文字数 15,695文字

 赤と間抜けな黄色のチェックのエプロンに「高木」というネームプレートが、付いている。今は、こういう男のことを、保育士と言うらしい。保育園に迎えに行ったら、突然若い男が対応に出てきたから、驚いた。
「上野彼方くんの、お迎え代理の方ですね」
「そうですけど」
「失礼ですけど、お名前聞かせてください」
「水上です」
「すみません、フルネームでいいですか?」
「え。なんですか?」
「一応規則なんですよー、万一の事があるから」
「万一?」
「ええ、誘拐とか」
「そんな事あるわけないでしょ」
 どこまで杓子定規なのだろう。
「はは、誘拐はないかもしれないけど、別れた親権の無い方の親が、連れ去っちゃうのは割とあるみたいなんで」
 そうか。そんな時代か。なんだか納得してしまい、
「水上雅(みやび)」
 と名乗る。ぶっきらぼうに。
「雅さん? すごく素敵で綺麗な名前ですねー」
 スィッチが、入ってしまう。このように言われると、私の心のどこかでスタートボタンが押され、冷静ではいられなくなってしまう。
「あんたの名前はねー、考えるの面倒くさくって私から一文字取って付けただけなのよー」
 あの女が酔うと、酒の肴にいつも言うセリフ。あの女の名前は、雅子。本当に何も考えていなかったのだろう。「みずかみみやび」名前の中に「み」が、三つ。言いにくいことこの上ない。舌を噛みそうで、注意を要する。普通母親の名前から字を取って命名する場合、そこには愛と思い入れがあるだろう。
 だからよく、
「そんなに愛情をかけられて、娘さんも幸せね」
 と、私の名前を知った人が口にしたものだ。するとあの女はここぞとばかり、
「違うんですの。予定外の子供だったもんですから、名前を考えるのも億劫で」
 と笑う。まるで武勇伝でも話すがごとく。毎度毎度お決まりのストーリー運びで、私を出汁にしてその場を沸かせる。
 一度「み」のことで、文句を言ったことがあるが、
「いーじゃないの、どうせ結婚して苗字変わるんだから」
 と軽くあしらわれた。この年になっても、まだ水上姓でいるこの事実。おそらく、一生このままだ。舌を噛み続け、常に口内炎でも作っていろと言うのか。
 しかし、初対面の人に説明するのも時間の無駄なので、
「そうでしょうか」
 と聞き流すことにしている。だから、今日も高木に向かって、同じように接した。
「あー、みーやんだー」
 高木の後ろから、男の子が駆け寄ってくる。みーやん・・・。それは、何のことだろう。
「みーやんだ、みーやんだ」
 私の手を、取る。もしかして、上野の息子か。黒目がちの瞳が似ている。
「彼方くん、このお姉さんのこと、みーやんて呼んでるんだ。雅さんだからか。いーなー、先生もそう呼んでみたいなー」
 子供に調子を合わせるというのは、このようにやるのか。初めて知った。
 私には友達がいないから、友達の子供と触れ合ったこともない。私が「予定外」だったあの女は、他にきょうだいを作ろうという発想もなかったようだから、家には私一人が子供。でもただの一度も、こんなふうな声かけをしてもらったことは、ない。
「呼んでもいーよー」
 勝手に決めるな。子供目線の高木なら、真に受けて呼びかねない。
「それは無理だよ、彼方くん。先生は、雅さんと今日初めて会ったばかりなんだから、ずうずうしいだろ」
 名字ではなく「雅さん」というだけで、すでに相当に無礼。
「あれ、ボクだって初めてだよ。今、ここで初めて会ったの」
 高木は、ちょっとだけびっくりして、心配そうな目つきになった。
 初めて会って、これから母親の上野が帰って来るまで彼方と二人きりで過ごす。密室で、何が起こるかもわからない。心配になって当然。何より私は、子供が嫌い。お金さえもらっていなければ、こんな役は引き受けない。
 けれども高木の目から心配のまなざしは、もう消えていた。そして、
「そうか、初めてなんだ。でも、雅さんやさしそうで良かったねー、彼方くん」
 彼方を安心させるためか。それとも、私への釘刺し? どちらにしても、知りもしないのによく言う、と思う。
 保育園は迎えの時間が決まっているわけではないらしい。この時間帯に引き取りに来たのは、私だけ。暇つぶしのつもりなのか、高木は色々と聞いてくる。私は早く解放されたくて、後ずさりを始める。
「はい、みーやん、この手提げ持ってね。今日の着替えとかが入ってて、水遊びして濡れちゃったズボンが入ってるから、ちょっと重いよ」
 彼方に手渡された布製のバッグは、本当だ、ずっしりと重い。紺地に飛行機のアップリケが、ついている。ちょっと翼が、大きすぎる。上野の手作りだろう。
 両面コピーを取る時に、上下の位置を必ず間違えてやり直している上野は、多分不器用。この翼も、本当は、失敗なのだろう。
「あ、みーやんだ、みーやんでしょう?」
