第3話 裕子と新幹線

文字数 415文字

 新幹線に乗っている母と娘。
今日は田舎のおうちに行こうね
わ~い、ママ、新幹線って速いね。これから毎日乗ろうよ
あらあら、この子ったら。あんまりはしゃいじゃ、他の人に迷惑よ
はぁい
でも本当に速いわね。いつも乗ってる電車と全然違うね
ええ。確かに速いわ
でも……
でも?
それで浮いた時間を、私たちは有効に使えているのかしら
……裕子?
30分早く着いても、1時間早く着いても、結局その時間をゆとりには使わない。30分多く作業をして、1時間多く仕事をするだけ
時間が短くなっても、私たちはもっと遠くにいくだけで、移動時間は結局以前と変わらないままだわ
ど、どうしたの、裕子……?
生き急いでいるのよ、私たちは
この新幹線と同じように、ただ走り続けることしか考えていない
でも、人間は機械じゃない。私たちは時間を使って休まなければ、どこかで息切れすることを、もっと知る必要があると思うのよ……
あ、あなた! 裕子がまだ十歳なのに、生き急いでいるとかって――あなた!
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登場人物紹介

母親

ほら裕子。自己紹介しなさい

裕子

裕子です! 十歳です! 小学四年生です!

好きな教科は国語と社会で、苦手な教科は体育です!

でも友だちも先生も優しいし、学校はとても楽しいでーす!


――なんてね。フフ。

自己紹介で私の全てを知ろうだなんて、虫がよすぎると思わない?

所詮自己紹介なんて自分の中の良い部分、自慢したい能力を披露するだけのものよ。

本当の人間性はこんなことじゃ到底理解し得ないことに、この欄を読む側もそろそろ気づくべきじゃないかしら。


母親「ど、どうしたの裕子!」

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