二章

文字数 14,402文字

 ふと浅い眠りから覚めると、膝に重みを感じた。レオンハルトは髪をかき上げ、霞む眼でその正体を突き止めようとそっと触れる。そこにはイアンが眠っていた。あまりの厚顔無恥さに溢れんばかりの不満の言葉を喉につまらせつつ、慎重に懐中時計を取り出す。時針が三時、分針が十を差し、午後三時五十分の時刻を打っていた。待ち焦がれた故郷カンタベリーへの到着が目前に迫り、昂る喜びを抑え、心地良さそうに眠る少年を優しく揺さぶる。
 淑やかな眠りを妨げられたイアンはぎゅっと眉毛を顰め、ゆっくりと身体を起こし重たげな目蓋を開く。革手帳とペンを手に取り、強い眠気が抜けきれていない事を物語る乱れ綴った文字をレオンハルトに見せた。
『着いたの?』
「いや、もうすぐだ。今のうちにその気怠げな顔をなんとかしておけ」新聞を小さく折り畳み、喫煙具を鞄の中にしまいながら言った。
 イアンは開放されたままの車窓に顔を向け、そこに映る目を細めた間抜けな自身と睨み合い、癖がついた柔らかな髪を整えた。車窓の向こうに広がる豊かな草木で囲まれた大きな池の中でゆったりと優雅に泳ぐ鴨の親子と広大な草原を駆ける羊の群れが視界に入らなくなるまで眺めたのち車窓を閉す。少年はレオンハルトの方に向き直すと、かれは帽子を被りコンパートメントの戸を開け、鞄を手にして先に退出した。イアンは慌てて、かれの外套の裾を掴み、革手帳とペンを差し出す。しかし、かれは受け取るのを拒んだ。
「それはイアンがきちんと()()()ようになるまで持っていると良い。それと、俺のことはレオンと呼んでくれ」と答えた。
 廊下の車窓からカンタベリー駅の歩廊が見えると、レオンは不安定に大きく揺らぐ廊下を軽快な足取りで歩きながら乗車口まで向う。イアンは革手帳とペンを肌身離さずしっかりと持ち、かれの後をついて行く。汽車が停まると、かれは固く閉ざされた戸を勢いよく開け、ふたりは外に出た。
 数少ない乗客たちが次々と出て行き、やがて出発を告げる汽笛の音が静寂を破り、カンタベリー駅付近に響き渡り始める。イアンは振り返り、汽車との別れを惜しむように悲哀を宿した眼差しでじっと見届けた。
「イアン、行くぞ」レオンは声高に呼びかけた。
 悲哀を勿忘草色の瞳に秘め、少年は出入口付近で待機するかれの元へ駆け寄り、小さく飾り気のない素朴なカンタベリー駅を出た。
「ここで少し待っていてくれ」レオンは囁いた。
 一牛鳴地の平々凡々な地を見渡し、黄昏れの兆しが見える青く澄んだ空を見上げる短かな褐色の髪に、垂れ気味な瞼から見える朽葉色の瞳をした若い御者が眼に留まり、かれは親しげに声を掛け近づく。
「バーニー。退屈そうだな、待たせてしまったか?」
「レオンか。俺が()()()()ほど退屈そうに見えるか?」
()()()()ほど多忙なら君の負担を減らす為にも、他の御者を雇うことにしよう」バーニーは立ち去ろうとするレオンを呼び止めた――「そうか。寂しくなるな」
 レオンは振り返って「君の言う通り、長い道を黙々と歩くのは、実に退屈で惨めだよ」と、微笑を泛べて言った。
 バーニーはかれの顔を見て、笑いながら言う。「レオン! 俺を悪者にして楽しいか? そうでないなら、乗ってくれ」
「ありがとう、バーニー。その前に、少しだけ待ってくれないか」
 レオンは数メートル離れた場所で待機しているイアンの名を呼び手招きをすると、少年はゆったりとした足取りで歩み寄った。
 かれは、イアンに先に馬車へ乗るように促す。
「イアン? いつから子供を?」とバーニーは(いぶ)かしげな表情でレオンを見つめた。
「そんな顔で俺を見るな。君とは長い付き合いだから知っていると思うが、俺に甥や姪はいても子供はいない。この子はロンドンにいる意地の悪い遠い、遠い親戚の子供だ。どういうわけか、しばらく預かって欲しいと頼まれたのだよ」顰めた顔を左右に小刻みに揺らしながらレオンは言った。
 バーニーは片眉をつり上げ、座席に座る薄汚れた少年に対し、疑念に満ちた眼差しを向けながら呟く。「相変わらず()()()()()()()()()()()()()()だな」
「勘違いしているようだが、俺の周りにいる人間が押し付けがましいだけだ!」レオンは不機嫌そうに言った。
「そう言う事にしておいてやる。だから、早く乗ってくれないか?」
