世界が崩壊する時
文字数 1,839文字
「まずい、終わる。崩壊してしまう……このままでは、このままでは!」
俺は会社から帰り、家での用事も済ませ今日も平和に眠りにつくはずだった。しかし、今、目の前で崩壊が始まっている。
ガラガラと始まる崩壊をこれ以上広げぬよう、腕に力を込めて体勢を整えているところだ。
「でも、ここから、ど、どうしたらいい、だ、誰か」
しかし、残念ながらこの家には俺一人しか存在はしない。ひとり暮らしの家に、そう簡単に助けなんて現れるわけがない。とんでもない魔法だとか、途方もない力で何かを召喚するとか、それくらいできないと今、俺以外の誰かを呼び起こすなんて不可能だ。俺は魔力なんてこれっぽちもない平社員なわけで、助けを呼ぶ選択肢はペケだ。
ちな、俺は独身のアラサー男。ちなみに彼女はいるぞ。最近できたんだ。いや、ほんと、最近できたんだぞ。二十六にして、初めてのな!まだ、付き合って一カ月ちょいすぎだがこのまま順調にいけば……結婚だって夢じゃなくなるのだ!だから、だからこの崩壊を俺一人で止めねばならん。俺の人生を懸けてでも。
なんとしても、生き残るために。
でも、どうしたらいい。まずいぞ。この目に前で始まった世界の崩壊を止めなければ、俺の人生が終わる。やっと手に入れた幸せがあるというのに、まずい、まずい!
頼む、辞めてくれ。ああ、どうにかして、俺が動かねば!しかし、動けないのだ。俺は今、腕に力を込めて目の前でグラグラと起こる崩壊を阻止しているわけだが、どうやら少しでも俺が動くと、この世界のバランスが崩れてジ・エンドだ。
でも、いつまでもこうしてるわけにはいかないのだ。どうする俺、どうする、どうする!
これはあれだ、俺の実家で起こった押入れパンパン事件と似ている出来事だろう。ぎゅうぎゅうに詰めたオフトゥンが、弾けて外に飛び出てしまうやつだ。あれは、片付けるのが大変なんだ。いや、それはまだ可愛いもんか。片付けるのが大変で済むのだからな。
俺は今、人生が掛かっている。
これから、独身を脱出し幸せに生きる為の人生が。
正直、全て悪いのは俺だ。珍しく料理を頑張って多くの洗い物を出し、食器を沢山小さなカゴに積み上げた結果、山にしすぎたこの皿たちは雪崩れ始め、地面で割れてやるの意思で俺に向かってきてしまった。止めに入ったのだがとんでもない雪崩れ方をしやがって、今、俺の体勢は、皿たちを腕でおかしく受け止めるものすごい緊急体勢に入っている。とにかく、やばい体勢なんだこの野郎。
そしてだ、ここが一番の問題なのだが、一番てっぺんに積み上げてしまったまだ付き合って一カ月ちょいの彼女から貰ったコップが一番今、落ちてしまいそうなんだ。
これは、大変スペシャルまずいんだ。何故かって、これが原因で振られたりなんかしたらどうする!?乙女心は大事なんだぞ!些細なことで傷ついてしまうかもしれないからな!しかも、これが初カノからの初プレゼント!初初の初だ!超絶大事なんだぞ!
でもだ、俺が少しでも動けばコップだけでなく別の皿が動き、一瞬で目の前の世界は、ガラガラとてっぺんを蹴り落としに来る。下手したらコップ以外も全て終わるかもな。つまり、ジ・エンドエンドエンド!コップの救出にいけず、動くことさえも出来ず、ピンチオブピンチ。
動かないしか方法は無いのだ。さっきからいくら考えてもどうしようか頭を回しても、どっちみちコップはパリンだ。
って、辞めてくれ破局はごめんだ。
俺の幸せなこれからの世界をどうか壊さないでくれ!
俺はやっと独身を卒業できるかもしれないし、これから魔法使いになってしまうのを免れることだってできるかもしれねえんだ。
でも、でも、どうすれば、ああああ!ダメだ、考えていたらコップがあ、ああああ!
――――パリンッッッ
はっ!こ、こここここ、こっ!
