29. 激烈な閃光
文字数 2,103文字
「さぁ行くぞ! 準備はええな? お主ら!」
レヴィアは真紅の瞳をキラリと光らせ、和真とミィをにらんだ。
「は、はい!」「大丈夫にゃ!」
いよいよゲルツの秘密アジトに突入である。
バクンバクンと激しく高鳴る鼓動を感じながら、和真はギュッとこぶしを握った。
いよいよパパの仇を討つ時がやってきた。生きる活力を奪われ、糸の切れた凧のようにふわふわと無為に過ごしてしまった苦悩の六年間に、ついに清算の時が訪れたのだ。
レヴィアは虹色の魔方陣をいくつか浮かび上がらせると、大きく息をつき、
「チャージ!」
と、叫んで右手をあげた。
◇
気が付くと南国の楽園の上空に浮かんでいた。
美しく弧を描く真っ白なビーチに、どこまでも澄みわたる美しい海、そして真っ青な空に燦燦 と輝く太陽。
うわぁ……。
和真は思わずその美しさにため息をついた。
ヤシの木の茂る島の中央部には真っ白な塔が建っている。ゲルツの拠点、『マリアンヌ・タワー』だ。自らを革命の志士だとする驕 った狂信者らしい命名である。
まるで地中海を思わせる石灰石で作られた純白の塔には、ところどころ四角く開いた窓の穴がいいアクセントとなって見事な出来栄えだった。
ミィはパカッと画面を開くと塔のデータにアクセスして、中の様子を解析していく。
と、その時、
ウゥ――――!
まるで空襲警報のようなサイレンが響き渡り、塔から何かがわらわらと飛び立ってやってくる。まるで鳥の群れのように編隊を組み、一行を包み込むように体制を整えるとパシパシと鮮烈なレーザーを撃ってくる。良く見るとそれはドローンだった。
「うざい奴じゃ!」
レヴィアはシールドでレーザーを防御しつつ、魔方陣を輝かせるとドローンたちに衝撃波を放つ。
青白い光を放ちながらドローンたちに襲い掛かった衝撃波は次々とドローンを炎上させ、撃墜していった。
「ミィ! まだか!?」
撃ち漏らしに向けて衝撃波を放ちながらレヴィアは聞いた。
「やはり、最上階です!」
ミィが興奮気味に叫ぶ。
レヴィアはうなずくと、急降下して最上階の窓に取り付き、腕を赤く光らせるとそのまま窓をたたき割り、中へと突入していった。
和真とミィが後に続こうとした瞬間だった。激烈な閃光が二人を襲う。
和真は体中が燃え上がるかのような熱を感じて、訳も分からずそのまま吹き飛ばされた。
ズン!
鮮烈な熱線は楽園の海を一瞬で沸騰させ、激しい衝撃波は島そのものを吹き飛ばした。後にはまがまがしい灼熱のキノコ雲がゆっくりと立ち上っていく。
美しい青と白で作られた楽園は、ボコボコと湧き上がる赤い海となり、まるで地獄のような風景となってしまった。
そう、ゲルツは核爆弾を使ったのだ。
◇
ジュボボボボ……。
気が付くと和真は海に沈んでいた。
物理攻撃無効属性がついているのでダメージは受けていないようだが、耳がキーンとして気分が悪い。
ゲルツの最後の悪あがきなのだろう。
和真は透明度の高い雄大な海の中でワタワタと手足をばたつかせ、姿勢をうまく取り戻すと海面を目指して泳いだ。
プフ――――!
何とか顔を出し、大きく息をつく。
見渡す限りの大海原が広がっている。一体どこまで吹き飛ばされたのだろうか?
振り返ると、遠くの方に赤いものが光っている。
目を凝らすと、それはキノコ雲だった。
邪悪な灼熱のエネルギーを放ちながら少しずつ高度を上げていくキノコ雲。
和真は一筋縄ではいかない相手にため息をつきながら波に揺られていた。
ともあれ、ここでひるんでいてはならない。和真は額に手を当ててテレパシーを飛ばす。
『もしもーし、どこにいますかー? こちらは海に浮いてます』
すると疲れた声で返事があった。
『あー、こっちも海じゃ』『僕もにゃ』
『無事でよかったです』
和真はホッとした。あっさり返り討ちにあったでは話にならない。
『あんちくしょーめ! 往生際の悪い! ……、塔の下の方が残っとる、そこに集合じゃ!』
レヴィアは怒りのこもった声で言った。
◇
島はあらかた吹き飛んでいたが、塔の下部だけは原爆ドームのように残っていた。熱気を放ち、波が寄せるたびにジューっと湯気を上げている。
和真が上空から様子を見ていると、
「奴はこの下にゃ」
と、ミィが水滴をポタポタたらしながらやってきた。
「さて、どう攻めるか……」
瓦礫に埋まった塔をどうしようかと思っていると、バサッバサッっと翼をはばたく音がする。
振り返ると巨大なドラゴンが真紅の瞳を光らせて飛んでくる。
「もーホント、ムカつく奴じゃ!」
重低音で叫ぶと、グギャァァ! と腹に響く咆哮 を一発。そして、クワッ! と叫ぶと、まるで雷が落ちたように辺りに激烈な閃光が走った。
うわぁ!