 園庭で遊んでいた他の二、三人が駆けよって来た。有名人にでも会ったかのような、盛り上がり方。
「彼方くんが朝からずーっと自慢してたから、覚えちゃった。みーやん、本当にかわいいね」
 女の子が、説明してくる。
「良かったなー、みーやんがかわいくてさー」
 彼方まで、言い始めた。その時、突然右手が、生温かくなった。驚いて見ると、背の低い男の子が、勝手に私と手を繋いでいた。生温かいだけではなく、ヌルッともしている。今の今まで砂場で遊んでいたらしい。水を加えて粘土状になった砂がついているその手で。
 思わず手を振りほどこうとした。このままでは、スーツが汚れてしまう。こんな予想外のことが起こるとは。しかし。思いのほか男の子の握力が強く、無理に離そうとした場合、砂だか泥だかが飛び散って、スカートにこびりつきそうだ。できない。
「あー、いいなー。みーやんと、手繋いじゃってる」
 彼方が闘争心むき出しで近づいて来て、左手にしがみついた。私、何をやっているのだ。高木は、なぜ助け舟を出さないのか。ニコニコ笑っている場合ではない。ふざけるのも、いい加減にしろ。
 高木は高木で、先ほどからジャンピングおんぶと呼びたいような、助走をつけて背中に飛び乗る園児を懸命に受け止めていた。園児だからと言って、侮れない。来年は、小学生なのだから。
「はい順番、順番―」
 高木は、嫌な顔一つせず、背中の痛みに耐えつつ、子供達を乗せている。
 それにしても。かわいいって、どういうことだろう。多分、おそらく人生で初めて言われた。それに気づいたとき、内心相当に慌てふためいた。
 「かわいくない」は、何千回何万回言われたか、わからない。私が、ちょっとでも要求を拒否すると、
「まったく! かわいくないね!」
 と言った、あの女。それは、六歳の子供に夜中にビールを買って来い、というような理不尽で危険な命令。首を縦に振れるわけがない。それなのに、黙っていると。間髪をいれずに、
「かわいくない」
 と吐き捨てられたものだから、だんだんと私はかわいくないんだ、という呪縛にからめとられていった。
 そうしていつもムスッとだったり、ブスッとだったりの表情をするようになったものだから、小学校の頃はもとより、大人になってからも、ついぞ言われた記憶などないのだ。
「先生―、みーやんてかわいいよね」
 彼方が叫ぶように言うと、
「でしょ」
 丸ごと受けとめる高木。どういうつもりだ。迷いも澱みもない肯定。こっちが、揺れる。
 多分段々に険しい表情になっていたのだろう。当然だ。図に乗って、はにかみながら、
「そうかしら、ありがとう」
 などと言おうものなら、
「ウソだよーん、かわいいわけないじゃーん」
 と足蹴りされ、すっころばされるような気持ちにさせられたら、まずい。もう、そういうのは、できないのだ。これ以上どん底に落とされてしまったら、這い上がっては来られない自信が、ある。
 高木は、私の変化に気づいたようで、
「子供ってのは、本気で言ってますからね」 
 と子供達をフォローするようなことを言う。
 それにしても。恥ずかしいではないか。まだ数年しか生きていないこんな子供に「かわいい」と言われ、どぎまぎしてしまうなんて。みっともない。そうして、相当に哀れ。ちょっと嬉しくもあるから、尚更に。高木の同意を「かわいい」と言われたことにカウントすべきかどうかも、やはり判断出来ない。
 
 上野のマンションの中は、想像していたより散らかっていた。あれほど意欲的に仕事をこなしているから、てっきり何事もパーフェクトにやっているのだと思った。
 リビングの隅には洗濯物の山。それも二、三回分。時々彼方がダイブしているが、顔から倒れてみたくなる程、こんもりとしている。おまけに彼方のおもちゃが散乱していて、雑然とした雰囲気は、全ての部屋に漂っている。
 興味本位で寝室を覗いてみる。八畳の和室で、なんと布団が二組二つ折にして置いてある。押入れがあると言うのに。いつも、こうなのか。今日私が来るのに、よくこんな状態で出かけられるものだ。私が、社内の人に言いふらすとは思わないのか。もっとも私はそんな事を話せる同僚がいないから、そこまで見透かされている可能性もあるけれど。または、私などに見られたところで、どうということないとたかを括っているのか。そうだとしたら、よほど見くびられているというもの。
 夫、つまり彼方の父親は、昨日から北海道に出張らしく、上野本人も早くて八時半頃の戻りだという。夕食は、別途もらった三千円で何か買って食べさせてくれ、と言われていた。目一杯使ってやれ、といつもは行かない輸入食品中心のスーパーマーケットに寄った。それなのに。彼方が、ポイポイとかごに入れるのは、野菜や肉などの素材ばかり。どういうつもりだ。私に夕食を作れとでも?