 レオンは不貞腐れた顔でバーニーを睨みながら馬車に乗り、座席に身を投げ出す。御者が手網を引き、逞しく大きな体と艶のある栗毛の馬に出発の指示を送る。蹄で力強く土を踏み、規則正しく重い音を響かせ馬車を前進させた。
 イアンは手帳を開き言葉を綴り、それを見せようとレオンに眼を向ける。しかし、かれは長い腕と脚を組み険しい顔で街を眺めていた。威圧感漂う姿に怯み、躊躇うが、少年はかれの逆鱗に触れぬよう慎重に肩に触れる。
「どうした?」レオンは眉を上げ振り向き、穏やかな声で訊く。イアンは安堵し、すぐに手帳を見せた。
『どうして親戚だなんて言ったの?』かれは眉を顰めて囁く。「どうしても何も正直に全て話す必要がないからだ」
『だからと言って、嘘をついて大丈夫なの?』少年が不思議そうに首を傾げ尋ねた。
「得体の知れない君のことを親戚として扱うことにすれば、余計な詮索をされずに済むからだ。それに、たとえ親戚でも必要以上の関わりがなければ他人同然だ」
 懐疑心を持ったイアンは赤く小さな脣を歪ませた。
「やれやれ、君は面倒な質問ばかりするのだな」かれはため息混じりに言った。「不正直者は、いずれ狼少年のように蔑まれるとでも言いたいのだろう?」
 少年が力強く頷くと、レオンは喋り始める。「君が想像している通り、正直者とは、誠実かつ人望が厚いのは確かだ。だが、けして有能ではない。正直が故に、愚かすぎるのだよ。例えば、ある裕福で正直な男が見知らぬ小さな少女を隣町から連れて帰ってきたとしよう。そして、男は不特定多数の人たちに『その少女は?』と問われ、男は『憐れ故に、引き取ったのだよ』と述べた。すると、ある者たちは聖人だと讃頌し、ある者たちはピュグマリオーンのようだと言った。イアン、君がその光景を目の当たりにしたらまず何をする?」
 イアンは視線を左下に向け、しばらく考え込んだが、やがてこう答えた――『僕ならお父さんに貧しい女の子を連れた優しそうな紳士を街で見かけた、と話していると思う。レオンは?』少年は、かれに尋ね返す。
「俺も君と同じだ。街に風変わりな男がいたとメイドたちに話す。ここで気付いたと思うが、人間は何かしら得た情報を他人と共有をしたがる――何気ない会話や俺たちが読んでいる新聞など様々な形で耳や目に入ってくる――いつしか噂話となり、世に広まるのだよ」
『噂話ってそんなに広まるのが早いの?』
「街や村の規模にもよるが、小さければ小さいほど伝染病の如く広まる。先程、君が汽車の中で質問していた黒死病のようにだ」
『そんなに早く広まるなら、悪意ある好奇心を持った人たちが、腐乱死体に集る蝿のように詮索し始めてもおかしくないね』
 レオンは濃い三日月型の眉を上げ、笑いを含んだ声で言った。「ロンドンに住んでいた頃、よく警察たちが新聞記者たちの事を蝿と呼んでいた。まさか、君の口からその言葉を再び聞くことになるとは」
『僕のお父さんも新聞記者の人たちことを、『死体に集る忌々しい蝿どもめ!』とよく蔑んでいたよ』
「そうだったのか。一つ尋ねるが、お父さんの名はなんと言うのだ?」
『ラファエル・グレイだよ。僕に沢山お話を聞かせてくれるんだ。昨日はね、お父さんのお友達について話してくれたんだよ!』
「そうか。後程、君のお父さんについて詳しく聞かせてくれ。少し話が逸れしまったが、蝿を含めて噂話を嗅ぎつけた悪意ある連中はテリトリーを侵害してまで詮索をするのだよ。それだけではなく、理由がどうあれ、娯楽の一環として事実を捻じ曲げてまで噂話を広める者もいる――イアン、捏造された情報が世に広ってしまうのはとても怖しいことなのだ――心弱き者は自滅を選び、笑みを絶やす事のない沈まぬ太陽のような者ですら、じわじわと命を削る強力な神経毒のように精神を蝕む。あまりこのような事は言いたくないが、正直者が馬鹿を見るこの不条理な世界を生き抜くには、上手に嘘と向き合う必要がある――()()()()()()()為にもだ。特に田舎のような狭いコミュニティーでは余計な事を喋らないのが賢明だろう。常に、自身が噂話を提供している側だと意識することだ」
『分かった――レオン、もし例え話の男が嘘をついてたらどうなってたの?」
「伝え方と嘘の内容次第では、未来が大きく左右されると考えている。そこでだ、イアンならばどう答える?」
 イアンは考える間もなく、手帳に言葉を綴りそれを見せた。
