2 秘密

文字数 1,710文字

彼を気に入っている彼女はもう、彼に好意を抱いている彼女となっていた。

研修最終日のボウリングの後、この次は飲みに行こう!と彼女が提案してきた。
私の都合が悪い日だった。(いや?頑張れば行けるかもしれなかったけれど、私は何故か気が乗らなかった)
3人が飲みに行き飲んでいる途中私にLINEを送ってきたがやはり行かれない。と断った。

彼女は4人のグループLINEを作り、毎月4人で会いたいね!と送ってきた。
やっぱり私が希望しない距離感かもしれない…。 

彼女はその後毎月、4人で集まりたい。と私に言ってきた。彼女本人が話を進めるわけではなく、私に提案し丸投げをしてくる。性格上私は面倒になり、結果私が4人の都合を調整するようになっていた。それも面倒なことなのだが。
翌月に4人で飲みに行く約束をした。

そして、私は自分の気持ちに素直に従うことにした。勇気を出して。

私は個人的に彼に連絡をした。
キミと2人きりで話してみたい。私と2人で会うのはイヤかな?
彼は私から2人で会いたいと言ってきたことに驚いていた。そして、全然イヤではない。と返信がきた。
2人きりで会う約束をしてしまった。
約束の日は4人で飲みに行く日のほぼ一週間後になった。

ん?コレは他の2人に話すべきなのか?と少し悩み、彼に聞いてみた。
彼は言う必要は無いんじゃないのかな。と答えた。
了解です。2人の秘密ができたのだった。

久しぶりに4人で会った。週2回会っていたのに会わなくなって1ヶ月以上経ったころだった。
私は知っている居酒屋に予約を入れておいた。
テーブルに着いた時、彼に好意を抱いている彼女が怪しく動きだした。何故だか私の座る位置を指定してきた。
私は言われるがままの場所に座ったが。
どうやら彼女は彼の隣に座ろうとしているらしい。とてもわかりやすい人だ。
けれど、何故だか失敗したようだ。彼は隣に彼女を座らせなかった。そして結局は私と彼が対面で座ることになった。
 
あまり覚えていないが、恋愛感らしき話題になり、私は「この先誰とも付き合うつもりはない」といつものように話した。何気ない会話。

そして、また始まったのだ。「少しだけカラオケ行く?」と彼女が言った。
私は答えないよ。少しじゃないよね?と心の声。
優しい男性2人は、仕方なくなのか?喜んでなのか?賛同した。
「今日は本当にバスで帰るから!」と彼女。
カラオケに着くと、彼女はしっかり彼の隣の席をゲットした。あーぁ…。と私の心の声。
そして、やっぱり彼女はバスを捨てた。
息子世代の男性の終電に合わせて解散。やっと解放された。
彼女はタクシー乗り場へと向かった。私と彼は彼女をそこまで送らなかった。

私と彼は自然と一緒に歩き出した。彼は「この前追いかけて来てくれたから、今日はオレが送るよ」と言った。
私はキミを追いかけたあの日から、ずっとキミが話したことが引っかかっている。と伝えた。
が、彼はあっさりと「いつもの事だから心配はいらない」と答えた。
いつもの事って。なかなかフツウではないよ。全くもって、私はどんどん彼に引き込まれてしまう。
『彼のことを知りたい』 

今の職業に就いた話題になった。私たちは同じ業種の仕事をしている。研修を受けたのもそのためだった。
研修の初日に自己紹介があった。その中の項目で、何故その職業に就いたのか?を話すことになった。
彼は「休みが多かったから」と話していた。
かなりの専門職なので、それだけで5年も続いているのは凄いと言った。

彼には何年か同棲していて数年前に別れた彼女がいた。別れた理由もどちらから別れを切り出したのかも言わなかったので私も触れなかった。
(彼が忘れることができなかった彼女。ずっと彼の中にいる彼女。)
彼は付き合っている当時はかなり彼女に酷いことをしたと話した。
彼女は働いていたので彼女が仕事に出掛けた後にバレない程度の彼女のお金を持ち出してギャンブルをしていたと。(きっと彼女は気付いていたのではないか?と私は思った。)
彼がまだ彼女と別れる前か後かはわからないが、自暴自棄になり大怪我をして何ヶ月もの入院の後に実家に戻り今に至ったと話してくれた。
(それってフツウは死んでしまうのでは?彼は不死身か?)










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