「こんなの入れられても、私料理なんて作れないんだから」
 入れるそばから、棚に戻す私。
「大丈夫だよ。ボクが知ってるから。それに、みーやんも絶対に作れる野菜炒めにするから」
 また棚から韮をカゴに入れてしまうのだった。野菜炒め。切って、肉と炒めればいいのか。油は、どうするのか。味つけは?
 私は、せっかく久しぶりに来た高級スーパーで、途方に暮れていた。
「みーやん、早速やろう」
 彼方が、キッチンから叫ぶ。どうして、あんなに屈託がないのだろうか。始終無愛想で、時折ため息までつく私を見ても、全然動じない。私の感情や態度がどうであれ、自分のペースを崩さない。人なつっこく、元気いっぱいだ。
「みーやん、ラッキーだよ。冷蔵庫に卵二つ残ってた」
 先程卵を買おうとしたが、彼方がどうしてもアメリカ直輸入のポテトチップスを欲しいと言ったので、そちらを優先したのだ。
「良かったねー」
 つい、彼方の調子に合わせてしまう。
 新鮮な、驚きではある。
 私が誰かに同調する。過去にあっただろうか。記憶にない。プライドに傷がつくような気もしたが、相手は子供。ノーカウントにしよう。
「みーやん、もう作り始めるでしょー。肉も冷蔵庫に入れなくていいよねー」
 年長クラスって。こんなに話せて、こんなに理解力もあるものなのか。言っている言葉が伝わらなかったら、どうしようかと思っていたが、いらぬ心配だった。私は、だんだんと彼方のペースに巻き込まれ、そそくさと手を洗い、キッチンに立った。
「はい、ママのエプロン貸すから」
「ありがとう」
 自分で、とってもびっくりしてしまう。誰かに対して、お礼を言うなんて。この五文字は、口が裂けても使わないと思っていたし、事実物心ついた頃から、口にした覚えは、ない。
「どーいたしましてー」
 かわいいイントネーション。
 お礼を言うと、このように返してくれるものなのか。知らなかった。上野と彼方は、いつもこんな会話を交わしているのだろうか。交わしているのだろう。何故なら、彼方の受けこたえはとても自然だからだ。彼方の動きを横目で見ながら、
「この手があったか」
 と考えていた。あの女に何を言われても、彼方みたいに悪びれずに抱きついたり、なついたりしていたら。いつもニコニコ笑っていたら。あの女も、根負けして私に優しくしたのだろうか。
 誰からも何も教えてもらわなかった私は、ただただあの女の暴言から逃げるべく、身を堅くして、うずくまっていただけだった。そうやっていれば自ずから、目つきも卑屈になっていく。今日は、どの位機嫌悪いのだろう、とあの女の顔をチラッと覗く。あくまでも、程度を知るためだ。だって、常に機嫌は悪い。良い時など、ないのだ。その目つきが、あの女にとっては、睨んでいると思ったらしい。違うのに。
「まったく、嫌な目で見るね。こっち向くな」
 これで、今日も相当に虫の居所が悪いことが、わかる。
 彼方方式を採用するとしたら、そんなことを言われても、笑顔をたたえたまま、
「そんなつもりで見たんじゃないよー」
 と言う感じか。それとも、
「ママー、怖い顔しないでよー」
 と頼むのか。
 わからない。全くわからない。どうすれば、あの女の逆鱗に触れず、子供らしい日々を過ごすことができたのか。それとも、どんな手を使っても結局できなかったのか。
 私は、毎日何十回とあの女のことを、思い出してしまう。何気ない日常の一コマ、何かちょっとしたことで、まるで過去からものすごく長い追い手がやってきて、わたしの襟首をつかみ、あの女と暮らしていた、狭くむさ苦しい部屋に引き戻されるような気分になる。
 そういう時、抗えない。明らかに、何かのボーダーを越えている。そんじょそこらの努力では、現実に戻ってくることが出来ない。
「このままここにいると、狂ってしまうから早く立ち去らないと」
 追い手を振りほどき、息も絶え絶え、そのボーダーをまたいで現実に戻って来る。とても、疲れる。それを一日に何回も。
 今も芋づる式に、辛い思い出に絡め取られて、心が遠い所に行ってしまったようだ。
 彼方に肘をつつかれて、気づいた。二、三往復生返事をしていたらしい。悪いことをした。そういう受け答えが、傷つくことを良く知っている私なのに。
 こわごわ野菜を、切っていく。あの女は、好き嫌いが多いし、そもそも食べることに何の執着も抱いていなかったので、食事と言ったら菓子パンかカップラーメンが主だった。たまに学校にお弁当を持って行かなければいけない時は、まずコンビ二でお弁当を買って来て、私に放り投げる。私は、それを必死に受け取り、自分のお弁当箱に詰め替える。