『僕は聖人でもなければ、ピュグマリオーンでもないから涙ながらに失踪した我が子をようやく見つけたと答える!』レオンは声をたてて笑った。「なんて狡猾なのだ。そして、大胆で大袈裟でもある――だが、君は最後までその嘘を突き通せるのか?」
『僕なら突き通せるから答えたんだよ!』少年は不機嫌そうな顔で、かれを睨むように見つめた。
「面白い、その自信はどこから来ているのかね?」
 少年は自信に満ち溢れた微笑を泛べて答える。『たった今、レオンに譲り受けた智慧から来ているよ。正直に全て話す必要はないと。それに、譲り受けたからにはきちんと活用しないと無駄になるでしょう?』
「智慧を授けた覚えはない。だが、けして悪い事に活用するな。嘘を嘘で塗り重ねた者は、嘘に支配され、制御出来なくなり、いずれ破滅する」
『わかってるよ! 気をつける! そういえば、バーニーってお喋りなの?』
「バーニーを含め、カンタベリーの人間はお喋りだ。秘密や俺の悪口を共有すれば、数刻には皆大騒ぎだ」
 この世で最も怖しい物を目の当たりにしたと言わんばかりにイアンは眼を見張らせた。
『そんなに驚く事はないだろう。仕方がないと言えば可笑しな話だが、文化の街と呼ばれるロンドンとは違って、何もないこの田舎では噂話と新聞が唯一の娯楽なのだよ』
『レオンは悪い噂を広められた経験はあるの?』
 かれは首の後ろをさすり、少し間を置いてから、「どうだろうな」と、答えた。
 少年は眉を寄せ、『話したくないんだね』と訊く。すると、レオンの眼は見張り、困惑の色が顔をかすめた。
「いや、違う」かれは咳払いし言った。「俺の話を聞いたところで何も面白くない。それより、建築物には興味はあるか?」
 イアンはかれが指を差した方向に眼を向けると、遠く離れたカンタベリー大聖堂が視界に入った。千百七十年に政教分離を巡り、プランタジネット朝初代の王ヘンリー二世と対立したカンタベリー大司教トマス・ベケットが殉教し、聖人に列せられた事から、多くの巡礼者が訪れる聖地はイアンの底知れぬ探究心と知的好奇心に刺激を与えた。
 喜色満面な少年はその純粋な勿忘草色の瞳に願いをたたえてレオンをまじまじと見つめるが、かれは顔を背けて呟いた。
「カンタベリー大聖堂なら()()()()連れて行ってやろう」
 消極的なかれの言葉にイアンの顔は青ざめ、全身をわなわなと顫わせる。昂るばかりの悲しみを抑えることが出来ず、少年は手帳に感情を表すかのように乱れた文字を綴り、それをかれに見せた。『僕はレオンを怒らせてしまったの? 口では()()()()連れて行くとは言っているけど本当は、本当は……』
 涙で滲む勿忘草色の瞳を向ける。レオンはけして眼を合わさぬよう顔を背け続けるが、懇願の視線を浴びるにつれて困惑の表情がありありと泛び、少年を宥めるように不安定な声音で囁いた。
「分かった。悪かったからその忌々しい眼差しを向けるのをやめてくれ! 次の休日には必ず連れて行くと約束しよう!」
 すると、少年の顔に宿る悲嘆の情はあっという間に消え、喜悦をたたえた微笑を見せた。かれは狡猾な少年の小さな罠に嵌り、眼頭を指で押し当て俯き大きくため息をついた。
「なんだレオン。突然大きなため息をついてどうしたんだ?」
「バーニー、心配するな。思いのほか疲れていたらしい」
「ご苦労さん――そういえば、()()()はどうなったんだ?」
「何を言っているのだ? 俺はとうの昔に英国に身を委ねたのだぞ?」
「それは大変()()()()()な」バーニーは声をたてて、笑いながら言った。
「当分の間、俺の話題で退屈せずに済むだろう。感謝して欲しいものだ」
「そうだな――それで本当のところはどうなんだ?」レオンは額に手を当て、躊躇ったが「すでに結果は分っているのだろう?」と渋々と答えた。
「そろそろマティルダさんを安心させてやれよ」
「バーニー! 頼むからその恐ろしい呪文を唱えるな。唱えたところで何もないが、最善を尽くす」かれは低く声に失意を宿し、苦しげに言った。
 御者は、手網を引き進行を止めるよう合図を送る。土を踏み潰す音が鳴り止むと共に馬は鼻息を荒げた。
「おい! 着いたぞ」バーニーは振り返り、声高に言った。レオンは、上機嫌で小さな鼻歌を歌い、手帳に馬を描くイアンの肩を叩き、目的地に到着した事を告げる。ふたりは速やかに馬車から降りた。
