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文字数 1,693文字

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 春葉が〈アース・レプリカ〉に来てまず最初にしたことは、こっちの地球にいる白梅春葉を屠ることだったんだー。
 そしてそれは〈アース・オリジン〉の危機を察知し、警鐘を鳴らした、水野玄人のオーダーだったのー。
 水野玄人……水野晶の弟……は、〈アース・レプリカ〉に移民してきて、この町の魔王になり、〈ディアヌス〉を襲名した。
 魔王ディアヌスへなるためには条件があるの。その条件とは、山猫神社にある一本の神聖な樹木の枝を折って、手にすること。しかし、樹であるご神木を傷つけた罰として、このご神木を守らなくてはならなくなる。
 枝を折って手にすればいい、ということは、誰でも折って手にすればいいということと同じ。つまり、ご神木を狙って、数多の敵が訪れ、勝負を挑まれるということなの。
 その防衛線に、現ディアヌスは毎回勝たねばならない。魔王は、一人だけでなくてはならないから。防衛戦するの。
 魔王ディアヌスを襲名すると、自動的に神社の氏子世話役に就任すると同時に、強力な魔導力を手にできる。喉から手が出るほど、欲しいんだよ、みんな。
 だから、日夜バトルは行われる。
〈アース・レプリカ〉でのこの町の魔王はあの子、玄人くん。
 一方、おそらく〈アース・オリジン〉で最後の魔王になったのは、掛軸陸前くん、だったんだよっ。あはっ。笑えるでしょ。テレビスターどころの話じゃない。強力な魔導力で町を統率するリーダーになったのよ、掛軸くんは。
 それに逆らっていたのが、晶……〈アース・オリジン〉で探偵のまねごとをしていた、ニートの女の子だったの。そして、行動派である水野晶の弟、水野玄人くんは、それをじっと見ていて、なにかに気づいた。『この世界が滅びる』と予言したのは、掛軸くんにたてついていた晶じゃなくて、弟の玄人くんのほうが先だった。


 結果、〈アース・オリジン〉を滅亡させたのは、あなた、そう、晶だったんだけどね!
 そう。こっちでは男性である晶とこっちの地球のビッチな春葉を近づけさせないために、一緒になってなにかしらのアクションを起こさないように、春葉は玄人くんに頼まれて、こっちに存在するレプリカの春葉を殺害したのー。
 玄人くんはこっちに来てディアヌスになったけど、思うところがあって、やはり同じように屠ることになったんだよ。わたしが林田一家を。そして……玄人くん、いや、ディアヌスは、〈アース・レプリカ〉での、自分の父親を。


「それを、僕にわかってくれってこと?」


 違うよぉ。そうじゃないのー。
 カニバリズムに近いことになったのも全部、オリジンとレプリカの均衡が崩れたから。〈アース・オリジン〉は、星ごと破壊され、崩壊した。それは晶の責任でもあるんだ、あっちのね。だから、晶に関係があったわたしと玄人くんが、どうにかしようと思ったの。



「でも、わたしも動いた。『人類の看護師』であるわたし、紫延ノノが、ね」



 事態は複雑に思えてひとつにまとまる。一点の点に集約される。その点こそが、〈アース・レプリカ〉の晶なんだー。だって、破壊した当事者のレプリカなんだから。当然、同じ思考を持つこっちの晶も、気づかないでいても〈物質XYZ〉につながっている。
 でも、春葉たちにはわからずじまいだったんだ、〈物質XYZ〉がどういうものか。
 それがとても危険なもので、星をひとつまるごと破壊してしまった魔導力を持っていたのだけは、確かなんだ。



「そして、〈アース・オリジン〉の方の最後のディアヌスが、掛軸陸前だった、ということなんだな」



 そう。ディアヌス・掛軸が率いる山猫神社氏子衆と対立してしまったのが、晶だったの。
 ディアヌスたちも晶も、闇を暗躍したわ。その余波はこの世界を巻き込むことになったのよー。信じられないでしょ。
 魔王をものともしないまでに〈物質XYZ〉は強力だった。

 ……ちょっと話が堂々巡りになっちゃったね。同じ話を、何回もしてるだけになってる。
 スポットの向きを変えてみよっか。



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登場人物紹介

紫延ノノ

 ウサミミ看護服の少女。

白梅春葉

 バーサーカー少女。主人公の幼馴染。

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