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文字数 234文字
誰もいないテラス席で
眺める海はただ真っ直ぐに
平な黒い紙を
敷いただけの世界
船が通らなけば
あなたが海だと誰も知らない
何もない黒い紙は
白か灰色か変な水色か
わからないものを
どんどんと飲み込んで
空を少しずつ濁らせていく
どうしてそんなに水があるのに
どうしてこんなに水を求めるの
乾いた海はいつまでも
黒いまま広がり続けて
あっという間にここも雨色に染める
温かい水はあなたの
涙ですかそれとも汗ですか
時々怒りをぶつけながら
いつまでも乾きを潤せないまま
また静かに黒い紙に戻り
声無き声で何を想う