「ご苦労だった、バーニー。明日も頼む。では、また」かれは淡白な別れを告げ、デタッチド・ヴィラと呼ばれる赤褐色のレンガで造られた新ゴシック様式の屋敷へと向かう。すると、クレマチス、コスモス、コルチカム、ダイヤモンドリリーなど秋の象徴とされる花が咲き乱れる庭で脊は高く、華やかな蜂蜜色の髪、眉尻にかけて上がった太く濃い眉にどこか力強さを感じさせる薄い灰色の瞳、真っ直ぐ通った鼻筋とすっきりとした小鼻が印象的な容姿端麗のメイドが植物たちの世話をしていた。レオンはメイドの名前を呼んだ。
「アン!」
 アンはすぐに手を止め、声がする方角に向き変える。主人であるレオンの顔を眼に留めると笑みを溢し、軽やかな足取りで歩み寄り、暖かく迎えた。
「お帰りなさいませ、旦那さま。長旅お疲れ様でした! 如何でしたか?」
「何処ぞの家の見目麗しいだけのメイドと違い、忠順でよく躾けられていた」
「その様子ですと、相変わらず身を固めるつもりはないようですね」アンはため息混じりに言った。
「俺は事実を述べたまでだ」
「そうですね。ところで、旦那さま。そちらのお方は?」レオンの後ろに隠れ庭や屋敷を眺める少年に興味を唆り、覗き込む。
「この子はイアンだ。ここで話すと長くなる。一先ず、この()()()の世話を頼んでも良いだろうか?」
 アンはレオンとイアンの顔を交互に見つめたのち、にこりと微笑み「()()()()()は、こちらの()()()のお世話に興味はないようですね」と優しい声で答えた。
「アン、坊ちゃんとは誰の事だ?」
「あらあら、これは大変失礼致しました。旦那さまは、もう坊ちゃんとお呼びするようなお方ではありませんでしたね」と、アンは呟いた。レオンは肩をすぼめ、皮肉なメイドから逃れようと真鍮のドアノブに手を伸ばし、上部に着色ガラスがはめ込まれた扉を開けた。色彩豊かで様々な模様が施された陶器のタイルが貼られた床の玄関ホールへ入ると、二日ぶりの自宅から仄かに香る花の匂いにかれは安堵を感じた。
「ああ、旦那さまですか。随分と遅かったのですね」階段で行儀よく座る大きく丸っぽい鼻先に暗い栗色の髪の二人目のメイドのベティが気怠そうに顔を上げ、冷めた無機質な眼差しでレオンを迎えた。
「ベディ。読書するのは構わないが、堂々と怠けるとはいい度胸をしているのだな」
「テーブルにお紅茶と軽食をご用意しておきましたので()()()()召し上がってください」
 レオンは、太々しい態度を取るベティを無言でじっと見つめた。すると、視線を感じたメイドは渋々としおりを挟み、「先程、旦那さまとアンの話し声が聞こえましたので、お二人が会話をしている間にお連れ様の分も合わせてご用意しておきました――それより、こちらの小説の新刊はまだですか? 私は続きをとても楽しみにしているのです」と、小さく薄い脣には期待の微笑が溢れ、先程まで冷めていた緑色の大きな瞳を煌く穏やかな湖のように輝かせ、手にしている小説を見せながら言った。
「『緋色の研究』の続きが読みたければベティが執筆すれば良いだろう」鞄から雑誌を取り出し、レオンは語を継いだ。「出版されるまでは、このペニー・ドレッドフルで凌ぐとよい」
 すると、ベティの脣から微笑が一瞬にして消え、失意がありありと泛んだ。「残念ですが、ペニー・ドレッドフルのように、低俗な私には執筆出来るほどの教養を持ち合わせておりません。そこは()医者の旦那さまが執筆して頂けないでしょうか?」メイドは嫌味を溢した。
「ベティ、紹介状なら喜んでいくらでも書いてやろう」
「有り難きお言葉です! 是非、アンとコニーの紹介状も書いて下さいね」メイドは、主人の皮肉に対して、柔かに答えた。
 かれは「そのうちな」と顔を背けて、ため息混じりに呟いた。
 レオンは鞄を殺風景な玄関ホールに置かれたどっしりとしたオーク材のホールスタンドの側にある椅子の上に置き、気怠げに外套と帽子を脱ぎ始めると、ベティは速やかに立ち上がって、主人の帽子と僅かに汚れが付着した外套を受け取った。
 一連のやり取りを目の当たりしたイアンは、レオンとベティの没落した主従関係に度肝を抜かれ、二人の顔をまじまじと見つめた。
「どうかしたのか? どこか具合でも悪いのか?」かれは腰を落とし、呆然としているイアンに呼びかけると、少年はまるで息を吹き返したかのように勢いよく首を横に振った。
「そうか。なら、よい。さあ、ついて来い」
 階段を横切り、メイドたちにより隅々まで掃除が行き渡ったホールを歩き、突き当たりの扉を開け部屋に入る。すると、鼻は小さく、琥珀色の髪と丸く大きな狼の瞳を持つ三人目のメイドのコニーが額に汗を流し、疲労を赤く火照る顔に宿しながら浴室を清掃していた。
