第5話 長男

文字数 507文字

ともあれ長男が産まれた。
出産に付き添った。
市内の総合病院で、「一応切りますね」と施術された会陰切開とその縫合・抜糸の意味が解らなかったし、目も良く開かずしばらくその後遺症が残ったし、初乳もあげられなかった。

初産の無知。
こちら側の問題なのか、解らないまま、医療(厳密に産院は医療ではないから、無理やり医療を持ち込んだお産とでも表現すべきか)への不信は僕個人の問題ではなく、ここに端を発したと思う。

育児自体もそうだが、お産からいちばん失敗したと思う。
ちゃんと育った長男、育てた奥さんに感謝している。
大病院の安心感はまやかしだ、と学んだ。

育児は状況に大きく左右される。
出来ればたくさんの手と知恵があった方が良い。
じじばばが居てくれて、肩身が狭いぶん婿さんは休日子供を連れ出してふたりで遊ぶ。

へんなとこでウンコされて困る。
奥さんが、いちばん幸せに育児出来た環境。
婿入り同居(戸籍的には違ったけど)は様々な余裕をもたらし、僕は毎日と言って良い程知育玩具を買って帰宅し、夜泣きに夫婦ふたりで狂乱した。

あの環境を、自分を犠牲にして維持出来なかった事は、奥さんにも子供たちにも申し訳なかったと思う。

やっぱり僕は、いくじなしだった。
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