 学校の予定表など、見るタマではなかったので、必ず私が頼み込んで買って来てもらうのだった。だいたいが運動会などの行事の時に必要になるが、もちろん応援に来てくれたことなどない。だから、お弁当の時間は、教室で急いで食べる。他の子は、校庭で家族と一緒に食べているから、大抵は一人。たまに、同じような境遇の子も教室に来たけれど、そもそも友達ではないので、どちらにしろ一人で食べていたものだ。私が言うのを忘れたら・・・・その日の昼食は、なしだ。
 一度だけ、そういうことがあった。二時間目の授業中にはっと気づいて。蒼くなった。そして、仮病を使い保健室に行ったと思う。あまり重病のふりをすると親を呼ばれてしまうので、そこは適度に。なんとか昼食時間を凌ぎ、寝ていたら治ったと嘘をついて、午後の授業に出た。あの時は、どうしてお弁当だったのだろう。給食室の水道が壊れたか何かして急遽お弁当になったのかもしれない。おなかが空いて、ふらふらした。
 もっとも私といえば、幼い頃いつも空腹だった。だから、給食が命綱だった。休んだ子の分まで食べ、余ったパンやご飯といった炭水化物をこれでもかと、ばか食いするので、飢えていたくせに小太りだった。だから誰も、あの女が食事を満足に与えていないことなど、知らなかった。私の身体は、栄養のバランスを欠き、ほぼ炭水化物でできていた。
 切った野菜が、まな板の上を占領して、人参を切るスペースがなくなってしまった。適当にフライパンに投入していると、
「みーやん、人参は先の方がいいよ、堅いからね」
 彼方が、全く邪気のない表情をして教えてくる。
「そうだね」
 私は、とても素直に同意できる自分に驚いた。
 あの女は、いつもキリのような突起物が沢山出ているような言葉を私に投げつけるものだから、まず防御しなければならない。いきおいこちらも、攻撃的になる。同じような毒を含んだ言葉を、投げ返す。あの女との時は、明らかにあっちが先攻だった。
 しかし、真弓との時は、どうだっただろう。多分発端は、私だ。真弓も、すいぶんと冷たくひどい言葉を私に言ったが、彼女には友達も沢山いるみたいだし、何より結婚する相手ができたのだ。真弓の言葉は、売り言葉に買い言葉。つまり私が、挑発したのだろう。きっと。いつもは、人を思いやる言葉を選んで会話をしているに、違いない。
 言い合いをしても、真弓は決して、
「もう来ないで」
 とは言わなかったように思う。それどころか、時々一人で旅行に行くニューヨークのお土産を毎回買ってきてくれた。私は、文句を言いつつ、今もエンパイヤステートビルが印刷されたチョコレートの包み紙を捨てられないでいる。他に私に物をくれる人なんて、いない。
 真弓には、もう少し心を開いても、良かったのではないか。すぐそばでくったくなく笑っている彼方のように、人の心に素直に飛び込むことができるなら、私も余計なトラブルをこうむったり、陰口を叩かれないで済んだのかもしれない。
 けれども彼方は、痛々しい。九十九パーセントは、天性の明るさだと思うが、残りの一パーセントは、きっと無理をしている。突然初対面の子供のいない女が母の代わりにやって来て、嬉しいわけがあるものか。めいっぱいはしゃいだ振りをしているが、これはこれで疲れるだろう。
 自分の本当の気持ちを表現できないという点では、幼い頃の私と大差ない。明るいか暗いかの違いくらいだ。私は、とことん心を閉じて、誰も寄せつけないようにしていたけれど、それだって演技だったはず。本当は、普通に喜んだり悲しんだりしたかった。
 食事の準備が整い、彼方が食卓に誘う。
「ここ座っていいよ、ママの席だから」
 彼方の真正面。彼の肩越しに、壁掛け時計が見える。きっと上野は、朝の忙しい時、横目で時計を見ながら彼方と食事をとっているのだろう。
「いただきまーす」
「いただきます」
 普段はついぞ言わない六文字を、つられて口にする。空腹だったのだろう、彼方はものすごいペースでたいらげていく。
「だけどさー、みーやん、今日は助かったよー。みーやんが来てくれなかったらさー、ボク先生たちの会議に一緒に出なくちゃいけないとこだったー。あれ、嫌なんだよねー」
 以前に二、三回どうしても迎えが遅くなって特別に預かってもらったことがあったらしい。それも当日に急にどうしようもなくなったらしく、先生たちが、彼方の処遇をこそこそ話し合い、しかたなく会議に同席させたり、近くに住む先生宅に行ったりしたのだという。子供の言い回しなので、何度も言い直したり、他の表現をしたりしたが、彼方が「嫌だ」と感じたのは、「邪魔者」みたいに扱われていることだとわかった瞬間、私は胸が詰まった。