「コニー、そこにいたのか」
 聞き慣れた低い声にコニーは慌てて振り返り、背筋を真っ直ぐ整えると微笑を泛べて軽く膝を折る仕草を見せた。
 かれは笑いながら言った。「コニー、ここは貴族の屋敷ではない――慣れるまでもう少し時間が掛かるだろうが、どうかここではもう少し気を楽にしてほしい」
「ありがとうございます」メイドは深々と頭下げた。
 かれは謙虚なメイドを見守りながら蛇口を捻り、あらゆるものに触れ汚れた手を少量の冷たい水で濡らし、石鹸で念入りに清潔にする。レオンは濡らした石鹸をイアンに渡すと、手にした筆記用具を置き、かれの動作を真似て手を洗い始める。
 コニーは窓際の側に設置された高い戸棚を開け、規則正しく並べられた真っ白いタオルを一つ取り、レオンに渡した。
「ありがとう」
「とんでもございません。旦那さま、お湯が張り次第、お呼び致します」
「よろしく頼むよ。それより、ひどく疲れているようだが、気分はどうだ? もし、優れないのであれば、ふたりに代わるなり、相談をしてくれ」
「お気遣いありがとうございます。万が一、メイドとしての勤めを果たす事が困難になってしまった場合、とても温かく見守って下さる紳士が常に側におります。少々気難しい方ですが、いざと言う時には頼りになります。どうかご心配なさらないでください」
 レオンは妙な微笑を泛べて沈黙をした。かれは沈黙を守り、タオルを半分に畳み乾いた面をイアンに渡し、速やかに浴室から出た。少年は慌てて手を拭い、狼狽えていると、コニーはにこりと微笑を泛べてタオルを受け取り、筆記用具を渡した。
 イアンはコニーに一礼をした。浴室を出るとかれは玄関ホールへと向かい、そのまま左折して、広々とした部屋に入った。少年も続けて入ると、部屋には豊かな紅茶の香りが満ち溢れ、木材ならではの温かみを感じさせるマカボニー材の床には差し色の金色が美しい真紅のペルシャ絨毯、壁一面はダマスク柄の鮮やかなサイアンブルーで彩られている。その壁には植物や風景が描かれている絵画が飾られ、大きな窓には詩人、芸術家、マルクス主義者の様々な肩書きを持つウィリアム・モリスの作品の一つ「いちご泥棒」を連想させるロンドンの夜空のように深く暗い重厚的な青いジャカード織カーテンと清らかな白に花と孔雀の尾が広がる繊細な刺繍が施された東洋的な雰囲気を持つレースカーテンが掛けられていた。広々とした空間の中で一際目を引く装飾的なタイルに囲まれた暖炉と趣味よく厳選された数々の調度は過剰装飾な空間に調和を与え、繰り広げられる極めて芸術性の高い世界を少年は鑑賞していた。
 レオンは窓際に置かれた英国の花々をモチーフとしたと華やかなカーヴィングに優雅な曲線、高貴で印象的な深みのある真紅のベルベット生地が張られたウォールナット材のショーウッドチェアにもたれる。
「落ち着きのない空間だが、向かい側の椅子に座ってくれ」少年は静かに腰を掛けた。
『質問しても良い?』
 かれは頷き、小さな円テーブルに用意された紅茶を啜った。
『さっき、よそのメイドは従順って言っていたけど、具体的にレオンのところのメイドとは何が違うの?』
「やれやれ、変わった質問をするのだな」
『メイドは主人に対して従順、基本的にメイドは主人に()()()()()()()()()()、中流階級の家庭でも鍵やドアを開けるのはメイドのお仕事って聞いたことがあるから気になったの』
 レオンはしばらく考え、やがてこう答えた。「従順である事は認めよう。だが、皆がそうとは限らない。見て分かると思うが、俺とメイドたちの間には主従関係は無いに等しい。なによりも主従関係を設けて、彼女たちを奴隷同様に扱うことに抵抗があるからだ」
『それって一般的に見れば大丈夫なの?』少年が眉を寄せると、かれは紅茶を啜り答えた。「下層階級者たちは二流であり、苦労や労働は当然のものだと考えられている一般的な視点から見れば、極めて異端的で、深刻な問題になるだろう。だが、ボヘミアニズムをたたえるハワード家では、彼女たちにはメイドとして各々の役割・仕事をきちんと熟すことを条件に、対等の権利と自由を与える、と双方の合意の上で雇用したのだから全く問題ない。家庭と言うのは人の性格・顔立ちのように一つひとつ異なるのだから無理に他者のやり方に合わせる必要はない。身近なもので例えると、君の好きな本も同じ分野であったとしても執筆者の思考や価値観によって、内容が大きく変わっていくだろう?」
