衆生済土の欠けたる望月【第二十一話】
文字数 1,222文字
☆
僕、萩月山茶花は、女子高生探偵・小鳥遊ふぐりが言ったことを頭の中で反芻した。
…………奥の院は相当、その手の〈異能力者〉でもなけりゃ近づけないようになってる。
…………十年前の〈厄災〉で、将門の力にやられたからね。
…………と、すると、術者である人間がやってくるわ。
今のふぐりは、神楽坂ふぐりという名前のアーティスとして、DJ枢木とのユニット、ソーダフロート・スティーロで鎮魂の祈りを歌舞で捧げている。
ふぐりは、こうも言った。
やってくるのはテロ組織のトップである人物だ、という意味の言葉を……。
僕は猫魔とともに、奥の院に到着していた。
猫魔の結界の先にある扉を開いて、安置されたご神体と向かい合う。
「小さなおにぎりサイズのパールみたいだ……」
「おにぎりってお前……。まあいい。山茶花、敵が来るぞ。しかも一人きりで、な」
結界が破壊され、奥の院に貼られた護符が一つ残らず燃え尽きた。
現れたのは当然、こいつだった。
ほそいつり目に、ニタニタした笑みを貼り付けて。
僕は、震えている。
震えながら、敵の名を、呼ぶ。
「孤島……」
「なんですか、山茶花さん。それから、……探偵さん?」
孤島を、直視する僕。
「まだこんなこと、続ける気なのか、孤島」
「国賊は、討つ。しかし邪魔ですねぇ。消えてください、山茶花さんと探偵さん?」
「続けるのか、多くの人を巻き添えにしながら?」
「革命家は、革命を完遂させるまでが仕事なのですよ。戦後処理や国を安泰にさせるのは、違う人間たちの仕事なんですよ、山茶花さん。だから、さぁ、僕たちはショウを始めましょう。さぁ、殺傷を始めましょう。僕とあなたたちは、殺し合わなければわかり合えないようですからね。身体に刻み込んであげますよ。さぁ、殺傷が始まる……」
暗くて気づかなかったが、弓を、孤島は左手に固定させて装備していた。
弓に矢をかけて、放つ。
ビュン! と、弓がしなる音。
速い!
放たれて飛んできた矢を、術式で張った防御壁で猫魔が弾く。
この弓矢。
〈ピストルクロスボウ〉と呼ばれる武器だ。
名前の通りピストルタイプのクロスボウで、フルサイズのクロスボウに比べ非常にコンパクトで軽量、片手でも扱える。
実際、孤島は片手に装着して操っている。
そして、どうも電動で引き絞る力をブーストしているらしい。
モーター音が、微かに鳴っている。
僕は声を振り絞る。
虚勢くらい張ってやる!
「2対1だぞ、孤島。もう辞めるんだ、こんなこと」
言い終えると同時に。
奥の院の入り口から、奥の院の中に大きな物体が投げ込まれた。
僕の足下に鈍い音を立てて投げ捨てられたそれは、ここ、三ツ矢八坂神社の神主……、だったモノ。
神主の、亡骸だった。
首の頸動脈を切られている。血はほとんど吹き出たあとで、運んできたらしい。
神主の死体を投げ捨てたその人物は。
「お前……一体なにを?」
僕は、ショックで自分の頭がどうかしたとしか思えなかった。
僕、萩月山茶花は、女子高生探偵・小鳥遊ふぐりが言ったことを頭の中で反芻した。
…………奥の院は相当、その手の〈異能力者〉でもなけりゃ近づけないようになってる。
…………十年前の〈厄災〉で、将門の力にやられたからね。
…………と、すると、術者である人間がやってくるわ。
今のふぐりは、神楽坂ふぐりという名前のアーティスとして、DJ枢木とのユニット、ソーダフロート・スティーロで鎮魂の祈りを歌舞で捧げている。
ふぐりは、こうも言った。
やってくるのはテロ組織のトップである人物だ、という意味の言葉を……。
僕は猫魔とともに、奥の院に到着していた。
猫魔の結界の先にある扉を開いて、安置されたご神体と向かい合う。
「小さなおにぎりサイズのパールみたいだ……」
「おにぎりってお前……。まあいい。山茶花、敵が来るぞ。しかも一人きりで、な」
結界が破壊され、奥の院に貼られた護符が一つ残らず燃え尽きた。
現れたのは当然、こいつだった。
ほそいつり目に、ニタニタした笑みを貼り付けて。
僕は、震えている。
震えながら、敵の名を、呼ぶ。
「孤島……」
「なんですか、山茶花さん。それから、……探偵さん?」
孤島を、直視する僕。
「まだこんなこと、続ける気なのか、孤島」
「国賊は、討つ。しかし邪魔ですねぇ。消えてください、山茶花さんと探偵さん?」
「続けるのか、多くの人を巻き添えにしながら?」
「革命家は、革命を完遂させるまでが仕事なのですよ。戦後処理や国を安泰にさせるのは、違う人間たちの仕事なんですよ、山茶花さん。だから、さぁ、僕たちはショウを始めましょう。さぁ、殺傷を始めましょう。僕とあなたたちは、殺し合わなければわかり合えないようですからね。身体に刻み込んであげますよ。さぁ、殺傷が始まる……」
暗くて気づかなかったが、弓を、孤島は左手に固定させて装備していた。
弓に矢をかけて、放つ。
ビュン! と、弓がしなる音。
速い!
放たれて飛んできた矢を、術式で張った防御壁で猫魔が弾く。
この弓矢。
〈ピストルクロスボウ〉と呼ばれる武器だ。
名前の通りピストルタイプのクロスボウで、フルサイズのクロスボウに比べ非常にコンパクトで軽量、片手でも扱える。
実際、孤島は片手に装着して操っている。
そして、どうも電動で引き絞る力をブーストしているらしい。
モーター音が、微かに鳴っている。
僕は声を振り絞る。
虚勢くらい張ってやる!
「2対1だぞ、孤島。もう辞めるんだ、こんなこと」
言い終えると同時に。
奥の院の入り口から、奥の院の中に大きな物体が投げ込まれた。
僕の足下に鈍い音を立てて投げ捨てられたそれは、ここ、三ツ矢八坂神社の神主……、だったモノ。
神主の、亡骸だった。
首の頸動脈を切られている。血はほとんど吹き出たあとで、運んできたらしい。
神主の死体を投げ捨てたその人物は。
「お前……一体なにを?」
僕は、ショックで自分の頭がどうかしたとしか思えなかった。