第6話

文字数 750文字

[うたた寝 (11/26)]

午後イチの授業は眠い。それは誰でも同じだと思う。
思うけど、教卓のまん前の席で、両手で頬杖を突いて、頭をゆらゆらさせて寝こけている嘉月を斜め後ろから眺めてると、いくらなんでもそれはマズいだろ、と目が放せなくなってしまう。
ときどき、顎から手が外れて頭ががくっと下がる。そのたび嘉月はびくっとしたように肩を震わせ、小さく頭を振る。けど、また頬杖を突いては、うつらうつらして…というのを、かれこれ4~5回は繰り返してる。
地理の授業中。先生は嘉月に注意するでもなく、授業を進めていく。
でも俺は気になって仕方なくて、ヨーロッパの海流の説明なんか、耳を素通りしていく。
テストの点が落ちたら嘉月のせいだ。頭の中で悪態を吐きながら、俺は嘉月の後ろ姿を睨んだ。

「はぁー、眠かったあ~。」
授業が終わって、教室を移動しながら、嘉月はうぅ~~~ん、と伸びをした。
「眠かったじゃなくて、寝てただろ。」
だらだらと廊下を歩く嘉月の背中を、ぐーの手で小突く。
「えっ、寝てないよ。ちょっとうつらうつらしてただけ。」
「嘘つけ。」
ったく呆れた奴だ。でも嘉月は笑いながら俺の顔をのぞき込んだ。
「うつらうつらしてるときってさ、夢見るよね。眠りが浅いからさ。」
あっけらかんと言う嘉月に、俺はますます呆れて溜息を吐いた。
「おまえ、夢まで見てたのかよ…」
「うん。広田の夢見た。可愛かったなぁ~広田があんな…」
照れたように言う嘉月に、逆に俺は血の気が引くのが自分でも分かって、慌ててその言葉を遮る。
「おい、それ以上言うな。」
「言わないよー。」
「でも後で俺にだけは教えろ。」
「えー?言わないよー?」
ニヤッと笑って、急に廊下を駆け出した嘉月を追いながら、一体俺は、嘉月にはどんな奴って映ってるんだろう、と思って、顔が熱くなった。
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