『確かに。全てが同じだったら退屈だね』
「そうだ――『それぞれ異なる性質を受容れるか、受け容れられないか』が問題だ。とは言え、メイドたちが無礼なことをしたら報告はしてくれ」
『分かった。けど、体罰は与えたりはしないよね?』
 レオンが笑いを含んだ声で、「君には、彼女たちが体罰を与えるほど教養のない間抜けなメイドに見えるかい?」と言うと、イアンは慌てて首を横に振った。
「旦那さま!」コニーは背後から大声でレオンを呼ぶ。かれは驚きのあまり低く小さな悲鳴を上げて椅子から立ち上がり、血の気が引いた顔をメイドに向ける。
「コニー、驚かせるな!」かれは声高に言った。
「旦那さま、それはこちらの台詞です! 先程からおひとりで呟いてらっしゃるようですが、大丈夫ですか? 少し休まれてはいかがでしょう?」苦しげな声でコニーは言った。
 レオンは大きく息をつくと、やがてとても穏やかな口調で答えた。「大丈夫だ――イアン、少し席を外す。しばらく手帳を借りるぞ――テーブルに置いてあるサンドイッチだが好きなだけ摘むといい」
 イアンは柔かに笑みを泛かべて頷いた。
「コニー、こちらへ」憂わしい眼差しを向けるメイドを廊下へ誘導し、ふたりは一度部屋から離れた。かれは再び一息ついてから口を切る。「連れてきた少年の事だが、後程、詳しく話す。あの子は、どうやら上手く喋る事が出来ないのだよ」
「それは、お気の毒に。何か深刻な病でも?」コニーは狼の瞳を涙で僅かに滲ませ暗く重々しい表情を見せた。
「そんな顔をしないでおくれ。恐らく、過度な緊張により一時的に上手く喋れないのだろう。特に人見知りな子供にはよく見られる。それに、十分に読み書きが出来るようで、そのおかげもあり、こうして筆談をしている」レオンはコニーを宥めるように言うと、使い古した黒い革手帳を開いて筆談による会話の一部分と当時の状況を簡易的に説明した。
「これほど語彙が豊かなのであれば、お育ちの良い方だと見受けられます」
「俺も君と同じ意見だ。とても浮浪児だとは思えない。この豊かな語彙が下層階級では釣り合わないと物語っている」
「仰りたい事はよく分かります。他にも、血色の良い肌、お召し物は色褪せ草臥れておりますが、とても上質な生地が使われている事に強い違和感を感じます。旦那さま、イアンさまの身元については、一度警察に相談されてみては如何でしょうか?」
「あのろくでなしな忌々しい警察の世話になるのなら、執念深い私立探偵に依頼した方が良い。()()()()()()()()()のだから」かれは厳しめの口調で言った。
「旦那さま。このような事申し上げるのも難ですが、探偵なんて本当にいらっしゃるのでしょうか?」メイドは弱々しくか細い声で言った。
「心配ない、いるさ。それに、依頼するまでもない。もしあの子が、名家の御子息や裕福な家庭で生まれた子供であれば、今頃、愛する我が子の為に警察署と新聞社を往復しているに違いない! きっと、明日の朝刊には大々的に掲載されるであろう。万一、掲載されなかった場合、()()()で街へ出掛けるからそのついでに調査してみるとしよう」
「そうですか」コニーは顔に暗い影を落とした。
「ところで、イアンの入浴だが、頼めるだろうか?」レオンが遠慮気味に尋ねる。
 コニーはすぐに微笑して、「子供の世話は得意な事をお忘れですか? すぐに取り掛かりますよ」と、答えた。
「とても頼もしい」ふたりは再び部屋に入ると、壁に飾られた風景画を上機嫌に眺めているイアンの元へ歩み寄る。少年はふたりの気配を察し、振り返った。かれは預かっていた手帳をすぐに返し、少年はそれを受け取り、文字を綴ってふたりに見せた。
『サンドイッチとお紅茶とても美味しかったよ、ご馳走さま。僕、キュウリなんて久しぶりに食べたよ』
 ふたりは驚愕し、顔を合わせて沈黙をした。なぜなら、産業革命による工場の増加と英国の気候に適さず栽培困難が合い重なり、裕福な者のみが口にするのを許される高価な輸入野菜である事を十分に認知しているからだ。新たなる謎と疑問が生まれ、少年の生い立ち、度々口するお父さん(ラファエル・グレイ)とは一体何者なのかと、額に手を当てて静かに思索に耽る。
『僕、何か失礼な事を言った?』少年が不安げに眉を寄せて尋ねた。
