第二章 IN THE BOX(7)
文字数 4,408文字
『子』の投入結果が発表された。
A→赤1枚 青1枚 黄1枚 緑1枚 白1枚
B→赤1枚 青1枚 白1枚
沙織の祈りが通じた。
全員が間違うことなく、裏切ることなく、指示通りにカードを投入していた。
壮観な眺め……だと思った。
パソコン画面の向こうから、プレイヤーたちの歓喜と賞賛の雄叫びが聞こえてくるような気がした。
沙織の身体が熱く燃えた。これまで味わったことのない興奮が全身を駆け抜け、思わず涙腺が緩む。
……信じてよかった。
そしてこれからWの投入結果が発表される。
ここでもしWが全パターン投入を行なっていなかったら、私はただのピエロ。プレイヤーたちの批難と嘲笑が一気に押し寄せてくる。
これまでとは違ったプレッシャーに沙織の喉はカラカラになった。
Wの投入カードが表示された。
A→赤1枚 青1枚 黄1枚 緑1枚 白1枚
B→赤2枚 青2枚 黄1枚 緑1枚 白2枚。
C→赤2枚 青1枚 黄1枚 白1枚
全パターン投入だ!
喜びよりもほっとした気持ちの方が強かった。
Cに緑の投入がないのは緑を2枚しか持っていなかったからで、Wは持っているカードを全て余すことなく分散して投入していた。
沙織は椅子の背にどっと身体をあずけた。
ふーっと息を吐き出すと、脱力感が急激に襲ってきた。
そして、まるで傍観者のようにWのブロックされたカードが消えていくところを眺めた。
残ったカードは、7枚。
B→緑1枚 黄1枚
C→赤2枚 青1枚 黄1枚 緑1枚
【W(9点 0)】
計画通りWの得点を最少の9点に抑えることができた。
上出来だ、と沙織はひとり満足した。
Wは今頃、苦虫を噛み潰したような苦渋の表情を浮かべているのか……。それとも、なおも王のごとく悠然と構えているのか……。
いずれにしてもここまでやった以上、必ずWを予選で敗退させてみせる。
残る関門はあと2つ。
ついに自分の『親』番が来た。
これが第3の関門。
Wの得点を上回らなければ、Wの得点を9点に抑えた意味がなくなる。
手持ちカード、赤5枚、青1枚、緑2枚、白4枚の計12枚をいかに投入し10点以上に到達させるか。
枚数が足りないため、勿論必勝法の全パターン投入は使えない。
となると『子』のブロックを搔い潜ってカードをパスさせるしかない。
作戦の最初の分岐点は2巡に分けて投入するか、1巡目に全てのカードを投入するかだ。
沙織は目を瞑って、もう一度考えをまとめた。
7、8点獲って2位通過でもいいなら、2巡に分けて投入する方が空振りを多く狙える分、無難だ。だけど、それではWを予選敗退させることはできない。みんな巻き込みWを予選敗退させると宣言した以上、私がWを超えなければただの嘘つきとなってしまう。
ならば小銭を拾うような投入では駄目。
一か八かの投入方法で高得点を狙うしかない。
それにWの動向も気になる。
Wは質問者の最後であるため、1巡目では他のプレイヤーを先導するようなコメントはできないけど、2巡目に対してなら何かを仕掛をしてくるかもしれない。
みんながWの誘導に乗るとは思えないけど、手を出しにくい1巡目の方が安全。
腹は決まった。
よし、行くわよ!
沙織は1巡目に全カードを投入した。
この投入にはちょっとした魔法を掛けた。
その効果が出るかどうかは、……私の運次第。
『子』の質問が始まった。
《さっちん》 ㊕ていうか、Wが9点獲るなんて聞いてないじゃん。
それで予選落ちさせるってことは、9点とる可能性のないあたしは初めっから予選落ち決定してたってことでしょ。なんか騙されたって感じで、超ムカつくんですけど。協力してマジ損した。
それであんただけ予選通過なんて絶対許さない。玄! あんたも道連れにして予選敗退させてやるわ。
あたし、あんたのチャット見て、マジすげー質問閃いちゃったんだよね。自業自得だっつーの。地獄に落ちろ!
投入したカードを誰にもブロックされなかった場合、AとBどちらの合計得点が高くなるか?
