Prologue

文字数 422文字

 ハルティア大陸北西部には、一風変わった城壁が存在する。黒レンガとも、石ともとれぬ微妙な色合いの固形物で構築されたそれは、とある国の国境線も兼ねていた。
 「カリト共和国」、他国からは「城塞国」とも呼ばれるそこは、周辺国との交易をあまり行わない、所謂鎖国状態の国である。大きな城壁の内側に入ることが許される者は少なく、その実情の多くは謎に包まれていた。
 しかしある時、一冊の本が出版された。まさにそのカリト共和国を舞台とした、架空の創作話とは思えぬ生々しさを孕んだそれは、実は作者自身が経験したことを綴った「自伝」だった。
 かつて陸軍に従事していたという彼女が記したカリト共和国。
 それは、当時のカリトの一人歩きした印象として根深かった「鳥籠の中のディストピア」を、根底から覆すこととなる。
 これからお話するのは、後にそうした自伝を記し、一気に国内外で知名度を上げることとなる、

宿

少女兵、リーア・ヴォストが十八歳の時の物語である。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

Reia Vost《リーア・ヴォスト》

カリト共和国陸軍所属の少女兵。18歳。正式な階級名は下級一等兵。

右目に異能力を宿すRighter《ライター》。所持能力は【戦闘精神】で、前髪をいじって右目のみを晒すと、好戦的な"第二精神"ことAvost《アヴォスト》に身体の主導権が入れ替わる。

Jax Tear《ジャックス・ティアー》

カリト共和国陸軍少佐。30歳。Reia《リーア》の指導役も兼任している。

異能力を持たないNeutral《ニュートラル》。今の地位は努力で築き上げた。

ジョークが通じない、通称「堅物」。

Cherie McWall《チリエ・マクウォール》

10歳の少女。実家は新興宗教【秘匿のメシア】の総本山。教祖の一人娘。

右目に包帯を巻いているが、包帯の下は紅瞳、即ちRighter《ライター》。所持する能力は【遠隔操作】=サイコキネシス。

敬語が使えない世間知らず。白が嫌い。

Stock Diller《ストック・ディラー》

カリト共和国陸軍中尉。30歳。Jaxと同期だが、階級はこちらの方が下。

無気力不真面目で、何かと理由をつけて仕事をさぼりがち。ヘビースモーカーでもある。

Righter《ライター》であり、所持能力は【遠隔破壊】。ある程度自分の意思で制御出来るため、普段から両目を外に晒している。

Alfred Retiberg《アルフレッド・レティバーグ》

カリト共和国陸軍大佐。50歳。元Jaxの指導役。

典型的な女嫌いで、駐在所唯一の女性兵であるReiaに対してかなり冷徹。

Victorとは幼馴染みの関係。

Victor Fillgrand《ヴィクター・フィルグランド》

カリト共和国陸軍中佐。50歳。元Stockの指導役。

数年前に、仕事中の事故で左脚の膝から下を失っており、現在は義足生活を送っている。その為、主に事情聴取といった内回りの仕事がメイン。

幼馴染みであるAlfredとは対照的に温厚で、女性軍人にも寛容的。だが本性は……。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み