こぼれ話(2):ゲンリーのガジェット「ボイスライター」と「アンシブル」

文字数 688文字

 ちょっと面白いことに気づいたので、書いてみます。

 原作では、ゲンリーとエストラヴェンの語り口(文体)にそれほど差はなく、どちらも明快かつ精妙な名文です。ただ、どちらかというとエストラヴェンの章のほうがきびきびしていて、ゲンリーの章のほうが流麗な印象があります。
 それで、ふと気がついたのですが、設定としてエストラヴェンはこの日誌をこまめに紙に手書きで(鉛筆かな?)書いており、ゲンリーはすべて終わってから回想で、タイプライターで一気に打っているか、もしくは彼が「ボイスライター」と呼んでいる音声認識ガジェットに吹き込んで転写しているんですね。二人の性格の違いだけではなく、その違いもありそうです。

 ちなみにこの小説の発表は1969年。現実の地球上で、音声認識のガジェットはまだ出来ていません。「まだ」どころか、Macに初めて音声認識機能が搭載されたのが1993年だそうです。その24年前です!
 ちなみにちなみに、ゲンリーが捕縛前に駆使しているガジェット「アンシブル」は、何光年を隔てた遠方と同時通信できる文字盤で、通訳機能も備えているようです。これほぼタブレットですよね。凄くないですか。くどいようですが、いまから52年前です。
 ル=グウィンさんはエッセイの中で「私は理系じゃないので、私のSFは宇宙服を着たファンタジーにすぎません」などと言って謙遜しておられるのですが、1969年て、日本だとやっとテレビがカラーになったかなという、ファックス何それおいしいのという時期です。
 このことだけ見ても、ファンとしては、時代がゲンリーたちに追いついてきたなあという感慨があります。
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