「夏至祭」秋永真琴

文字数 786文字

「夏至祭」 秋永真琴
2018/06/20 18:13

makoto_akinaga

今晩は夏至祭かぁ。


もう何年も行っていないけど、楽しいよね。

まだ明るいうちから街じゅうに屋台が並んでさ、駄菓子を買って食べながら、楽団や大道芸人を見て歩く。

好きな子に「ふたりで行こう」って誘って、断られなかったときの嬉しさったら――きみはそういうの、ないの? 


そっか……かわいそうに……


って、ごめんごめん! 憐れんだ目で見すぎた! 

ひとの気持ちも知らないで?

きみの気持ちって何さ。なんで赤くなってんの。


あっ、そうだ、ねえねえ、夏至って何のことか知ってる?

いやいや、話を逸らしたくて訊いてるんじゃないよ。

ほんとうに訊きたいの。


馬鹿にすんなって? 一年でいちばん昼が長い日?

はい、正解。

じゃあ、なんで今日がいちばん昼が長いの?


なんでっていうのは、どうして〈神機〉が照光時間をそう決めているのかってこと。

一年じゅう昼の長さを同じにしてくれてもいいじゃん。

そうだよ、理論的には可能なはずだよ。

尊い〈神機〉だって、あくまでも〈神技官〉が管理している機械なんだから。


昔、この星は太陽の光をじかに浴びていたんだ。

今みたいに〈大護壁〉で囲って〈鎖星〉していなくて、宇宙に剝き出しになっていた。

星の軌道を変える技術もなかったから、勝手に太陽の周りをくるくる回っていて。

その関係で日照時間が刻々と変わっていって――今日がいちばん、太陽に長く照らされる日だった。

そういう四季の移り変わりを〈神機〉があえて再現しているってわけ。


へえ、今は学校でそういうこと、教えないんだ。

昔のことにやけに詳しい? 見てきたように話すって?

そうかなあ。きみが馬鹿なだけじゃ――はい! 遠回しな言い方で気遣います! きみがすこぅし勉強ができないだけじゃないかな。あははっ。


まるで何千年も生きてきたみたい、か。

もし本当にそうだったらどうする? 奇跡だよね。

そんな人外の存在が近所に住んでるなんて、ね。

2018/06/20 18:15

makoto_akinaga

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