同じ場合はAと答えろよ。
さっちんの質問を見て、沙織はふーっと重たい溜息を漏らした。
うわ~、さっちんさんマジで怒ってる……。
ある程度の反感が出るのは覚悟の上だけど、ここまで言われるとさすがにへこむわ~。
でも私は1つも嘘は言ってないし、こうでもしなければWの独走を止められないのも事実。
みんなからの非難は真摯に受け止めて、私がやるべきことは約束通りWを予選敗退させるだけ。
さっちんのチャットは怒りをぶちまけただけのように見えるけど、最後にある質問は『親』の投入パターンを絞り込むのに、実に優れた質問だ。特許を申請するだけのことはある。
性質としてはシンが特許をとった「AとBどちらの投入枚数が多いか?」と同じ方向性であるけど、シンの質問には欠陥がある分、こちらの方が精度が高い。
例えばAに3枚、Bに4枚に投入してある場合、Aの得点は3点×3枚=9点であるのに対して、Bの得点は2点×4枚=8点とAよりも低くなってしまうのに、シンの質問では枚数の多いBが回答になってしまう、という欠陥があった。
その点、さっちんの質問はその欠陥を見事にカバーし、実際に得点が高くなるAが回答となる。精度が上がっているためシンの特許侵害ともならない。
ギャル風だけど、さすがセカンドステージまで進出したプレイヤー、侮れない。
《 玄 》 A
BよりAの方が得点が高くなることがバレてしまった。
次の質問者はどう来る?
《GOGOGO》㊕さっき玄さんはWを予選落ちさせるっちゅう約束でみんなに協力を求めはった。もちろん作戦を練った以上、Wの得点が9点になることは知ってたはずや。知っててそれには触れず、俺たちを嵌めたんや。
気付かへん俺らがアホやったと言えばそれまでやけど、約束は必ず守ってもらわなアカン。
そやから仮に玄さんが予選通過しても、Wも予選通過したらそれは約束違反つうことで、玄さんの予選通過もないものとして欲しいんや。
この条件を特許として申請させてもらうわ。
特許内容
「Wが予選を通過した場合は、玄の予選通過はないものすとる」
Aに赤は入ってまっか?
なにこれ!?
こんなの特許じゃないじゃない。
特許の無効、と訴えようとした、その矢先に……
《主催者》 特許は無効です。玄は質問にのみ簡潔に答えてください。
GOGOGOの質問についていた㊕マークが消えた。
やはり主催者はどこかでこのゲームを監視している。
クイック・リッチ・クラブは金利は暴利で非合法の闇賭博ではあるけれど、ことゲームに関しては今のところ公平で、クオリティの高さが感じられる。
主催者はいったい何者なのだろう? ただの金集めの組織とは思えないけど……。
《 玄 》 はい。
次は写楽の質問。
沙織はここでも相当な非難は覚悟していた。しかし……。
《写 楽》 僕は騙されたという気がしません。みんなが協力しなければ、Wにもっと得点を稼がれていたのも事実だし、Wが強敵なのも嘘ではないと思う。
それに僕はみんなと協力して、計画も一応は成功して(9点はちょっと高い得点だけど)、本当に楽しかった。
こんな気持ち小学校の低学年以来かな。ぼくずっといじめられてたから友達もいなくて協力なんてずっとしたことなかった。
だから玄さん誘ってくれてありがとう。
それにこんなに頑張って、それでもWに勝たれたのなら仕方ないって諦めもつくし。
自分が負けたとしてもそれは自分が弱いからであって玄さんのせいではないと思います。
生意気言ってすみません。
Aに青は入っていますか?
《 玄 》 いいえ。
《シ ン》 俺も騙されたとは思わないな。仮に玄さんが意図的に騙したんだとしても、ここはそういうゲームの場だから騙された方がレベルが低かったということでしょ。相手の方が一枚上手だったって素直に脱帽するよ。
それにWさんの得点を9点で抑えた妙案は正直に凄いと思うし。
俺の予選敗退は確実だけど、もし第2回大会が開催されたらなら俺も玄さんの側になれるように頑張るよ。
Aに黄は入っていますか?
《 玄 》 いいえ。
《サクラ》 わたくしもWさんの9点を見たときは正直、驚きを隠せませんでしたわ。腹も立ちました。
でも、騙されたとは思いません。
わたくしはカードを15枚持っていましたから全パターンに近い投入も可能でしたのに、まったく考えもつきませんでした。
カード12枚の玄さんが気づいたというのに、やはり未熟さが招いたわたくしの責任です。
だからといって予選通過を諦めたわけではありません。
玄さんの得点を抑えることができれば、まだ2位通過の目は残っている信じております。だから申し訳ありませんが、わたくしは玄さんを全力でつぶしに参ります。
Aに緑はお入れになりましたか?
