12、ヒスイの回復
文字数 491文字
不安げに彼の顔を覗き込んでいるのは、東欧人のふたりの美女だった。
彼女たちは、ヒスイの身体に薬を塗り込んだり、特効薬を服(の)ませたりと、献身的に接していた。
「竹林の……吸血姫はどこ行った? 俺は、いったい……」
竹林での出来事がフラッシュバックした。
サンドライトの艶やかな金色の髪がバッサリと切り落とされ、横たわった姿がまざまざと甦ってきた。
「兄者は、兄者はどこにいる?」
勢いをつけてベッドから上半身を起こすと、ベラルーシ人の女が首を横に振った、
「俺は良いんだ。どこも痛くない」
そんなふうに豪語するだけあって、ヒスイの身体の傷は超人的な回復を見せた。
「これを、預かっています」
続けてルーマニア人の女が、執事アレキから託された手紙を渡してきた。
一瞬、女と手と手が触れ、全身にぞわぞわと這いあがってくるあの不快感が思い出されたヒスイは、大袈裟に手を引いた。
やや苛立ちと焦りを感じながらも、ヒスイは手紙を広げた。
そこには、サンドライトの几帳面な性格を物語る字体で演説文が綴られていた。