参・敵があらわれた!

文字数 2,598文字

3.敵があらわれた!

♪ぴんぽんぱぁんぽぉーん♪
『えー、緊急事態。
イチロー、ユージ、ミナ、シキ、ケンゴ、以上の者は至急、校長室まで来る様に。
キリストせんた・・・ごほん!ごほん!とにかく、大至急、集合せよ!』

ぶっーーー!
「うわっ、イチロー、きったね!」

昼休み、飲んでいた牛乳を噴出した。
ちょ、連絡は追ってする、ってこういうこと?
全校放送か!

慌てて机をふいて教室を飛び出した。
・・・なぜなら、この放送のあと、分かる者だけが分かる、暗号がきこえたからだ。

『カサっ・・ペラ・・ペラ・・・』

あああ、あれ、俺の黒日記じゃないだろうな!
まさかとおもうけど、校長、音読とか始めないよな!

最高のタイムをはじきだして校長室に到着すると、既に青ざめた面々が揃っていた。
てか、全員、心当たりがあるのか・・・。

「ついたか!皆の衆!」
そこには昨日の教師陣もそろっていた。

「「「「「ハイ・・・」」」」」

パカッ

「「「「「ぎゃー!」」」」」

また、全員が地下室に落とされ。

「いたた・・・んん?なんだ、アレ???」

地下室の奥の扉には、ぜ、全身タイツのようなものが飾ってあった。

「イヤーっ!!!あんなの、絶対着ないー!!!」
「戦隊って、一昔の戦隊ものの衣装?!あんなの着て戦うとかホワーイ!!!」
「無理無理無理です、しかも順番的にわたくしがイエローとか、絶対無理!」
「いや、男ヒーローが黄色も無理だから!カレー大好きとインプットされるから!」

「ふふふ、そんなに喜んでもらえるとは光栄だ。」
「校長先生?!
今日は白衣に黒の眼帯とか、もうかなり方向性見失ってませんか?!」

「さてさて、諸君、早速だが、敵があらわれた。
いますぐ変身して、現場に向かうのだ!」

「「「「「いやです。」」」」」

「こらっ、神学生!上の権威に逆らうとは何事か!」
「全く、これだから最近の若いもんは。」
「うむ。わしらが神学生だったころはもっと上に立てられた権威に従順だったわい。」
「神に仕え、人に仕えるのが本文じゃろうが・・・」

先生方も、全員、白衣を着ていた。何人かは、顔にペンで海賊みたいな傷を書いていたり。
だから、方向性!
本当に、こっちが悪の秘密結社に見えるんだけど。

「大体、敵ってなんなんですか・・・えええ?」
モニターにニュース画面が映し出され、そこには正しく敵・・・
戦隊ものとか、仮面なんちゃらでよく見る『怪人』が映っていた。

『信じられないかもしれませんが、これは本物の映像です!
本日正午前、渋谷に『怪人』が現われました!
怪人は、商店街を襲い、食べ物を摂取しては体がどんどん巨大化しています!
商店街の人々も呆然しています!』

「え?何コレ、コラ―ジュ画像?」
「ドッキリの番組でしょ?」

『それでは、街ゆく人にインタビューしてみましょう!』
『いやー、びっくりしました。あんなの、本当にいるんですねー』
『あんなのが出現したら、困るわ~、子どもだっているのに。』

・・・のんき?

「ええと、校長先生、いまいち状況が呑み込めないのですが。」
「うーん、イチロー君は本当に頭が固いねぇ。あれが、敵だよ。」
「はぁ。」
「あれを倒し、渋谷を平和にすることが、君たちに課せられた使命だ!」
「はぁ。・・・はぁ?」
「さぁ!ぐずぐすしていられないぞ!早速、衣装・・・コスチューム・・・
とにかく、着替えて現場に急行するのだ!」
「はぁ。・・・はぁ、てか、アレ、現実なんですか?
怪人とか、テレビの撮影なのでは?」
「うーん、君は本っ当に、頭が固いねぇ。
復活されたイエス様もトマスに言われたぞ。『信じないものではなく、信じるものになりなさい。』と。」
「そうそう、『見たから信じたのですか。見ないで信じるものは幸いです。』とも。」
「そう、聖書にはこうも書いてある。『信仰によって、私たちは、この世界が神のことばで造られたことを悟り・・・』」
「『したがって、見えるものが目に見えるものからできたのではないことを悟るのです』とな!」

「いや、意味がわかりません。」
「君は本当に・・・」
「そんなんで、納得できるわけ・・・えっ、みんな、納得したの?!」

俺を除いた全員は、壁の全身タイツを手にとろうとしていたり、『戦隊のしおり』をすごい勢いで読みだした。
せ、聖書のことばで説得するのは卑怯じゃないですか・・・!
流石全員クリスチャン、なの?全員神学生、なの?

俺の混乱をよそに、校長、もとい、プロフェッサー?博士?は、
説明しよう!と、甲高い声で言った。

「さて、君たちの腕にある、リストウオッチ・・・それは、変身バンドだ!
百聞は一見にしかず。それを正面にかざし、こう、言いたまえ!」

『パラダイス・シフト!』

「だ、ださい・・・!」

「いいから!早く!」

「「「「「ぱ、パラダイス・・・しふと・・・」

シャっ!!!

いきなり、まばゆい光があたりを包んだ。
きこえる・・・
きこえる・・・
なんか、変身のBGMみたいなのが・・・

はっ!と、気が付くと、
身体が全身、ピタっとしたゴム?素材に包まれていた。

恐る恐る、隣を見ると・・・

青い、全身タイツ・・・より、多少はマシに体を覆われている、ユージがいた。
「イチローはレッドか・・・まぁオレもブルーだからセーフだな。」
「あたしはピンクー!女の子がピンクなのはありきたりすぎだけど、まあいっか!」
「わたくしはホワイト・・・神よ、感謝いたします・・・」
「な、なんで僕がイエローなんだー!」
「とりあえず、顔も全部おおわれていることが救いだな・・・」

「ふふふ、素晴らしいできだ・・・流石はメイドインジャパン・・・!」
これ、日本製?!

「そう、これは日本の科学力が生み出した奇跡・・・」
「そして日本の教会の汗と涙の献金の集大成・・・!」
「「「「「それって、すごく無駄なことしてませんかっ?!」」」」」

「何をいうか、バイブルレッド。
これは日本中の教会が世の終わりー敵のあらわれに対して備え、仲たがいしているように見えてその実、ひそかに協力していたことの集大成だぞ・・・!」
「校長、さりげなく新しいネーミングで呼ばないでください。」
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