「いや、口にあったようで何よりだ。イアン、先に風呂へ入ってくると良い。不潔なままでは身体に害を及ぼす」
『分かった』
「イアンさん、行きましょう」コニーは、イアンを連れて部屋を出た。レオンは再び椅子にもたれ、眉を深く寄せながら、香りが薄れたぬるい紅茶を啜った。
「珍しく難しい顔をされているようですね。少し会話を聞いたのですが、コニーにあのようなことを言って大丈夫なのですか?」庭の手入れを終えたアンが静かに歩み寄り、先程まで少年が座っていた椅子にもたれる。
「どうか問題ないと願いたい――情けない話だが、朝刊に掲載されなかった場合、私立探偵に依頼すると咄嗟に口にしてしまったことを少し後悔している。先が思いやられるが、きっと、なんとかなるだろう」かれはため息混じりに言った。
「全くあなたという方は……つい先日、ベティが好奇心で『ロンドンに私立探偵はいらっしゃるのですか?』と尋ねた時、旦那さまは『パディントン駅周辺にいる噂なら聞いた事ある』と、お答えしたのを覚えてますか? あの栄えているロンドンですら噂程度なのですよ。こんな遠く、遠く離れた退屈な田舎にいるとはとても思えません」アンは深刻そうな表情を泛かべて言った。
「アン、君も悲観的なのだな。コニーにも言ったのだが、()()()で街へ出掛けるからそのついでに調査する――街について最も詳しい頼もしい男バーニーに尋ねてみれば有力な情報を得られるかもしれない」
「これでは、まるで旦那さまが探偵のようですね」
「カンタベリーが誰でも探偵として振舞えるようにさせているだけだ」
「そうですね。ところで、差し支えなければ、イアンさんについて、知っている範囲で教えてくれませんか?」
「勿論だ――帰路であるロンドン・ブリッジ駅へ向かっている時の事だった。あの子がロンドン橋の欄干の上で落ちそうになったところを助けたのだよ。その後、親と逸れてしまったものかと思って尋ねてみたら、『父親と逸れてはいない。どこかにいる』と、訳の分からないことを言うのだよ。孤児院、あるいは、警官に引き渡すべきかと悩んだが汽車の出発時間が迫っていたこともあり、仕方なく連れて来た」
「要するに、お優しい旦那さまは迷子のイアンさんを放って置けず保護したのですね」
「何故そうなるのだ。と、言いたいところだが、そう言うことにしておいてくれ。明日の朝刊がとても待ち遠しいよ」
()()()になると、常に逃げ腰な旦那さまとは違って朝刊は逃げませんので、どうかご安心下さい」
 アンのとげとげしい言葉に戦慄が走り、レオンの顔はみるみると蒼白となっていく。重く凍りついた空気とメイドの暗く冷たい冬の海のような眼差しに戸惑い、ぬるい紅茶を一気に飲み干し、「アン。一先ず、俺はあの子の服を探しに行くよ」と、逃げるかのように部屋を出た。すぐさま仄暗い階段を上り、二階へたどり着くと左手には二部屋、右手には四部屋が並んでいる。かれは右折し大きな重い靴で床を鳴らしながら右奥の燻んだドアノブに手を伸ばし、扉を開けた。中は大胆で装飾的な居間とは対照的に、落ち着いた色味のアイボリーの壁に部屋を彩る家具と調度品は最小限に置かれた素朴な空間となっており、隅々まで掃除が行き届き、きちんと整理整頓がされている。どこか寂れた部屋に置かれた箪笥の引き戸を開けると中には仕立ての良い真新しい子供用の花紺青色と紺桔梗色の背広が衣紋掛けに掛けられていた。
 レオンは、それを取り出すと物憂げな眼差しでしばらく見つめた。
「こんな形で下ろす事になるとは……」
 低く憂いを帯びた声で呟いた。真新しい背広に皺がつかぬよう丁重に扱い、純白なシャツ、綿生地の肌着、靴下などを引き出しから取り出し、それらを左腕に掛けて部屋を出た。廊下を横切り、階段を大きく鳴らしながら降り、小走りで浴室へと向かう。ノックをして中に入ると、入浴を済ませた少年の髪を慣れた手つきで優しく拭きながら乾かすコニーに眼を注いだ。
「旦那さま、お召し物は見つかりました?」
 ずしりと左腕に掛けている衣服をメイドに見せた。濡れたタオルをかごの中に入れ、真新しい服を受け取り、イアンに綿生地の肌着、靴下、シャツの順に着せた。
「イアンさん、どちらに致しますか?」花紺青色と紺桔梗色の背広を並べ、少年は交互に眺める。しばらく悩んだのち、花群青色の背広に指を差した。メイドはすぐに指定されたものを着せると、少年は洗面台の壁に設置された鏡の前に立つ。一夜限りの魔法をかけられたかのように美しい自身と対面した少年は頬に赤い影を落とした。小さな幸福に胸を踊らせ、舞踏会で豪華絢爛なドレスを身に纏う淑女のようにくるりと舞うその姿にコニーは微笑みながら筆記用具を渡して「着心地はいかがしょうか?」と尋ねた。
