異界奇伝 火出づる国の娘

[ファンタジー]

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【力有る者『アヴェ―レ』力無き者『ヌッラ』――火の娘が、世界を変える】
「熱っ!」
差出人不明の手紙で火傷を負ってから、瑠璃の周囲で不可解な現象が起こり始める。
体育の時間、校舎の影で鱗を纏う男を見た。
蛇口から現れた六つ目の白蛇は、息絶える寸前「ヒノムスメ」と言葉を残す。
蛇を掴んだ瑠璃の手は、燃え盛る炎に包まれていた。
やがて様子がおかしくなり始めた友人に急かされ、瑠璃は恐怖を抱いたまま手紙の呼び出し場所である学校の屋上へと向かう。
そして伸し掛かるような曇天の下、彼女は恐ろしくも奇怪な女面と対峙する。
『ワタシタチヲ、カエシテ!!』
老女、幼女、若女。
夥しい数の女達の顔が代わるがわる、恨みの籠もった形相で瑠璃に叫ぶ。
耳をつんざく慟哭に瑠璃は怯え、泣き、場に蹲る。
声は叫ぶ。
女達は訴える。
自分たちをカエセ、と何度も。
「私はあんた達なんて知らない!! 関係ない!!」
瑠璃がそう叫んだ瞬間、声は途絶えた。
だが女面は再び、静かに重く、彼女に宣告する。
「お前も」
「お前も呼ばれる」
「私達と同じように」
「そして、殺される」
次の瞬間、瑠璃の身体は大きく空へと投げ出された。
落ちていく身体。しかし訪れたのは衝撃ではなく、水の感触で。
潮の香りを嗅いだと同時に、瑠璃は見知らぬ場所にいた。
朧気な視界に真っ白な壁が映る。頭上には、瑠璃を取り囲み見下ろす男達の影。
凍えて動かない身体に混乱しながら瑠璃は必死に助けを求めた。けれど。
『殺せ』
およそ血が通うとは思えぬ冴え冴えとした青い目、青い髪の男が冷酷に吐き捨てた。
瑠璃の瞳に、振り下ろされる刃が映る。
死が迫る寸前、彼女の意識は遠ざかり―――燻る『何か』が燃え広がり、すべてを―――焼き尽くした。
―火の娘―
そう、誰かが言った。
水の力が勢力を誇る異世界帝国『ヌドマーナ』。
力有る者『アヴェ―レ』。力無き者『ヌッラ』。
人々が二つの階級にわかたれる世界で、火の国より降りた少女は生き抜いていく。


※「小説家になろう」サイトにも掲載しています。

登場人物

主人公


橘瑠璃(アズーロ) 16歳

背中までの長い黒髪・焦げ茶色の目・顔立ちは幼い・胸は平均・身長156cm

高校に入学して二週間で屋上に呼び出された

話が進むにつれ精神的な強さを得る

ヒーロー


ザクセン=ヴァラン 26歳

水色の髪をした艶麗な眼鏡青年。本来は真っ青な髪をしている

ロベリア専属執事

奴隷の子にして龍蛇の純血。ヌドマーナ帝国の失われた皇子

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小説情報

異界奇伝 火出づる国の娘

国樹田 樹  kunikidaituki

執筆状況
連載中
エピソード
5話
種類
一般小説
ジャンル
ファンタジー
タグ
異世界転移, 人柱/巫女, 日本神話, 異能, 階級世界, 差別/偏見/奴隷制度, まほろばの娘たち
総文字数
13,877文字
公開日
2024年08月13日
最終更新日
2024年09月19日
ファンレター数
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