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エピソード文字数 602文字

 ――その日から、あたしは自分の病室を抜け出し信也に付き添う。信也に一日も早く自分自身を取り戻して欲しいから。

「斎藤さん、また来てるのね。彼が気になるのはわかるけど、自分の治療も優先して下さいね。まだ体力は回復していないのだから」

「はいはい。わかってます。あたしと信也、同じ病室にしてくれればいいのにな」

「まあ、仲がいいこと。でも、それはちょっと無理ね」

 看護師さんは笑いながら病室を出る。

 信也は窓の外を見つめ、不意に立ち上がる。カーテンを勢いよく開け、深い溜息を吐いた。

「……信也、あの事故で、沢山の人が死んだんだ……」

「沢山人が死んだ?そうだな。沢山の命が奪われた……」

「美濃はまだ行方不明なんだ」

「……美濃?」

「あたしの姉、あの時、倉庫に監禁されていたんだよ」

「俺も死んだのか?」

「信也は一度心肺停止状態になったらしいけど回復したんだ。先生が奇跡だって……」

「やはり、俺は死んだのか……。ここは死後の世界なのか」

「違うよ。あたしも事故に遭った時に、夢を見たんだ。とてもリアルな夢だった……」

「俺は、今だに夢を見ている……」

 信也が見つめる先は……
 ビルが立ち並ぶ街。

 ふと、医師の言葉を思い出す。
『一時的な記憶障害』、信也は事故のショックで混乱している。

 でも、あたしのことは……
 ちゃんと覚えていてくれたんだよね。
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登場人物紹介

斎藤紗紅(さいとうさく)16歳

レディース『黒紅連合』総長

 斎藤美濃(さいとうみの)17歳

紗紅の姉、家族想いの優等生

 織田信也(おだしんや)20歳

紗紅の交際相手

元暴走族

 織田信長(おだのぶなが)

戦国武将

明智光秀(あけちみつひで)

戦国武将

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