第22話 自己まとめ(1)

文字数 1,105文字

 まず、「やり甲斐」が欲しかった。これが第一。
 人の、お役に立ちたい、と思った。「直接」お役に立てる、これは介護しかないと思った。
 今まで、そんな憎まれたこともなく、とある社会的?なサークルの代表みたいなこともやっていたし、人との関係が好きなつもりでもいた。
 確かに、人と関わっている時、ぼくは楽しかった。
 年齢的にも、介護の経験があれば、今後のツブシも効くと思った。1つの施設を辞めても、仕事はいっぱいあるだろう。介護の仕事で、のこりの人生、やっていくつもりだった。

 しかし、やはり繰り返しになるが、最初に面接に行った、業界では大企業といっていい施設の面接が、どうしても思いだされる。あれは冷静に客観的に見ても、ひどい対応だったと思う。
 で、「面接も履歴書も不要」の派遣会社に電話し、やっと介護職につけた。開設して、1年位の新しい施設だった。
 4ヵ月で辞めたが、これは先に書いた、一緒に働くベテラン職員の横暴さ(ごめんなさい)、どんどん人が辞めていく状況、介護職員はいろんな施設を経験して当たり前! という雰囲気もあったけれど、…自分のことだけを書こう。
 週5で、1日8時間働いていれば、技術的な仕事もできるようになるものだ。軟便の時の処理の仕方とか。ところが、これは言い訳でもなんでもなく、そういった場面に、ぼくはほんとに当たらなかった。
 下剤を飲んだ入居者さんに、その効果がでる時、ぼくは休憩時間だったり勤務終了後だったり休みの日だったり、他の入居者さんのおむつ交換をしている時だったりした。ほんとに、まるでぼくを避けるように、この4ヵ月間、軟便処置の現場に当たることがなかった。

 だが、「4ヵ月もいて、そんなこともできないのか」と思われたくなかった。(現場の詳細を書けば、ぼくのいたフロアはユニット型で、1フロアはショートステイでほとんど利用者さんはおらず、1フロア10名、それも重度の方はほとんどいらっしゃらず、一人の方を除いて、みんな自分で用を足せる入居者さんばかりだった)

 そして、やっと軟便処理をする機会に恵まれた時、ぼくはその入居者さんの部屋に行って、ひとりで初めて処理しようとした。まともにやり方を教わったわけでもないのに、自分ひとりでやろうとしてしまった。もちろんうまくいかず、ちょうどドクターが来て、彼が代わりにやってくれた。その時初めて、やり方を最初から最後まで見た。
 ぼくは、その入居者さんに謝った。ほんとうにごめんなさい、ひとりでやろうとしていました、いやな思いさせてしまって、ごめんなさい…入居者さんは、あなたのせいじゃない、と言ってくれたけど、ぼくはもう、やっぱりダメだった。
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