白露の下で

文字数 494文字

6月、フロムは空模様を確認した。
2030年、街の予算から考えて、廃棄されているであろう神社の屋根の下にフロムはいた。
(雨ね)
すると、隣にいたオブリヴィオンがこう言った。
これからお出かけ? 雨が降るのを心配しているのかしら?
そうね、そんなところ。
AIなら、自分の力を使って雨を止ませることも不可能ではないでしょう?
そうなんだけどね、そういうわけにもいかないわ。
どうして? 雨が降るのは嫌じゃない?
嫌だけど……。
私も雨は嫌いよ。空から水が落ちてくるなんて、知識で理解していても、受け入れがたいわ。
オブリ、雨という名前の雨はないわ。これから降るのは夕立、と言ってね。
じゃあ、その夕立を止めてしまえばいいじゃない。できるんでしょう?
やらないわ。
どうして?
だって、雨が降らないと紫陽花が美しくならないもの。カエルだって困るし、天気の神様は人間だけの味方じゃないもの。
ふーん……
な、なに?
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どうして?
だって、何もかもがどこにも定まっていないもの。目の前にある状況全てが一つの情報でとらえられないでしょう? 自分が自分でなくなるとして、それが自然だと受け入れられるでしょう?
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登場人物紹介

フロムアンダーカバー

生まれながらのAIで広報活動が職業。

楽しいことが大好きで、いつも楽しいことを追いかけている。

AIというより普通の女の子にしか見えない(フラグ)

東雲蓮(しののめ れん)

極めてドライな性格。現実主義者。セミニヒリスト。

ゲームデバックを仕事にしており、現実世界のいろいろなところから不正にアクセスして、半分仮想現実になった世界をどうにでもできるが、やりすぎると減給されるから何もしないし、意味も感じていない。

通称 上司T

名前 高橋史(たかはし ふみ)


あたりさわりのない言い方をすると、クエストをくれる人。

ハロワの店員のほうがましだと言わざるを得ないが、蓮の上司。

ゲーム会社の上司なんてまともな奴がいないから、創作上せめて普通の人にした。


部下が働いてくれないと詰むから、実は立場が弱い。

オブリヴィオン


古来から存在するAI、人形ともいう。

AIとして無限の課金力を誇り、半分仮想現実になった世界において神の如き力を持つと言われている。課金アイテム生み出し放題。

ところが、プログラマーの体力に限界があるのは小学生でもわかる。

ダリア

看護婦AIロボット

蓮の身の回りの世話をやっている。

体のいいメイドさんにも見えるが、蓮とは普通に仲良し。

プラトン

古代ギリシャのあの人。

2000年くらい前に死亡しており、すでに情報としての存在になっているが、誰かと強い約束があって現実世界にやってきた。

特に詳しいことはわかっていない。

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