《 玄 》 いいえ。
《廃 人》 あたしはこれまでの人生ずっと騙されて生きてきたから、騙す奴って大嫌いなんだよね。ひとをゴミみたいに扱いやがって、あんなの人間じゃない、ただのダニよ。
でもね、玄さんにはあたしたちを騙そうとした悪意が感じられなかったんだよね。悪い人ではないような気がする。全力で戦っているソルジャーって感じかな。
こんなあたしに対しても、ひとりのプレイヤーとして扱ってくれて、うれしかった。ってあたし、こんなんだからすぐに騙されるのかもしれないね。
Aに白は入っていますか?
《 玄 》 いいえ。
《泥人形》 俺は単純に自分より頭いい奴はすげえと思っちゃう性質だから、仮に騙したんだとしてもみんなを信用させ、Wさんの得点を9点に抑えた玄さんはやっぱりすげえと思うよ。もちろんWもすげえけどね。どっちもすげえ。
俺なんてファーストステージで1勝しただけですぐにセカンドステージ進出を決めちゃった口だから、先の先を読んで細心の注意を払いながら本当の意味での頭脳バトルを続けていたあんたらとは戦っていた土俵が違っていたと痛感したよ。
でもやっぱ、俺も玄さんたちみたいにカッコよくなりたいから、もしまたチャンスあったら今度はもっと気合い入れて頑張るよ。
Bに赤は入ってるか?
《 玄 》 いいえ。
予想以上に自分を擁護するプレイヤーがいることに沙織は正直驚いた。
でもその気持ちは何となく分かる気がした。
みんな孤独で淋しいんだ。人と繋がりがある普通の生活がしたいんだ。
優勝がそのきっかけになることを夢見て、このバトルに参加している人もいるかもしれない。
私もそのひとりだ。
だから私だって負けるわけにはいかない。
勝って、本当の自分を取り戻してみせる。
さて次は、いよいよWの質問の番。
どんなコメントを寄こしてくるか?
玄を追い込む、どんな質問を用意しているのか?
A→赤1枚 青1枚 黄1枚 緑1枚 白1枚
B→赤1枚 青1枚 白1枚
沙織の祈りが通じた。
全員が間違うことなく、裏切ることなく、指示通りにカードを投入していた。
壮観な眺め……だと思った。
パソコン画面の向こうから、プレイヤーたちの歓喜と賞賛の雄叫びが聞こえてくるような気がした。
沙織の身体が熱く燃えた。これまで味わったことのない興奮が全身を駆け抜け、思わず涙腺が緩む。
……信じてよかった。
そしてこれからWの投入結果が発表される。
ここでもしWが全パターン投入を行なっていなかったら、私はただのピエロ。プレイヤーたちの批難と嘲笑が一気に押し寄せてくる。
これまでとは違ったプレッシャーに沙織の喉はカラカラになった。
Wの投入カードが表示された。
A→赤1枚 青1枚 黄1枚 緑1枚 白1枚
B→赤2枚 青2枚 黄1枚 緑1枚 白2枚。
C→赤2枚 青1枚 黄1枚 白1枚
全パターン投入だ!
