第17話 アフターストーリー①
文字数 1,247文字
お彼岸のあの日から、紗弥さんは少しずつ表情が明るくなっていった。
紗弥さんと俺は気心が知れ仲良くなったが、結局『恋人』の雰囲気にはならなかった。今では姉弟のような雰囲気。
紗弥さんの両親もとても感謝してくれたし、まあ、良しとする。
また文化祭の季節がやってきたけど、新型ウイルスの影響で各種イベントは軒並み中止となった。
腐女子の本郷がガッカリしている。放課後の教室。
「私は成田の艶やかなコスプレ姿を1年間楽しみにしてきたのに、はぁ~」
俺はふと冗談のつもりで、
「もしかして本郷って、俺のこと好きなの?」
「ちょ、ちょっと! なんか成田って雰囲気変わった! 夏休み前はそんなこと言える子じゃなかったのに!」
「そう?」
「ホラホラ、その余裕。ちょっと影がある雰囲気が創作意欲をそそったのに、陽キャの普通のイケメンになっちゃった~」
俺は笑いながら、
「陽キャじゃないよ。バカだし、いつも失恋してばっかりだし、ダサいし、彼女いたことないし。それに母子家庭で貧乏だしね。本郷の書くエロマンガとは真逆の家庭だよ」
俺の言葉に本郷は固まって、しばしの沈黙のあと恐る恐る、
「あ……なんか、ごめん」
「あっ、違う違う、そういうつもりで言ったんじゃないよ。気にしないで」
「私、成田って品がよくて穏やかでお坊ちゃんに見えたから、勝手なイメージで描いていたんだ。……エロシーンは、成田は真面目だからそういうギャップがあったら面白いなっていう思いつきで……ごめん、軽率だったかな」
「バカや育ちの悪さがバレるから、大人しくしていただけだよ。本郷のマンガだと父親が大企業勤務で海外出張が多く、母親が大学教授だったよね。それで俺の幼馴染みが人気アイドルで、俺にフラれるという……まるでSFやファンタジーみたいだなって」
「私……成田のこと正しく知りたい。成田でも失恋することってあるの? ……気になる」
「ハハッ、またマンガのネタにする気?」
「しないよ!」
俺は本郷の剣幕に少し驚いた。
「成田は大人だよ。みんなよりずっと。成田のことちゃんと知りたい」
本郷の表情がいつもと違う。真剣だ。
「……あんまり期待するような中身は無いよ」
新型ウイルスはますます猛威を振るい出し、たんぽぽ食堂近くのネクスト製紙工場はフル回転でマスクを増産している。
泉水市は田舎なのが幸いし、感染者は今のところ一桁で推移しているが。
ハットリ製菓は、医療用衛生用品を扱う関連法人『株式会社ハットリ』で、医療用マスクと防護服の受注を開始した。
服部のお祖母ちゃんが数年前に天啓のようにひらめき、準備していたという。服部のお祖母ちゃんは、多分、田中宮司や大家さん田所さんと同じ人種なのかもしれない。
天宮さんは、
「お父さん、ハットリのメディカル防護服部門に就職したんだよ」
ととても嬉しそうに話していた。
たんぽぽ食堂は来店するお客さんは減ったけど、お弁当の宅配を始めて、ネクスト製紙工場から残業時の注文を受けるようになった。
畑中さんは大忙しで、今ではバイトが2人いる。
紗弥さんと俺は気心が知れ仲良くなったが、結局『恋人』の雰囲気にはならなかった。今では姉弟のような雰囲気。
紗弥さんの両親もとても感謝してくれたし、まあ、良しとする。
また文化祭の季節がやってきたけど、新型ウイルスの影響で各種イベントは軒並み中止となった。
腐女子の本郷がガッカリしている。放課後の教室。
「私は成田の艶やかなコスプレ姿を1年間楽しみにしてきたのに、はぁ~」
俺はふと冗談のつもりで、
「もしかして本郷って、俺のこと好きなの?」
「ちょ、ちょっと! なんか成田って雰囲気変わった! 夏休み前はそんなこと言える子じゃなかったのに!」
「そう?」
「ホラホラ、その余裕。ちょっと影がある雰囲気が創作意欲をそそったのに、陽キャの普通のイケメンになっちゃった~」
俺は笑いながら、
「陽キャじゃないよ。バカだし、いつも失恋してばっかりだし、ダサいし、彼女いたことないし。それに母子家庭で貧乏だしね。本郷の書くエロマンガとは真逆の家庭だよ」
俺の言葉に本郷は固まって、しばしの沈黙のあと恐る恐る、
「あ……なんか、ごめん」
「あっ、違う違う、そういうつもりで言ったんじゃないよ。気にしないで」
「私、成田って品がよくて穏やかでお坊ちゃんに見えたから、勝手なイメージで描いていたんだ。……エロシーンは、成田は真面目だからそういうギャップがあったら面白いなっていう思いつきで……ごめん、軽率だったかな」
「バカや育ちの悪さがバレるから、大人しくしていただけだよ。本郷のマンガだと父親が大企業勤務で海外出張が多く、母親が大学教授だったよね。それで俺の幼馴染みが人気アイドルで、俺にフラれるという……まるでSFやファンタジーみたいだなって」
「私……成田のこと正しく知りたい。成田でも失恋することってあるの? ……気になる」
「ハハッ、またマンガのネタにする気?」
「しないよ!」
俺は本郷の剣幕に少し驚いた。
「成田は大人だよ。みんなよりずっと。成田のことちゃんと知りたい」
本郷の表情がいつもと違う。真剣だ。
「……あんまり期待するような中身は無いよ」
新型ウイルスはますます猛威を振るい出し、たんぽぽ食堂近くのネクスト製紙工場はフル回転でマスクを増産している。
泉水市は田舎なのが幸いし、感染者は今のところ一桁で推移しているが。
ハットリ製菓は、医療用衛生用品を扱う関連法人『株式会社ハットリ』で、医療用マスクと防護服の受注を開始した。
服部のお祖母ちゃんが数年前に天啓のようにひらめき、準備していたという。服部のお祖母ちゃんは、多分、田中宮司や大家さん田所さんと同じ人種なのかもしれない。
天宮さんは、
「お父さん、ハットリのメディカル防護服部門に就職したんだよ」
ととても嬉しそうに話していた。
たんぽぽ食堂は来店するお客さんは減ったけど、お弁当の宅配を始めて、ネクスト製紙工場から残業時の注文を受けるようになった。
畑中さんは大忙しで、今ではバイトが2人いる。