第15話

文字数 2,855文字


源三郎江戸日記(弟二部)15

訳を話して内密にと言うと、ハイ、ご家老様も人が悪い、お殿様も家臣に呼び捨てにされて平然としているなんて、心の蔵が止まるかと思いましたと治憲に酌をすると、お絹の本音、
を聞きたかったのじあと言うと、ハツきり物を言われる良い女子で御座りますと言うので、わしも楽しみが増えたぞと酒を飲み干したのです、護衛のお方がついているのでおかしい、
とは思っていたのですよと言うので、

柘植は何か言うておったかと聞くと、一言酒と肴と言われただけですと言うので、治憲が柘植らしいのうと笑ったのです、源三郎が城中ではどうですかと聞くと、一門が会いに来る、
と刀を左に置くので、一門が刀を左に置くとは無礼であろうと言うと、殿の護衛なればいつでも刀を抜けるようにするのが役目で御座ると平然としておるわ、あれでは刺客は送り込、
めまいと笑ったのです、

稲葉の手の者の高木監物が城下に入り込んだとの事です、殿には手は出さないでしょうが、一門とつるむやも知れませぬ、お気をつけ下されと言うと、柘植がついておれば大丈夫じ、
あよと言ったのです、柘植が迎えに来て治憲は城に帰っていったのです、源信を呼び高木は今何処にいるのじあと聞くと、町の空家を偽名で借りて住んでいます、5名程おり下働き、
の女中を雇っています、

藩士の出入りしている料理屋で時々話しているようですというので、へたすると開墾場所を浪人を使って襲うかも知れん、注意して監視していてくれ、襲うとすれば下見に行くはず、
だ、直ぐに知らせるのじあと言って、もう直ぐ8月も半ばじあそろそろ関東の沖を台風が通過するだろうと言ったのです、源三郎が予測した通り、二本の台風が列島に向かい進んで、
きて、

一本は薩摩に上陸して北九州を縦断して日本海に抜けたのです、もう一本は小笠原列島に向かい進路を右にとり北上したのです、関東近辺は風は大した事はありませんが、雨雲が、
山にぶつかり大雨なり、江戸川、利根川の水位がぐんぐん上がり、河川に近いところでは、堤防が何箇所が決壊したのです、印旛沼の用水路は心配したとおり水位が1間半以上上、
がり濁流は水路に流れ込み、

利根川の水は逆流して、水路に流れ込み印旛沼に向かい、水路が決壊して濁流が、田畑に流れ込み、稲穂が総て流失して、佐倉藩領内は3万石が失われたのです、これを聞いた稲葉、
は腰を抜かしたのです、水路はあちこちで決壊して、壊れてしまい、驚いた天満屋は稲葉屋敷に駆け込むと、今から上様に報告に行く、何と言われるかと頭を抱えたのです、柳沢は、
これを聞いて、

大笑いして、さて何と稲葉は釈明するのかな、相模屋は堤防のお陰で流失はまぬがれたと言ておったが、源三郎はすご~い奴だなと改めて感心したのです、幕閣が御座所に集まると、
綱吉が出て来て、稲葉どう言う事だと聞くと、今回の大雨は予想のほかの事で御座りました、水路の出口の水位が一間半を上回ったので御座います、出口は一間半より少し上にあり、
すが、

これを超え逆流して印旛沼から流れてくる濁流とぶつかり6個所の水路が決壊して佐倉藩領内の水田が3万石程流失したので御座います、二間も超えたのかと聞くといいえ利根川の、
堤は超えていませんと言ったので、何故二間の高さに出口を作らなかったのだと聞くと、それでは印旛沼の水は利根川には流れ込みませぬ、高低差から行くと一間半少し上がぎりぎ、
りの位置でございますと言ったのです、

それでは水門を設けて逆流を防げば良いのではないかと聞くと、そうしますと印旛沼も水位は上がりますので水のはけ口がなく領内の下流に流れ込み、3万石どころの被害ではなくな、
りますと言ったのです、それでは利根川ではなく霞ヶ浦に流せばよかったではないかと言うと、こんどは霞ヶ浦の水が逆流して折角干拓した新田は総て流失しますと言つたのです、

それでは用水路を広げなければ良かったではないかという、それでは印旛沼の水位を下げられず干拓は不可能という事になりますと言うので、うむ~打つ手なしということか、しかし、
広げたものを元にもどすのは不可能だろう、その3万石の水田は今後作付けは出来ないと言う事ではないかと言うと、ハイそうしますと佐倉藩は10万石にも係わらず実収は7万石しか、
上がらず、

藩自体の存在が危なくなりますというと、ならば佐倉藩は7万石としてその3万石分の作付け不可能の地は幕府の天領とするしかないではないかと言うと、仰せの通りに御座いますので、
その領地は上様に返上いたしますと言うので、あいわかった佐倉藩は7万石にしょう、これは厳封にあらずそなたがまねいた結果であると言うと、ハハ~と頭を下げたのです、さて困っ、
たが誰か良い知恵はないのかというと、

だれも発言しません、このままだと余の面子は丸つぶれじあ、吉保なんとかせいと言うと、ならば一つだけありますると言うと、何あるとな、それは何じあと聞くと、村上源三郎は、
その解決方法を知っていると思いますと言うと、それは何者じあ旗本かと聞くので、いえ、米沢藩上杉家の主席家老に御座いますと言うので、なぜその者が知っているのじあと聞く、
ので、

勘定奉行その者の事を上様に、申しあげよと柳沢が言うと、勘定奉行が今般小判改鋳にて幕府は、50万両の蓄財ができましたが、小判の価値を下げずに、改鋳する策を指南したのは、
村上源三郎殿に御座います、中々の知恵者に御座いますと言うと、ほう、そうであったのか、して、元から上杉の家臣なのかと聞くと、今般高鍋藩から養子に行きました治憲殿の、
付け家老として上杉に行き主席家老に就任し、

財政改革を担当しているそうに御座いますと言うと、して財政改革は上手く行っているのかと聞くので、柳沢が就任して4月になりますが、借財9万両のうち6万両の返済を可能にし、
たそうですが、2万両のみ返済して後は棚上げしてもらい、財政改革に4万両をつぎ込み、来年には新田4万石が作付け可能になり、又殖産を奨励して年間6千両の実収のめどが立ち、

総計年1万両が増える為7年で完済できるそうですが、更に改革を進めれば後1万両増やし、年二万両を余分にあげられるとの事ですと言うので、なんと、どんな手を使っているのじあ、
と聞くと、千石船を前から風が吹いても前に進めるようにして、風待ちで港で待ちなくて済む工夫をし、更に夜も走れる工夫がしてあるそうで、大阪江戸を大シケ以外はわずか2日に、
て航行できるのだそうです、

これを考えたのがその村上源三郎だそうに御座いますと言うと、なるほど中々の知恵者じのう、早速その源三郎に申しつけよというと、なにも関係ない上杉家に賦役をいきなり押し付、
けるのはいかがな物かと、財政がまだ立ち直ったわけではありませぬ稲葉殿と天満屋の失敗を肩代わりさせれば、幕府は横暴だとのそしりを大名、民から受ける事にあいなります、

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