ばたふらい

文字数 1,066文字

2019年10月23日。NITRODAYという日本のロックバンドが、ミニアルバム『少年たちの予感』をリリースした。このミニアルバムの3曲目に収録されている「ブラックホール feat.ninoheron」。僕はこの曲と出会って、すこし音楽の聴き方が変わった気がする。

この曲を初めて聴いたのは、仕事終わりの車中。第一印象は、イントロのピアノが胸に染みる、スローテンポでおとなしい、といった感じ。だけど今までの曲とは明らかに毛色が違う。彼らを象徴する若々しさみたいなものはすっかり影をひそめていた。

彼らに一体何があった。若々しさはどこにいった。不思議に思った僕は、家に帰って彼らのことを調べた。とある音楽雑誌にヒントを見つけた。記事によるとNITRODAYリーダーの小室ぺい氏は、この曲でコラボしたninoheron氏にこんなことを言われていた。
「バンドはやってて楽しいのが一番だよ」
ぺい氏はハッとしたらしい。僕もハッとした。バンドもそうだけど、音楽も聴いてて楽しいのが一番じゃないか……! ピアノに耳をすますのも、ノリに合わせて体を揺らすのも、聴いてて楽しいから。ninoheron氏の話に戻るけど、バンドはやってて楽しいのが一番。そして、それを意識して作られた曲。心から音楽を楽しんでいるんだと思う。もしかして若々しさが影をひそめたのは、バンドが成長しているからかも。

「ブラックホール」もかっこいいけど、NITRODAYには面白い曲が沢山あるのでぜひ聴いてみてね。そして、これからの新曲はもっと面白くなりそうな予感。というのも、ぺい氏は自身のバンドにムゲンの未来なるものを予感していると語っていたから。『少年たちの予感』を通してそれに気づいたらしい。僕はとある話を思い出した。ただの蝶々の羽ばたきが、ブラジルとかどこか知らないところで竜巻を作っているという話。例えば、前作のファーストアルバムを幼虫とするなら、今作はさなぎ。身を固めて準備をしている。これまでのギターロックを基本に、シンセやピアノ、ラップなど新しいことを取り入れて、自分たちのものにしようとしている。もしかして次回作は蝶? 楽しみ。

今日の帰宅のお供はニューオーダー。経線を、9本はぶっ飛ばし往生。急にお腹が減ってきた。なんとなく帰り際にある中華に寄ってみる。車を停め、暖簾を潜り、ふらふらと適当な席に座る。目の前の壁に貼られていたポップには、新メニュー登場の文字が。とりあえずこれを食べるのだ。みんなの未来は悪くない、なんとなくそんな予感がするよ。
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