01)はじめに。

文字数 1,086文字

 アラハバキ。聞いたような聞いたことがないような、という人が多いでしょうか。

 日本の古代に興味を持ち、各地の史跡や神社などを巡ってますと、時々、

に出くわします。縄文の石棒(せきぼう)をはじめ、男女をダイレクトにイメージさせる造形物の数々。

 (写真資料:長者ヶ原(ちょうじゃがはら)遺跡・長者ヶ原考古館。左)縄文竪穴住居の入口に埋納されていた石棒と丸石。右)巨大な石棒の展示、後ろのパネルに長者ヶ原のヴィーナスが出土した時の写真。石棒とセットで出土。ヴィーナスの資料写真は第37章)


 はじめの頃は、私が住む近畿から遠い、東北、関東、甲信越に多く残されている印象を持っていました。

 しかし、調べを進め、よく考えるようになると、例えばどこの神社にもある

であることに気がつきます。口を開けた阿形(あぎょう)は女性、閉じた吽形(うんぎょう)は男性で、頭に突起が表現されているものもあります。(写真:大阪・堀越神社。堀越さんの狛犬(土鈴)。古い狛犬の吽形の頭に突起があることが多い)


 全国津々浦々、この国ではるかな昔から共通する信仰とそのこん跡。(写真:津軽・岩木山の夕陽)


 やがて、アラハバキという古い信仰に行きあたります。

 文献や伝承を調べますと、たとえば「荒脛巾」、「麁羽覇岐」、「荒吐」などなど、これ以外にも、さまざまな字が()てられています。
 万葉集などもそうですが、日本古来から伝わる上代語の読みに対して、渡来したばかりの漢字を、書く人がそれぞれの感性で、さまざまに()てた結果でしょう。

 アラハバキの音(コトバ)も同じで、日本には古い時代からあったものと考えるようになりました。
 例えば「アラ」は「朝の太陽がアラわれる」といった、毎日、誰もが必ず経験することを表現する、始まりの大切なコトバのひとつであったのではないかと。
 アマテラスを祖神とし、日輪を国旗にデザインする国ですから。(写真:大阪淀川、旧赤川鉄橋からの日の出)


 コトバは文化や社会とともに発展しますが、その「アラ」に「ハバキ」が合体して「アラ・ハバキ」とになったとも考えています。
 なぜなら「ハバキ」は「履物(はきもの)」であったり「(ほうき)」であったり、やちまたに広がる(海や山の)「道、道のり(波々岐など)」であったり・・・古くからの多様な意味の表現があるからです。

 本著では、柳田國夫氏(外来信仰説)や吉野裕子氏(竜蛇信仰(りゅうじゃしんこう)説)、谷川健一氏(賽の神(さいのかみ)説)など、名だたる民俗学者が考察し、その数ほどに説があるといってよい、謎多きアラハバキとその信仰について、先人の考え方に耳を澄ませつつ、私なりの解釈を加え、

として考察してゆきたいと考えています。
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