心に何が用意されているのだろう

[学園・青春]

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 カクヨムWeb小説短編賞2019中間選考現代ファンタジー部門通過作品

 大学に入学した田村は、生物の授業で美術科の野本沙希と出会った。
野本沙希はメガネをかけた生気の抜けた干物のような女だ。将来、美術を活かして何かしたいと言うが、毎週生物の授業で会うたびに、将来の希望職種が変る。
 しかし、彼女が自分の中にある何かを表現しようとしている事に、田村は気づく。そして田村は野本沙希が語る希望職種に耳を傾けた。
 前期の試験が終ると、学内で野本沙希を見なくなった。
 大学病院近くの喫茶店に入った田村は、そこで店長として甲斐甲斐しく働く野本沙希を見つけた。彼女は伯母の店をまかされて店長をしていた。
「バイトはじめたらハマッちまった。田村が私の話を聞いてくれたように、相手の要望を聞くのも大事だなと思ったら、ここの仕事が単なるバイトじゃなくなったんだ。
 まあ、伯母の店でもあるしな」
 野本沙希の母方の伯母に子どもはいないという。身内の誰かが喫茶店を継がなければ、いずれ喫茶店を廃業すると野本は説明した。
「ああやってくつろいでる客に、日替わりメニューを作ってすすめるんだ。いろいろ喜ばれてる。
 それに、あれだ・・・」
 野本は客と店内の本棚を示した。店内全ての壁は本が詰まっている。客はそこから本を取りだし、客席へもどって読みふけっている。客席は全てソファーだ。一人掛けのソファーも二人掛けのソファーもある。
「漫画か?」
「ああ、全部シリーズ物だ。四コマ漫画もある」
「もしかして・・・」
「うん。この店をやりながら、私の漫画も置きたいんだ。
 大学は卒業するよ。美術を将来に活かすんさ。
 田村がいろいろ私の話を聞いてくれたから、何が自分に合ってるか絞り込めた。
 ありがとうな。今日はおごりだ。のんびりしてけ。
 今日のお勧めはスペシャルブレンドかマンゴージュースと、特製ドレッシングのサラダと・・・」
 今、目の前でメニューを説明する野本沙希はメガネをかけていない。少しふっくらして、血色も良く、とても可愛いい。もう、乾ききった干物みたいな野本沙希はここにはいない。

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小説情報

心に何が用意されているのだろう

牧太 十里  makitajuuri

執筆状況
完結
エピソード
8話
種類
一般小説
ジャンル
学園・青春
タグ
アニメクリエイター, 漫画家, 4個ママンガ, 干物女, 志望職種
総文字数
8,450文字
公開日
2021年07月29日 07:52
最終更新日
2023年01月09日 08:43
ファンレター数
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