 「ここにいて欲しくない存在」私が痛いほど味わった気持ち。自分のことのように、その状況が想像できた。
「それでね、先生の膝に乗ってね、大人しくしていないといけないの。難しい話だからね、ちっとも面白くないのにだよ」
 彼方は、野菜炒めに少し醤油を追加しつつ、訴える。
 私は、今までの人との関わり方を呪った。こう言う時に、
「それは、大変だったねぇ」
 とか、
「わかるよー、その気持ち」
 とか、気の利いた言葉かけが全く出来ないのだ。頭の中で思い描いても、決して口から発することはないし、仮に言ったとしたら、あまりにも自分らしくなく、鳥肌でも立ってしまいそうだ。
 彼方は、私の葛藤などおかまいなしに、
「今井先生んちに行った時なんか、サイアクだったよ。夕ご飯ね、そこんちに子供三人いるんだけど、ご飯の間じゅう、ずーっと睨まれちゃって」
「なんで?」
「やだー、みーやん、わかんないの? ボクが来ちゃったから、その子達のおかずが減っちゃったからだよー」
 この年で、そんなことまで理解してしまうのか。彼方という子供は、どこまで状況を把握する力を持っているのだろう。子供は、大人より傷つきやすい。それを皆、忘れてしまう。多分、今の私も。
 食事が済んでも、上野は帰って来なかった。しかたなく、彼方と遊び始める。最初、ゲームをやろうと誘われたが、やったことがないから、と断った。原始人を見るような目つきで私のことを見た後、
「じゃ、トランプならできるでしょ」
 と、本棚についている引き出しから、かわいいキャラクターのついたトランプを持って来た。大分年季が入っている。いつも、上野や父親と遊んでいるのだろう、カードさばきも、上手だった。この位の子供ができるトランプゲームは、何だろう。
「ばば抜きは、二人だとつまんないから、七並べね」
 悩むことは、なかった。彼方が、主導権を取り、カードを配り始める。あの女とはもちろん、トランプで遊んだことなどないが、まだ完全には心を閉ざしていなかった小学校の頃には、友達と遊んだことはある。ルールを思い出しながら、つきあった。なぜか私に良いカードが集まり、数回勝ち続けた。
「みーやん、強いー。ボクも、勝ってみたいよー」
 子供慣れしている人間は、こういう時どうするのか。わざと負けてあげるのか。それとも、容赦せず対等に戦うのか、しかし、七並べではあまり小細工もできないので、それからも私がずっと勝ってしまった。
「もう終わりね、この一回で」
 と宣言して始めても、勝敗が決まると、
「もう一回、もう一回だけ」
 と彼方がせがむのだ。その繰り返しで、二十回以上プレイして、さすがに疲れてきた。
 私の腕を取り、
「もう一回だけだったらー」 
 と言うので、
「もう堪忍袋の緒が切れた」
 つい言ってしまう。彼方には、難しい言いまわしだったか。聞き流すだろう、と説明もせずに放置。
 突如彼方が立ち上がり、私の膝に乗ってきた。それだけでも驚きなのに、なにやら首のまわりで両手をもにょもにょ動かしている。
「何? 何なの?」
「結んでんの」
「何を?」
「堪忍袋の緒だよ。切れちゃったんでしょ」
 吹き出しそうになる。
「ママも時々切れるからー。ははは」
 彼方は、こうやって絶妙のタイミングで愛くるしさを振りまき、上野を和ませているのだろう。堪忍袋の意味も、ちゃんと理解し、結べばおさまると考えているらしい。
 まずい。
 この子を、抱きしめそうになる。それも、力の限り。けれど、心のどこかで、そんなことをしてはいけない、私らしくない、そんなことをするべきではない、と警告音ががんがんと鳴り、ついぞ私は両手を彼方の身体に回すことはなかった。
 彼方は、抱きしめられることを期待していたかもしれない。もしそうだとしたら、本当に申しわけない。今この瞬間に欲しい人のぬくもりが、どうしてももらえない時ほど、辛い時間はない。身をもって知っている私が、同じことをしているのかも、と思うだけで、心の中にドライアイスのようなものでできた球形の不安がぐるぐる回ってしまうのだ。
 この球が成形されると、大変。私は、深く暗い過去へと行ってしまう。あれは、十歳くらいだったと思う。どうしてそんなことになったのか、覚えていない。家の風呂が故障していたのか。とにかくあの女に連れられて、銭湯へ行った。初めての場所。ロッカーが並んでいて、裸の人が何人もいることにびっくりした。
 銭湯とは、とあらかじめ説明されていたら、こんなふうにはならないのだ。しかしあの女は、そんな思いやりを見せたことは一度もないから、私は戸惑うばかりだった。人前で裸になることにも、抵抗があったのだと思う。
「なにグズグズしてんのよ! 早く脱ぎなさいよ。中に入れないでしょ」
