Prologue
文字数 422文字
「カリト共和国」、他国からは「城塞国」とも呼ばれるそこは、周辺国との交易をあまり行わない、所謂鎖国状態の国である。大きな城壁の内側に入ることが許される者は少なく、その実情の多くは謎に包まれていた。
しかしある時、一冊の本が出版された。まさにそのカリト共和国を舞台とした、架空の創作話とは思えぬ生々しさを孕んだそれは、実は作者自身が経験したことを綴った「自伝」だった。
かつて陸軍に従事していたという彼女が記したカリト共和国。
それは、当時のカリトの一人歩きした印象として根深かった「鳥籠の中のディストピア」を、根底から覆すこととなる。
これからお話するのは、後にそうした自伝を記し、一気に国内外で知名度を上げることとなる、
右目に異能力を宿す
少女兵、リーア・ヴォストが十八歳の時の物語である。