超短編コンテスト#4『世界に一つのお仕事小説』結果発表!

  • ツイート
  • ツイート

超短編コンテスト#4

世界に一つのお仕事小説

結 果 発 表 !
 

 

受賞作

「モデル、モデル、詐欺」 
(川勢 七輝 様)
取材(もしくは実体験)を元にした、素晴らしいお仕事小説でした。取材したことを再構成し、過不足なく読み手に届けるセンスが素晴らしいです。仕事のディテール、主人公の悩み、その克服……と、お仕事小説の魅力がぎゅっと詰まった短編小説でした。はっとする一文が要所にあり、「私」が「私達」になるラストもいいです。(確かに、苦労話が好きです!)

 

「鍋の底」
(こたつ 様)
とても格好いいお仕事小説でした。ラスト5行で冒頭から読み返したくなり、ラスト4〜3行で慣れているはずの料理で? と驚き、最終行で可笑しみと可愛さを味わい読了。大正時代に活躍した某文学作家のような筆致、一を描き百を伝える小説力、筆者の手がきちんと仕事をしていることが伝わる描写と、得難い作品を読ませていただきました。作業中に思考が飛躍し、数瞬手を止めて思いに耽る琴子のクセも、最後であぁ、そうだったのかときれいに納得できました!

 

 

全体講評

自らの体験をもとに小説を描くというのは、とても難しい作業かと思います。編集者も簡単には作家の方に頼めないテーマです。しかし、だからこそ、それを乗り越えて書いてくださった応募作は非常に魅力的なものばかりでした。ひとつひとつ読むうちに、これが受賞作だ、と何度思ったことでしょう。数作しか受賞作にできないことがとても申し訳ないです。
みなさん、毎日お疲れ様です。そして執筆、おつかれさまでした。本コンテストにご応募いただいたことを、心より御礼申し上げます。
今後ともみなさんの作品をお待ちしております。われわれもたくさん本を読み、多くの作家の話を聞き、言葉を磨き、良質な選考と講評ができるよう努めます。
今回も本当に、ありがとうございました!

(※連載中の作品、字数をオーバーしていた作品は選外とさせていただきました)

 

 

また読みたい!

「青い袖に腕時計」
目の付け所がとてもいい。ディテールをタイトルにいただいて内容と齟齬がない小説には、名作が多い気がします。本作もその一つです。主人公や川田さんを描くために、社員をやや典型的な悪者にされたのは気になりますが、社会というのはそういうかもしれませんね。とてもいい小説であり、筆者の才能は疑うべくもないのですが、もうあと一歩、強くこちらの感情の域値を超えてくれるものや、長く長くあとをひく余韻があれば、と贅沢なことを夢想してしまいました。

 

「ゲ業で仕事した時の話だ。」
非常に興味深く読みました!  知らない世界を知ることができるのは、お仕事小説の醍醐味ですね。小説で描きたいことを決め、必要な情報を取捨選択し、それらをスムーズに読み手に伝えるためにはどうすればいいか、と試行錯誤していただければ、さらにおもしろく読めたかもしれません!

 

「カプチーノを召し上がれ」
仕事、というテーマに対してまっすぐに向き合い、執筆していただきありがとうございます。おそらく体験をそのまま小説にされただけではないでしょう。すでに刊行されている文庫アンソロジーに収録されていてもおかしくないクオリティでした。描きすぎないのも魅力です。この著者でしか読めない、というポイントがもう一つあれば……!

 

「堀ノ内ソープの朝に」
キャッチーなタイトルに内容で、多彩な描写のセンスにも目を見張るものがあります。句点、読点の使いどころにまだ小説を書きなれていない印象を受けました。会話の切り取り方は天性のものなのでは、と感じます。お客さんに対する私の切り返しも素晴らしい!

 

「子どもが好きだから起業家へ」
実話でも素敵ですし、フィクションでもものすごく素敵です。分量も、このくらいがいいですね。よろしければまたぜひご応募ください。新作を読めることを楽しみにしています。力をいただきました!

 

「マネキンさん」
そう呼ぶのですね。はじめて知りました! お仕事の内容と、佐々木さんの能力について、もう少し近づけて描ければさらによかったのかな、と感じましたが、心温まる素敵な作品でした。一言で変われることって、ありますよね!

 

「ホームヘルパー」
すごいことを考えましたね。発想をしっかり小説化された力量は並並ならぬものがあると思います。お仕事小説、というテーマとの相性と、ラストの日記で、もう少し多くの人がいっぱつでわかる書き方をしていただきたかった(よくばりですみません)、という点から受賞を逃しました……!