「コップぅぁああああああぁぁああ!」
目の前全部の崩壊は免れた。
が。
愛する彼女たんからのコップだけが、地面で亀裂を作って飛び散った。
てか、皿たちは何故無事なんだ。お前らが落ちろよ。さては、お前らはこのコップちゃんを落とすために俺を困らせていたんだな!?リア充爆破しろってか!?てっぺんがいなくなって、平和そうでいいなこの野郎、くそ。
はあ、俺の人生はこのコップひとつで大きく崩れてしまうかもしれない。
「お、俺は、絶対に結婚するんだ……」
割れてしまったコップのかけらを拾い集めて、瞬間接着剤という回復アイテムを取り出し、俺は朝まで戦った。
俺は会社から帰り、家での用事も済ませ今日も平和に眠りにつくはずだった。しかし、今、目の前で崩壊が始まっている。
ガラガラと始まる崩壊をこれ以上広げぬよう、腕に力を込めて体勢を整えているところだ。
「でも、ここから、ど、どうしたらいい、だ、誰か」
しかし、残念ながらこの家には俺一人しか存在はしない。ひとり暮らしの家に、そう簡単に助けなんて現れるわけがない。とんでもない魔法だとか、途方もない力で何かを召喚するとか、それくらいできないと今、俺以外の誰かを呼び起こすなんて不可能だ。俺は魔力なんてこれっぽちもない平社員なわけで、助けを呼ぶ選択肢はペケだ。
ちな、俺は独身のアラサー男。ちなみに彼女はいるぞ。最近できたんだ。いや、ほんと、最近できたんだぞ。二十六にして、初めてのな!まだ、付き合って一カ月ちょいすぎだがこのまま順調にいけば……結婚だって夢じゃなくなるのだ!だから、だからこの崩壊を俺一人で止めねばならん。俺の人生を懸けてでも。
なんとしても、生き残るために。
でも、どうしたらいい。まずいぞ。この目に前で始まった世界の崩壊を止めなければ、俺の人生が終わる。やっと手に入れた幸せがあるというのに、まずい、まずい!
頼む、辞めてくれ。ああ、どうにかして、俺が動かねば!しかし、動けないのだ。俺は今、腕に力を込めて目の前でグラグラと起こる崩壊を阻止しているわけだが、どうやら少しでも俺が動くと、この世界のバランスが崩れてジ・エンドだ。
でも、いつまでもこうしてるわけにはいかないのだ。どうする俺、どうする、どうする!
これはあれだ、俺の実家で起こった押入れパンパン事件と似ている出来事だろう。ぎゅうぎゅうに詰めたオフトゥンが、弾けて外に飛び出てしまうやつだ。あれは、片付けるのが大変なんだ。いや、それはまだ可愛いもんか。片付けるのが大変で済むのだからな。
俺は今、人生が掛かっている。
これから、独身を脱出し幸せに生きる為の人生が。
正直、全て悪いのは俺だ。珍しく料理を頑張って多くの洗い物を出し、食器を沢山小さなカゴに積み上げた結果、山にしすぎたこの皿たちは雪崩れ始め、地面で割れてやるの意思で俺に向かってきてしまった。止めに入ったのだがとんでもない雪崩れ方をしやがって、今、俺の体勢は、皿たちを腕でおかしく受け止めるものすごい緊急体勢に入っている。とにかく、やばい体勢なんだこの野郎。
そしてだ、ここが一番の問題なのだが、一番てっぺんに積み上げてしまったまだ付き合って一カ月ちょいの彼女から貰ったコップが一番今、落ちてしまいそうなんだ。
これは、大変スペシャルまずいんだ。何故かって、これが原因で振られたりなんかしたらどうする!?乙女心は大事なんだぞ!些細なことで傷ついてしまうかもしれないからな!しかも、これが初カノからの初プレゼント!初初の初だ!超絶大事なんだぞ!
でもだ、俺が少しでも動けばコップだけでなく別の皿が動き、一瞬で目の前の世界は、ガラガラとてっぺんを蹴り落としに来る。下手したらコップ以外も全て終わるかもな。つまり、ジ・エンドエンドエンド!コップの救出にいけず、動くことさえも出来ず、ピンチオブピンチ。
動かないしか方法は無いのだ。さっきからいくら考えてもどうしようか頭を回しても、どっちみちコップはパリンだ。
って、辞めてくれ破局はごめんだ。
俺の幸せなこれからの世界をどうか壊さないでくれ!
俺はやっと独身を卒業できるかもしれないし、これから魔法使いになってしまうのを免れることだってできるかもしれねえんだ。
でも、でも、どうすれば、ああああ!ダメだ、考えていたらコップがあ、ああああ!
――――パリンッッッ
はっ!こ、こここここ、こっ!
「コップぅぁああああああぁぁああ!」
目の前全部の崩壊は免れた。
が。
愛する彼女たんからのコップだけが、地面で亀裂を作って飛び散った。
てか、皿たちは何故無事なんだ。お前らが落ちろよ。さては、お前らはこのコップちゃんを落とすために俺を困らせていたんだな!?リア充爆破しろってか!?てっぺんがいなくなって、平和そうでいいなこの野郎、くそ。
はあ、俺の人生はこのコップひとつで大きく崩れてしまうかもしれない。
「お、俺は、絶対に結婚するんだ……」
割れてしまったコップのかけらを拾い集めて、瞬間接着剤という回復アイテムを取り出し、俺は朝まで戦った。