『ピッタリだよ。二着目の背広は次の日に着ても良い?』
「それは既に君のものだから好きな時に着てくれ」
『ありがとう。二着ともレオンの?』
「いや、亡くなった弟リアムのものだ」
 少年は驚愕し、手にした筆記用具を落とした。レオンは少年が落としたものを拾い上げ、再び渡した。「そんな深刻な顔をしないでおくれ。追悼ミサではあるまいのだから……」かれは少年を宥めるかのように言った。
『僕が着ていいの?』
「是非、君に着て欲しい」レオンが語を継いだ。「メイドたちの掃除用具として使われるよりこうして着られる方がリアムもきっと喜ぶ」
『ありがとう。弟さんの事だけど、どうして亡くなったのか聞いても良い?』
「ジフテリアだ。もし生きていたなら今年で十五歳だ」
『僕と同じ歳になってたんだね』
「十五歳だと!? 十二歳前後かと思っていたが、年齢の割には随分と体が小さいな」
 イアンは頬を膨らませ口を尖らせた。『それはレオンが大きいから僕が小人に見えるんだよ――これから大きくなるから見ていてよね!』
 懸命に背伸びする少年の姿に愛おしさを覚えたコニーは口元に手を当て、くすっと笑った。そんなメイドとは対照的にかれは「そうか、期待している」と、不安を含んだ声で答えた。
「旦那さま、イアンさんに屋敷の案内をされてはいかがでしょうか?」
「それは名案だ。ついて来い」
 ふたりは浴室を出て、左の扉を開けると台所でふたりのメイドが会話を弾ませながら夕食の仕込みをしていた。
「見ての通り、ここが台所だ。奥にいる容姿だけが美しい蜂蜜色の髪のメイドがアンだ。手前にいる暗い栗色の髪のメイドが本の虫ベティ、君の世話をしてくれたのが琥珀色の髪のメイドが慌て者のコニーだ。長居は禁物だ――アンたちに仕事を押し付けられる前にさっさと次に行くぞ」
 メイドたちの熱烈な視線を浴びながら逃げるように台所を出ると、玄関ホールに戻り、階段前の扉を開けた。すると、不快感の強い刺激臭が漂い、イアンは未知なる臭いに顔を歪ませ、扉から逃れるように階段を数段登る。
「念の為に言っておくが、仕事場でもあるから出入りは控えるようにしてくれ」
『どんな時に入れるの?』少年は顔を顰めながら尋ねた。
「なら、そこの階段から勢いよく落ちれば良い」
『レオンがテムズ川に身を投げ出したら考える』イアンは初めてレオンに冷めた眼差しを向けて答えた。『それより、他の部屋を案内して欲しい』
 かれは肩をすくめ、異質な臭いに支配された部屋の扉を閉めたのち、再び二階へ上がる。子供部屋に入ると、少年は部屋を見渡す。すると、「元はリアムの部屋だ。しばらくの間にはなるが、今日から君の部屋として好きに使うと良い。それと、向かい側は姉マティルダの部屋になる。十年ほど前に嫁ぎ、今は家にいないが月に一、二回の頻度で帰ってくる。近々顔を出しに来るだろうから姉についてはメイドたちに聞くと良い。ああ、そうだ! 左奥の部屋は整理中だから立入らないように。最後に右隣は俺の部屋だ。その奥が書斎室になっているから本は好きなだけ読んでくれ。きっと退屈せずに済むだろう」と、かれは機械的に喋り続けた。
 瞳をきらきらと輝かせているイアンはレオンの背広の袖を引き、書斎室に連れて行くように求める。かれは喋るのをやめ、要望に応えるべく部屋を出て、書斎室に向かう。扉を開け、中に入ると壁一面を本棚で埋め尽くし、収まりきれない書籍は床と部屋の中央に置かれた机の上に乱雑に積み重ねられ、仄暗い部屋に窮屈な印象を与えた。
 レオンは雑然とした光景に嘆息を洩らし、呟いた。「酷い有様だが、しばらく眼を瞑っていてくれないか。後日、片付ける」
『気にしないよ。ここにある本は読んでも良いの?』
「全て読み尽くす勢いで読んでくれて構わない。一部、ドイツ語の書籍が混ざっているかもしれないが、一旦、どこかに避けてくれ――聞いてないようだな」
 一瞥を与えず、一心不乱に、智慧を取り込む少年の姿にレオンは、小さな愁の影を顔に落とす。イアンの小さな背中を見守り、静かに書斎室を後にした。
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