第5話

文字数 475文字

 ところが、来園客が増えるにつれ、しばしばチャンネル争いが起こるようになった。
 私は心を痛め、チューニングすることをやめて、それぞれのサボテンにイヤホンをつけることも考えた。しかし、やっぱりみんなでひとつの放送を聞いている光景が、私は好きだった。
 そうはいっても、時代の流れには逆らえない。サボテンラジオを個人で聴くことが徐々に流行り出した。お気に入りの放送局のサボテンを寄せ植えにして、自分だけのサボテンラジオセットを作るのだ。
 私はふと思いついて、教授に相談した。そうした個人のサボテンラジオマニア向けに、チューナーを製品化してはどうかと。しかし教授は、大きすぎて売れないだろうと言った。たしかに、卓上レベルの寄せ植えなら、サボテンをそのつど手で組み替える方がかんたんだと、そのときは私も納得した。
 それからほどなくして、国内で独自にサボテンラジオ放送を始める人たちがあらわれた。受信株として使われていない種類のサボテンを見つけ出し、その周波数を使って自宅から番組を流す。同時に受信用のサボテンを栽培して販売し、儲けを得るというわけだ。
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