 ヒステリックなあの女の声が。靴下とスカートを脱ぐ。あの女が、トートバッグと、羽織ってきたカーディガンを入れたロッカーに一緒に入れようとすると、
「やめてよ。こっちの空のロッカーに入れればいいでしょ。まったくなんでそうのろまなんだか」
 と靴下とスカートを出し、放り投げてきた。私の身体に触れたものは、汚いとでも思っているような扱い。多分何日ぶりかの入浴だったのだろう。
 たしかに靴下は汚れていたかもしれない。でも、それはいつものことだ。あの女は、洗濯もしないので私は十日間くらい同じ服を着ることがよくあったし、下着でさえ二枚くらいしかないから、気持ち悪いのをなかったことにして、ずっと同じものをつけていた。
 しかしあの頃はまだ、頼らなければ生きてはいけないと本能的に知っていたので、ついこびへつらった態度をとっていた。
「うん、わかった。こっちのロッカー使う」
 脱ぐのが遅いと、またどやされると思って、急いで全裸になった。あの女は、脱ぎつつシャンプーなどの用意をしているので、脱衣に時間がかかる。どうして良いかわからない私は、あの女を待っていたのだろう。すると、
「なんでバカみたいにつっ立ってんのよ。早く入りなさいよ。私は、用意もしなくちゃなんないんだから」
 と怒鳴る。けれども、一人で浴場に入るのは、怖いのだ。ガラス戸の向こうは、湯気が立ち込めていて、未知なる世界。どうしよう、どうしよう。ここにいたら、また叱られる。中に入る勇気もない。
 私は、わざとゆっくり浴場の方へ行き、ガラス戸を少しだけ開けて、中の様子を探った。五、六人の年配者が、身体を洗ったり、湯船につかったりしていた。思い切って中へ入ろうとしたとき、湯船の女と目が合った。なんだか目つきが、怖い。手振りで、戸を閉めろと合図。私が、戸を開放しているせいで、冷気が入ってしまったのかもしれない。睨まれたことに恐れおののき、あわてて戸を閉めた。その時、左手の中指に激痛が走った。戸に指を挟んでしまったのだった。とても痛かった。
 でも。あの女に言えば、絶対に怒られることを知っている私は、とりあえず指をかばって移動した。
「注意力が、足りない」
「ほら見なさい。素直に入ればいいのに、余計なことするから」
「相変わらずどんくさくて、呆れるわ」
 言われてもいないのに、あの女の声が両耳のあたりでぐるぐると回転しだす。私の予想が良い意味で裏切られたことは一度もないから、何か言ったとしても、こんなような感じの内容と大差ないだろう。
 中指を、水道で冷やそうと思いつく。まず、あの女の方をチラッと盗み見て、状況を確認。気がつかれたら、怒鳴られること必至だからだ。幸い、あの女は脱いだ服をたたむのに忙しい。肉のついた背中を丸めて、順番にたたんでいるから、もう少し時間はかかるだろう。私の洗濯物など、たたんでくれたことなど無いくせに、自分のものはあんなふうに扱うのかと思いつつ、水道に向かう。水の音で気づかれないようチョロチョロと出して中指を冷やす。痛みは大分和らいできた。血が出たりしなくて良かった。これでこの出来事はなかったことにしてしまえるから。
 もう一度あの女の動向を探ろうとロッカーのあたりに目をやると、あの女より少し年上のショートカットの女と目が合った。ドキリ、とした。その女は、目に涙がいっぱい溜まっていた。どうしたのだろう、と思ったが、静かに座っていて動く気配も見せない。私は、見てはいけないものを見てしまった気がした。
 おそらく彼女は、私のことをずっと見ていたのだろう。何をしてもあの女に怒鳴られ、指を挟んでも、助けを求めず自分で冷やし、そんなことにも気づかれない。かわいそうな私を見て、涙ぐんだのかもしれない。彼女も同じような、経験をしたことがあるのか。それとも、自分の少女時代とあまりに違うので、憐れに思ったのだろうか。
 理由など、どうでもいい。心が動いたなら、私を助けろ。私は、ぎりぎりのところで生きていたのだ。誰かが助けてくれたなら、
「雅ちゃんは、悪くないよ」  
 と一人でも言ってくれる大人がいたなら、私の人生、全く違っていただろう。
 ショートカットの彼女のことは、時々思い出すが、助ける勇気もないのなら、生半可な涙なんか流すな、と今でも思う。
「なぁんだ、結局誰も助けてくれないんだな」
 とただただ再認識しなければならなかった悲しい記憶になっただけなのだ。期せずして、通りすがりの誰かがこんなふうに重要な役割を担ってしまうことがある。
 今。抱きしめなかった私の手が、将来彼方のトラウマになりませんように、と願う。
