の主力技術と言えるのではないかと思います。
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