今晩は夏至祭かぁ。
もう何年も行っていないけど、楽しいよね。
まだ明るいうちから街じゅうに屋台が並んでさ、駄菓子を買って食べながら、楽団や大道芸人を見て歩く。
好きな子に「ふたりで行こう」って誘って、断られなかったときの嬉しさったら――きみはそういうの、ないの?
そっか……かわいそうに……
って、ごめんごめん! 憐れんだ目で見すぎた!
ひとの気持ちも知らないで?
きみの気持ちって何さ。なんで赤くなってんの。
あっ、そうだ、ねえねえ、夏至って何のことか知ってる?
いやいや、話を逸らしたくて訊いてるんじゃないよ。
ほんとうに訊きたいの。
馬鹿にすんなって? 一年でいちばん昼が長い日?
はい、正解。
じゃあ、なんで今日がいちばん昼が長いの?
なんでっていうのは、どうして〈神機〉が照光時間をそう決めているのかってこと。
一年じゅう昼の長さを同じにしてくれてもいいじゃん。
そうだよ、理論的には可能なはずだよ。
尊い〈神機〉だって、あくまでも〈神技官〉が管理している機械なんだから。
昔、この星は太陽の光をじかに浴びていたんだ。
今みたいに〈大護壁〉で囲って〈鎖星〉していなくて、宇宙に剝き出しになっていた。
星の軌道を変える技術もなかったから、勝手に太陽の周りをくるくる回っていて。
その関係で日照時間が刻々と変わっていって――今日がいちばん、太陽に長く照らされる日だった。
そういう四季の移り変わりを〈神機〉があえて再現しているってわけ。
へえ、今は学校でそういうこと、教えないんだ。
昔のことにやけに詳しい? 見てきたように話すって?
そうかなあ。きみが馬鹿なだけじゃ――はい! 遠回しな言い方で気遣います! きみがすこぅし勉強ができないだけじゃないかな。あははっ。
まるで何千年も生きてきたみたい、か。
もし本当にそうだったらどうする? 奇跡だよね。
そんな人外の存在が近所に住んでるなんて、ね。