 それでも、私は彼方の言葉に笑っていた。笑っていたのだ。呆れるほどに。久しぶりの笑顔。明日あまりに使っていなかったその筋が、筋肉痛になるかもしれない。予想外のことに、私は彼方の前で取りつくろうのに必死だった。

 それから、三週間が経ち、私はまた上野に頼みこまれた。今度は、迷惑そうな素振りをするのに苦労した。少し、嬉しかったからだ。彼方と別れた後、私の膝には彼の体重、体温が残され、座った電車の中で重いトートバッグを膝に乗せた時など、その感触がよみがえって困ることがあった。
 そこから、幸福感のようなものが、湧き出てしまうからだ。私とは一生無縁の人並みの幸せ。こんなちっぽけなことから、それを味わうなど、許しがたい。私は、そんなもので騙されるほどお人よしではないのだ。けれども、もしかしたら、私はあの女によって、
「幸せになってはいけない」
 と執拗に呪いをかけられているのかもしれない。最近、そう思う。些細なことで喜びを感じることは、むしろ良い事なのではないか。そう思い始めるすぐ横で、
「いやいや期待して裏切られたら面倒くさいから、やめろ。人生は、苦しみばかり」
 と唱える声をキャッチしてしまう。
「前回同様お支払いはさせていただくから、どうかな?」
 上野は社外とのプロジェクトが佳境に入り、ほぼ毎日残業していた。
 私に頼まない日は、おそらく夫や両親など他の人が彼方の世話をしているのだろう。また彼方に、会える。そう思うと嬉しいのに、
「前回より千円増しなら受けますけど」
 と真顔で言ってしまう。かといってかなりの値上げを要求すると断られてしまうかもしれないので、こんな額を提示。素直に了承することは、できないのだった。
 今度も園庭を歩いている時点で、
「みーやんだ、みーやんが来た」
 と見知らぬ何人もの子供に叫ばれた。
「すみません、私の名前は水上って言うんですけど」
 子供相手に、文句を言う。
「みーやんたらー」 
 彼方が、出てきた。なんだ、このわくわくは。彼を見たら、胸が躍るような気持ちになった。
「ボクたち子供なんだよ。みやびって言いにくいんだ。みーやんで、いいでしょ。みーやんの方がかわいいから」
 かわいい・・・。また、言われた。
 かわいくなんて、ないだろう。私のどこがかわいいのか。前回に引き続き、そんな嘘。人をからかうのも、いい加減にしろ。怒りが溢れそうになったが、ふと冷静に考えると、かわいいのは「みーやん」という響きであることに気づく。自分で、恥ずかしくなる。
「雅さん、久しぶりです」
 高木だ。名前、覚えているのか。
「モテモテだね」
 気づくと、右腕に一人、右手に一人、左腕に一人。計三人の子供がくっついていた。うろたえる。何故だ。愛想をふりまいたわけでもないのに、どうしてこんなことに。それとも、子供はよくこういうことを、やるのか。
 ドン! いきなり背中を押される。
「みーやん、こっち来てー」
 また知らない子が、背後に来て、すべり台の方へと誘う。仕事帰りの服装で、すべり台なんて絶対に無理だ。手を引かれるまま、五、六メートル進む。どうやって断ろうか。服のことで、納得するとは思えない。
「ほーら、今年初めて出しちゃうぞー」
 振り向くと高木が、何か手にしている。
「うわーやったー」
 ほぼ全員が、高木に向かって走っていく。
 私も、解放された。高木は、水鉄砲を持っていた。最近のものは、ずいぶんと進歩していて、水の出方が霧だったりジェットだったり切り替えられるようになっている。機械音まで奏でる。両手の水鉄砲をあっという間に奪われて高木は、二カッと笑って私の方に近づいてきた。
 そうか。私を、助けてくれたのか。子供達の気をそらせて、すべり台のことを忘れさせる目的で。
「雅さん、彼方くんのママと同じ会社ですよね。食品か何かの商社って聞いたことあるけど。仕事間違えたんじゃない?」
「え・・・・」
 高木、何を言っているのだろう。全くわからない。
「ふつう、子供はあんなふうになつくもんじゃないんですよ」
 高木は、遠い目をして言った。
「なんか、保育園児って、全員天真爛漫で、はじけててっていうイメージあるようだけど、皆それぞれ。大人だってそうだけど、明るい子もいればそうでない子もいるんです」
「そうですか。ま、そうでしょうね。全員明るかったら、気持ち悪いですからね」
「いつもすごく大人しい子、たとえばさっき雅さんの右腕をつかんでいたまどかちゃんは、あんなことしないんです」
「どういうことです?」
「子供は、良く知っているということ」
 答えになっていない。余計わからなくなってしまったではないか。
「つまりね」
 高木は、長い説明になることを予想したのか、息を大きく吸い込んだ。
