満月の夜に

文字数 324文字

 世界は救われた。アリーアは救済の巫女として称えられた。
 あくる日。アリーアは、ある場所を訪れていた。

 セトと初めて出逢った場所。そこで、花を手向けに来たのだ。
 すでに日は落ちて、満月が出ていた。
 林を抜ける。すると──。
 林の中に、青年が倒れていた。銀色の髪。粗末な服。アリーアは駆け寄って、青年を抱き起こす。
 アリーアが呼びかける。しかし、青年は自分の名前はもとより、自分が何者なのかさえ、思い出せないという。
 それを聞いたアリーアが、ふっと微笑んだ。

「あなたの名前は、セト。そして…」

「そして…?」

「私の、一番大切な人」

 アリーアが、セトに口づけをする。
 月明かり。二人を優しく包み、照らしている。それは、二人のための、祝福の光のようだった。
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