思わず、腕で顔を覆う和真。
パキィ! という薄いガラスが割れたような音が響きわたる。
「さぁ行くぞ!」
と、少女に戻ったレヴィアの可愛い声がする。
「えっ?」
恐る恐る目を開くと、塔の瓦礫に埋まっていた部分がすっぱりと切り落とされ、廊下が露出していた。
レヴィアは空間ごと吹き飛ばしたらしい。
レヴィアは真紅の瞳をキラリと光らせ、和真とミィをにらんだ。
「は、はい!」「大丈夫にゃ!」
いよいよゲルツの秘密アジトに突入である。
バクンバクンと激しく高鳴る鼓動を感じながら、和真はギュッとこぶしを握った。
いよいよパパの仇を討つ時がやってきた。生きる活力を奪われ、糸の切れた凧のようにふわふわと無為に過ごしてしまった苦悩の六年間に、ついに清算の時が訪れたのだ。
レヴィアは虹色の魔方陣をいくつか浮かび上がらせると、大きく息をつき、
「チャージ!」
と、叫んで右手をあげた。
◇
気が付くと南国の楽園の上空に浮かんでいた。
美しく弧を描く真っ白なビーチに、どこまでも澄みわたる美しい海、そして真っ青な空に
うわぁ……。
和真は思わずその美しさにため息をついた。
ヤシの木の茂る島の中央部には真っ白な塔が建っている。ゲルツの拠点、『マリアンヌ・タワー』だ。自らを革命の志士だとする
まるで地中海を思わせる石灰石で作られた純白の塔には、ところどころ四角く開いた窓の穴がいいアクセントとなって見事な出来栄えだった。
ミィはパカッと画面を開くと塔のデータにアクセスして、中の様子を解析していく。
と、その時、
ウゥ――――!
まるで空襲警報のようなサイレンが響き渡り、塔から何かがわらわらと飛び立ってやってくる。まるで鳥の群れのように編隊を組み、一行を包み込むように体制を整えるとパシパシと鮮烈なレーザーを撃ってくる。良く見るとそれはドローンだった。
「うざい奴じゃ!」
レヴィアはシールドでレーザーを防御しつつ、魔方陣を輝かせるとドローンたちに衝撃波を放つ。
青白い光を放ちながらドローンたちに襲い掛かった衝撃波は次々とドローンを炎上させ、撃墜していった。
「ミィ! まだか!?」
撃ち漏らしに向けて衝撃波を放ちながらレヴィアは聞いた。
「やはり、最上階です!」
ミィが興奮気味に叫ぶ。
レヴィアはうなずくと、急降下して最上階の窓に取り付き、腕を赤く光らせるとそのまま窓をたたき割り、中へと突入していった。
和真とミィが後に続こうとした瞬間だった。激烈な閃光が二人を襲う。
和真は体中が燃え上がるかのような熱を感じて、訳も分からずそのまま吹き飛ばされた。
ズン!
鮮烈な熱線は楽園の海を一瞬で沸騰させ、激しい衝撃波は島そのものを吹き飛ばした。後にはまがまがしい灼熱のキノコ雲がゆっくりと立ち上っていく。
美しい青と白で作られた楽園は、ボコボコと湧き上がる赤い海となり、まるで地獄のような風景となってしまった。
そう、ゲルツは核爆弾を使ったのだ。
◇
ジュボボボボ……。
気が付くと和真は海に沈んでいた。
物理攻撃無効属性がついているのでダメージは受けていないようだが、耳がキーンとして気分が悪い。
ゲルツの最後の悪あがきなのだろう。
和真は透明度の高い雄大な海の中でワタワタと手足をばたつかせ、姿勢をうまく取り戻すと海面を目指して泳いだ。
プフ――――!
何とか顔を出し、大きく息をつく。
見渡す限りの大海原が広がっている。一体どこまで吹き飛ばされたのだろうか?
振り返ると、遠くの方に赤いものが光っている。
目を凝らすと、それはキノコ雲だった。
邪悪な灼熱のエネルギーを放ちながら少しずつ高度を上げていくキノコ雲。
和真は一筋縄ではいかない相手にため息をつきながら波に揺られていた。
ともあれ、ここでひるんでいてはならない。和真は額に手を当ててテレパシーを飛ばす。
『もしもーし、どこにいますかー? こちらは海に浮いてます』
すると疲れた声で返事があった。
『あー、こっちも海じゃ』『僕もにゃ』
『無事でよかったです』
和真はホッとした。あっさり返り討ちにあったでは話にならない。
『あんちくしょーめ! 往生際の悪い! ……、塔の下の方が残っとる、そこに集合じゃ!』
レヴィアは怒りのこもった声で言った。
◇
島はあらかた吹き飛んでいたが、塔の下部だけは原爆ドームのように残っていた。熱気を放ち、波が寄せるたびにジューっと湯気を上げている。
和真が上空から様子を見ていると、
「奴はこの下にゃ」
と、ミィが水滴をポタポタたらしながらやってきた。
「さて、どう攻めるか……」
瓦礫に埋まった塔をどうしようかと思っていると、バサッバサッっと翼をはばたく音がする。
振り返ると巨大なドラゴンが真紅の瞳を光らせて飛んでくる。
「もーホント、ムカつく奴じゃ!」
重低音で叫ぶと、グギャァァ! と腹に響く
うわぁ!
思わず、腕で顔を覆う和真。
パキィ! という薄いガラスが割れたような音が響きわたる。
「さぁ行くぞ!」
と、少女に戻ったレヴィアの可愛い声がする。
「えっ?」
恐る恐る目を開くと、塔の瓦礫に埋まっていた部分がすっぱりと切り落とされ、廊下が露出していた。
レヴィアは空間ごと吹き飛ばしたらしい。