「その人が、まっとうな人間かどうかを本能で感じているということです。よくいるでしょ、子供好きなのとか言って自分から近づいて行くくせに、全然相手にされない人」
「そんな人いるんですか」
「いるの、いるの。どこまでも大人目線だから子供に仲間だと思われない。仕方ないから、物で釣ろうとするけど、余計見下される」
「私、子供いないから、そんな人がいることも実感できません」
 私達の会話は、時折水遊びをする子供達の歓声にかき消される。高木は、私と話をしながらも、絶対に子供から目を離さない。水鉄砲の取り合いは静観するが、それが高じてつかみ合いになると、上手に仲裁に入る。
「ちょっとたとえ悪いけど、犬好きは犬が知るみたいな感じって言えばわかりますか。雅さん、犬も寄って来ませんか」
 そう言えば、歩いていると必ずリードを目一杯引き伸ばして寄って来たり、目が合うと尻尾を急に激しく振り出す犬がいる。犬を飼った事もないので、だから扱い方も知らず立往生することが多いが、飼い主に引っ張られ去っていくのに何度も振り返ったりされる。前から少し不思議だったのだ。
「子供も犬も、知っているんですよ、。雅さんが子供のように純粋な心を持っていること」
 高木。高木保とネームプレートには、書いてある。二、三歳下だと思うが、どうしてこんな事を言うのか。会って二回目の私に、なぜ。
「さっき仕事間違えたんじゃないって言ったけど、こうも言えるな。子供と触れ合う仕事のほうが天職なんじゃないかな」
 沈黙が、数十秒。反応のしかたが、わからない。
「そんなそんな。高木先生みたいに、上手に子供と遊べませんから」
「会ったばかりなのに、そんな事言うなんて、立ち入り過ぎじゃありませんか」
 沢山のリアクションを考えては、自ら却下し、ますます焦る私だが、高木は気にもしていないようだ。その間子供達の様子を眺めていて、別にこの会話の途絶えた時間も気にならないようだ。
「雅さん、今の仕事楽しいですか」
 この質問なら、答えられる。
「楽しいとか、楽しくないとかの問題ですか、仕事って。ただ、お金を得るために時間を切り売りしているだけでしょ」
「あー雅さん、もったいないなー、それじゃ、一日の大半辛いだけになっちゃうでしょ」
「甘いわね。こっちは、東京に出てきて一人で暮らしてるのよ、働かないと食べていけないのよ」
「あらら、それは僕も同じです。多分世間相場から言ったら、僕の職業は収入も少ないと思うけど、毎日楽しいから、それで充分です」
「負けおしみ言わない方がいいですよ。しょせん最後は、お金。そんなきれいごと言ってる人に限って、お金に泣くことになるんだから」
 高木が向きを変え、私の顔を覗きこむ。こんなに私を見ていて、子供達に何あったらどうするのか、と心配になった頃、相好が崩れて笑い顔になる。何が起こったのか、私は、拍子抜けしてしまう。
「雅さん、面白いね、悪態オンパレード。他に方法知らないから、やってるんでしょ。お金だけじゃないから、人生は」
 全ては、否定から入る。否定できない時は、「個人的に嫌い」という領域で語る。あの女が、いつもやっていたこと。格好の餌食だった私は、それをかわすために、いつも一瞬にして「石の人形」になった。言い返すことは、逆効果。さらに激しい罵りが降りかかる。悲しんでも、無駄。せせら笑われるのが関の山。
 というより私が弱り落ち込むことが目的なのだから、泣いたら思う壺なのだ。そんなことをするあの女が大嫌いだったはずなのに、他の人間とあまりに接する機会が少なかったために、気づけばあの女のやり方を真似ている。愚かであるにも、ほどがある。
 今、高木に指摘された。見抜かれている。けれども高木は、それを良いとも悪いとも言ってはいない。次に責めたてられるのではと身構えたが、相変わらず穏やかに笑っている。高木は、私が一人も友達がいないことを知ったら、どうするだろう、純粋な心を持っているのであれば、親しい友達の一人や二人いるはず。人間的に欠陥があるのでは、と疑われるかもしれない。
 そう思われたくはない。
 なんだか高木に、そう思われるのは嫌だった。
 子供達の声がひときわ大きくなった。見ると、彼方が顔に大量の水を浴び、半べそをかいている。思わず駆け寄りそうになるが、駆け寄ったところでどうすべきかその術を知らない私は、躊躇する。隣にいた高木は、
「あーあ、彼方くんびしょぬれー」
 と笑いながら、すぐさま助けに走り出した。私はなぜここにいるのだろう。こんな善意に満ち満ちた場所にいて、いいのだろうか、何か、間違えているのではないか。
 

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