第28話 付録 冷凍の効果(3)

文字数 1,006文字

今回は、写真はありません。ペクチン硬化によるサツマイモの硬さは、写真に、写りませんので省略します。

簡単ですが、重要な結果なので、記録しておきます。

生のサツマイモを冷凍庫で凍らせて、その後取り出して、自然解凍します。解凍したサツマイモは柔らかくなっています。軟化しています。

以前、このサツマイモを170度で60分加熱したところ、柔らかい状態であったので、ペクチンの軟化が十分に生じたかわからないと感じました。つまり、冷凍によって、細胞膜は破壊されて、軟化しますが、加熱によってもその状態はキープされていると考えた訳です。

「加熱調理のシミュレーション」によると「硬化が起こるのは、様々な物理的要因で野菜の細胞膜がダメージを受け、半透性という重要な機能が消失し、細胞死に至るため」としています。

冷凍すると水分が膨張して、細胞膜が破壊されます。

問題は、細胞膜が破壊された状態で、ペクチンの硬化が起こるかです。

糊化や、β-アミラーゼの作用には、細胞膜は阻害要因になるはずです。このため、ペクチンが軟化を起こす温度までいったん加熱することが必要と思われます。

冷凍処理をしたサツマイモでは、細胞膜は破壊されて、穴が開いているはずです。そうするとペクチン軟化のための初期加熱が不要かもしれません。

そこで、この点を実験してみました。

手順は以下です。

1)サツマイモを冷凍する

2)冷凍したサツマイモを自然解凍する

3)サツマイモをラップでくるんで、電子レンジの弱(150W)で4分加熱し、オーブンで加熱する前の初期温度を上げる。

4)80度で120分加熱する。

5)170度で40分加熱する。

結論は、ペクチンの効果が起こり、サツマイモの糖化が進みませんでした。

「加熱調理のショミュレーション」では、ペクチンの硬化も、軟化も、未変化ペクチンが変化しておこると考えています。

つまり、一度硬化したペクチンは、温度をあげても、軟化することはないと考えています。

今回、わかったことは以下です。

1)一度硬化したペクチンは、温度をあげても、軟化することはない

2)ペクチンが軟化しないと、糖化反応は起こらない。

60度を超えているので、糊化は起こっているはずです。冷凍しない場合には、糊化が細胞膜で、分断されて広がらない可能性もありますが、今回は、冷凍していますので、細胞膜は壊れているはずです。


- 加熱調理のショミュレーション 香西みどり 2013 光生館
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