喜びよりもほっとした気持ちの方が強かった。
Cに緑の投入がないのは緑を2枚しか持っていなかったからで、Wは持っているカードを全て余すことなく分散して投入していた。
沙織は椅子の背にどっと身体をあずけた。
ふーっと息を吐き出すと、脱力感が急激に襲ってきた。
そして、まるで傍観者のようにWのブロックされたカードが消えていくところを眺めた。
残ったカードは、7枚。
B→緑1枚 黄1枚
C→赤2枚 青1枚 黄1枚 緑1枚
【W(9点 0)】
計画通りWの得点を最少の9点に抑えることができた。
上出来だ、と沙織はひとり満足した。
Wは今頃、苦虫を噛み潰したような苦渋の表情を浮かべているのか……。それとも、なおも王のごとく悠然と構えているのか……。
いずれにしてもここまでやった以上、必ずWを予選で敗退させてみせる。
残る関門はあと2つ。
ついに自分の『親』番が来た。
これが第3の関門。
Wの得点を上回らなければ、Wの得点を9点に抑えた意味がなくなる。
手持ちカード、赤5枚、青1枚、緑2枚、白4枚の計12枚をいかに投入し10点以上に到達させるか。
枚数が足りないため、勿論必勝法の全パターン投入は使えない。
となると『子』のブロックを搔い潜ってカードをパスさせるしかない。
作戦の最初の分岐点は2巡に分けて投入するか、1巡目に全てのカードを投入するかだ。
沙織は目を瞑って、もう一度考えをまとめた。
7、8点獲って2位通過でもいいなら、2巡に分けて投入する方が空振りを多く狙える分、無難だ。だけど、それではWを予選敗退させることはできない。みんな巻き込みWを予選敗退させると宣言した以上、私がWを超えなければただの嘘つきとなってしまう。
ならば小銭を拾うような投入では駄目。
一か八かの投入方法で高得点を狙うしかない。
それにWの動向も気になる。
Wは質問者の最後であるため、1巡目では他のプレイヤーを先導するようなコメントはできないけど、2巡目に対してなら何かを仕掛をしてくるかもしれない。
みんながWの誘導に乗るとは思えないけど、手を出しにくい1巡目の方が安全。
腹は決まった。
よし、行くわよ!
沙織は1巡目に全カードを投入した。
この投入にはちょっとした魔法を掛けた。
その効果が出るかどうかは、……私の運次第。
『子』の質問が始まった。
《さっちん》 ㊕ていうか、Wが9点獲るなんて聞いてないじゃん。
それで予選落ちさせるってことは、9点とる可能性のないあたしは初めっから予選落ち決定してたってことでしょ。なんか騙されたって感じで、超ムカつくんですけど。協力してマジ損した。
それであんただけ予選通過なんて絶対許さない。玄! あんたも道連れにして予選敗退させてやるわ。
あたし、あんたのチャット見て、マジすげー質問閃いちゃったんだよね。自業自得だっつーの。地獄に落ちろ!
投入したカードを誰にもブロックされなかった場合、AとBどちらの合計得点が高くなるか?
同じ場合はAと答えろよ。
さっちんの質問を見て、沙織はふーっと重たい溜息を漏らした。
うわ~、さっちんさんマジで怒ってる……。
ある程度の反感が出るのは覚悟の上だけど、ここまで言われるとさすがにへこむわ~。
でも私は1つも嘘は言ってないし、こうでもしなければWの独走を止められないのも事実。
みんなからの非難は真摯に受け止めて、私がやるべきことは約束通りWを予選敗退させるだけ。
さっちんのチャットは怒りをぶちまけただけのように見えるけど、最後にある質問は『親』の投入パターンを絞り込むのに、実に優れた質問だ。特許を申請するだけのことはある。
性質としてはシンが特許をとった「AとBどちらの投入枚数が多いか?」と同じ方向性であるけど、シンの質問には欠陥がある分、こちらの方が精度が高い。
例えばAに3枚、Bに4枚に投入してある場合、Aの得点は3点×3枚=9点であるのに対して、Bの得点は2点×4枚=8点とAよりも低くなってしまうのに、シンの質問では枚数の多いBが回答になってしまう、という欠陥があった。
その点、さっちんの質問はその欠陥を見事にカバーし、実際に得点が高くなるAが回答となる。精度が上がっているためシンの特許侵害ともならない。
ギャル風だけど、さすがセカンドステージまで進出したプレイヤー、侮れない。
《 玄 》 A
BよりAの方が得点が高くなることがバレてしまった。
次の質問者はどう来る?
《GOGOGO》㊕さっき玄さんはWを予選落ちさせるっちゅう約束でみんなに協力を求めはった。もちろん作戦を練った以上、Wの得点が9点になることは知ってたはずや。知っててそれには触れず、俺たちを嵌めたんや。
気付かへん俺らがアホやったと言えばそれまでやけど、約束は必ず守ってもらわなアカン。
そやから仮に玄さんが予選通過しても、Wも予選通過したらそれは約束違反つうことで、玄さんの予選通過もないものとして欲しいんや。
この条件を特許として申請させてもらうわ。
特許内容
「Wが予選を通過した場合は、玄の予選通過はないものすとる」
Aに赤は入ってまっか?
なにこれ!?
