15.イギリス軍からの銃

文字数 785文字

1994年9月24日土曜日、午前8時
UNHCRンガラ事務所会議室

 ルワンダ難民が大量に流入したザイールのブカブの難民キャンプで暴動が発生し、ザイール軍が介入するという事件が起きた。この際、ザイール兵が死亡したらしい。旧ルワンダ軍兵士か民兵、またはその両方がザイール軍と一時戦闘状態に陥ったという。
 ゴマで見たザイール兵はみな完全武装だったので、そうした彼らと正面切って衝突したのだろう。まさに戦争状態だ。


 そうした中で、UNHCRからタンザニア警察官がキャンプと援助団体の安全管理にあたるために派遣されるとの連絡があった。200人の警察官がキャンプの各要所に配置されて治安維持にあたり、各援助団体の事務所にも夜間派遣されるということだった。

 これでやっと目に見えるキャンプと援助関係者に対する安全対策が実現した。ベナコの外にある街道沿いの建物が臨時の警察署となり、各キャンプの入り口には詰所のようなものが設置され、警察官が日中待機した。
 キャンプ内にはフツ人強硬派との衝突を恐れ常駐はしなかった。いくら武装した警官とはいえ、数万人の殺人経験豊富な強硬派民兵に襲われたらひとたまりもない。キャンプ内の治安維持というよりは、強硬派の行動を監視して抑制するという意味合いの方が大きい。


 ACESのンガラ事務所にも夜になると二人の若い警官がやってきた。何も出さなくてよいということだったが、寒い夜軒下で朝まで警備するのも酷なので、火鉢と簡単な夜食にチャイを魔法瓶に入れて提供した。
 二人ともイギリス軍が第二次大戦で使っていた年代物のリー・エンフィールド銃を持っていた。それでも強盗の方が、現在内戦中のソマリアのイスラム武装勢力経由で手に入れたAK47などの強力な銃を持っているので、お守りほどにしか見えなかった。とはいえ、警官が毎夜、事務所の警備にあたるのは正直、心強かった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み