こんなの特許じゃないじゃない。
特許の無効、と訴えようとした、その矢先に……
《主催者》 特許は無効です。玄は質問にのみ簡潔に答えてください。
GOGOGOの質問についていた㊕マークが消えた。
やはり主催者はどこかでこのゲームを監視している。
クイック・リッチ・クラブは金利は暴利で非合法の闇賭博ではあるけれど、ことゲームに関しては今のところ公平で、クオリティの高さが感じられる。
主催者はいったい何者なのだろう? ただの金集めの組織とは思えないけど……。
《 玄 》 はい。
次は写楽の質問。
沙織はここでも相当な非難は覚悟していた。しかし……。
《写 楽》 僕は騙されたという気がしません。みんなが協力しなければ、Wにもっと得点を稼がれていたのも事実だし、Wが強敵なのも嘘ではないと思う。
それに僕はみんなと協力して、計画も一応は成功して(9点はちょっと高い得点だけど)、本当に楽しかった。
こんな気持ち小学校の低学年以来かな。ぼくずっといじめられてたから友達もいなくて協力なんてずっとしたことなかった。
だから玄さん誘ってくれてありがとう。
それにこんなに頑張って、それでもWに勝たれたのなら仕方ないって諦めもつくし。
自分が負けたとしてもそれは自分が弱いからであって玄さんのせいではないと思います。
生意気言ってすみません。
Aに青は入っていますか?
《 玄 》 いいえ。
《シ ン》 俺も騙されたとは思わないな。仮に玄さんが意図的に騙したんだとしても、ここはそういうゲームの場だから騙された方がレベルが低かったということでしょ。相手の方が一枚上手だったって素直に脱帽するよ。
それにWさんの得点を9点で抑えた妙案は正直に凄いと思うし。
俺の予選敗退は確実だけど、もし第2回大会が開催されたらなら俺も玄さんの側になれるように頑張るよ。
Aに黄は入っていますか?
《 玄 》 いいえ。
《サクラ》 わたくしもWさんの9点を見たときは正直、驚きを隠せませんでしたわ。腹も立ちました。
でも、騙されたとは思いません。
わたくしはカードを15枚持っていましたから全パターンに近い投入も可能でしたのに、まったく考えもつきませんでした。
カード12枚の玄さんが気づいたというのに、やはり未熟さが招いたわたくしの責任です。
だからといって予選通過を諦めたわけではありません。
玄さんの得点を抑えることができれば、まだ2位通過の目は残っている信じております。だから申し訳ありませんが、わたくしは玄さんを全力でつぶしに参ります。
Aに緑はお入れになりましたか?
《 玄 》 いいえ。
《廃 人》 あたしはこれまでの人生ずっと騙されて生きてきたから、騙す奴って大嫌いなんだよね。ひとをゴミみたいに扱いやがって、あんなの人間じゃない、ただのダニよ。
でもね、玄さんにはあたしたちを騙そうとした悪意が感じられなかったんだよね。悪い人ではないような気がする。全力で戦っているソルジャーって感じかな。
こんなあたしに対しても、ひとりのプレイヤーとして扱ってくれて、うれしかった。ってあたし、こんなんだからすぐに騙されるのかもしれないね。
Aに白は入っていますか?
《 玄 》 いいえ。
《泥人形》 俺は単純に自分より頭いい奴はすげえと思っちゃう性質だから、仮に騙したんだとしてもみんなを信用させ、Wさんの得点を9点に抑えた玄さんはやっぱりすげえと思うよ。もちろんWもすげえけどね。どっちもすげえ。
俺なんてファーストステージで1勝しただけですぐにセカンドステージ進出を決めちゃった口だから、先の先を読んで細心の注意を払いながら本当の意味での頭脳バトルを続けていたあんたらとは戦っていた土俵が違っていたと痛感したよ。
でもやっぱ、俺も玄さんたちみたいにカッコよくなりたいから、もしまたチャンスあったら今度はもっと気合い入れて頑張るよ。
Bに赤は入ってるか?
《 玄 》 いいえ。
予想以上に自分を擁護するプレイヤーがいることに沙織は正直驚いた。
でもその気持ちは何となく分かる気がした。
みんな孤独で淋しいんだ。人と繋がりがある普通の生活がしたいんだ。
優勝がそのきっかけになることを夢見て、このバトルに参加している人もいるかもしれない。
私もそのひとりだ。
だから私だって負けるわけにはいかない。
勝って、本当の自分を取り戻してみせる。
さて次は、いよいよWの質問の番。
どんなコメントを寄こしてくるか?
玄を追い込む、どんな質問を用意しているのか?