 

「図書館司書という仕事」
NOVEL DAYSを訪れているみなさんに、ぜひとも読んでいただきたいです。今回のお題のように補足取材が必要なときは、図書館司書さんに尋ねれば良いですね。

 

「signal」
不思議で、また読みたくなる小説でした。解説しすぎていないところがとてもいいです。星新一さんのショートショートを思い出します。センス溢れる超短編をありがとうございました。

 

「鼻ぐり塚」
映像的な描写がうまく挿し込まれていて、淡々としたなかある感情の起伏がうまく表現されていました。「いずれ君にも分かるさ」も余韻があって良いですが、何かひとつ現在の出来事があり、回想シーンの出来事とつながればより鮮やかに終わったかもしれません!

 

「あたしは「あたしの書く言葉」が好き。」
訥々と独白するような文体と、話題になった二つの事件を織り込まれたことが効果的に作用し、息を詰めて読みました。音楽から小説・俳句・エッセイなどの「書く言葉」へシフトするに至る変化を、もう少しドラマティックに書かれてもよかったかもしれません。

 

「すれ違い感謝」
タイトルもいい、内容、構成、読後感もいい! 仕事の内容もしっかり書いていただいて、バランスがよく魅力もたっぷりでした。一人でも多くの人に読んでほしいです。

 

「焼き肉のアレ」
 ふむふむラードってこうやって切られているんだなぁ……と思ったら! ディテールがしっかりしているため、見事にあちらの世界に連れて行かれました。続きが読みたい。

 

「俺たちゃ違法通関屋」
 おもしろい!! 魅力的な展開に、着地も100点満点。このお題でここまでの"小説"を書けるとは。こちらの意図を超えておもしろい小説を書いてもらったことに脱帽です。Y崎総業のようなAEO事業者の貨物が違法通関屋を経由することがあるのか、など、リアリティレベルを上げるために補足の説明があればさらによかったです。

 

「海に潜る」
無理があるかと思われた設定も、力技でラスト一行に至るための素晴らしいアプローチに変えてくださいました。もっといい宝があるはず、と思う作家ばかりなら、小説界は安泰です。身の引き締まる作品でした。

 

「小説家」
この比喩力! 小説家にも様々なタイプがあるかと思いますが、本作や「海に潜る」のような作家も確かにいますね。創作業の苦悩、困難を他者に伝えるのはなかなか難しいですが、非常にうまく描かれていると感じました。どこか一点、過剰に描いていただければさらによかったかもしれません。

 

「スーパー五丁目開店中」
小説のようなエッセイのようなノンフィクションのような! しかしひとつひとつのエピソードが魅力的で最後まであっという間に読んでしまいました。非常に魅力的な作品なのですが、横糸に比べて縦糸が少し頼りなかったかもしれません。あと一歩で受賞でした。惜しかった!

 

「コーヒーギフトはいかがですか。」
丁寧に誠実に、体験を小説にしていただいた気がします。地に足のついたお仕事小説でした。冒頭で読者に何を期待させ、最後に何を思わせたいかを意識してみるともっと良いかもしれません。また最初の怒声が店長のものだとややわかりづらく、脱稿後にもう少しだけ時間をとって、表現を見直していただくのも効果的な気がします。あとは見せ方、ですね!

 

「小さな工場に咲いたひなげし」
いい小説でした。マグマを外に噴出させず、その行動に出たところが素晴らしいです。その意外性が本作の最大の読みどころかと思いますので、驚きを最大化するためにもっと「私」の性格や考えを逆に振り、多数の会社を訪問する描写を厚くしてもよかったかもしれません。若手従業員のアイディア、気になります!

 

「七ツ葉切手のふしぎな手紙~七ツ葉郵便局・郵便部天国班~」
特殊設定が、ディテールの書き込みによって説得力があるものとなっています。お仕事小説では業務内容の詳細を、読み物として面白く描くことがとても大切で、この作品はそれができています。最後にもうちょっとだけ、ぐっとくるような場面がほしかった!

 

「レンタルサーヴァント(執事)の引きこもり支援」
素晴らしい! 執事レンタルについて調べてしまいました。ミステリーの短編集を読むような魅力がありますね。このあとどんな問題?を解決してくださるのかが気になります。チャットノベルという形式も物語に合っていますね。美容院のあとに大オチを期待してしまったのは贅沢でしょうか!

 

「機微」
仕事自体がトリックとは! ミステリーがうまいですね。手数を増やすか情感を増やすか、読後に強烈な印象を残すために、限られた文字数をどこに割くかが難しいですね。思いきって伏線以外の情景描写を削り、真相のインパクトが増えるようなセリフやエピソードを追加してもよかったかもしれません。

 

「女客」
一度感動したのに! 接客は難しいですね。思わず出張ホストで検索してしまいました。なるほど。まだもっと泣かせてから種明かしでもよかったかもしれません。二人の掛け合いが心地よく、残った字数分読んでいたい気持ちになりました。

 

「晴れの日!」
豪速球、ストレートな小説を受け取りました。書き出しからして、作者を信用して読み始められる安定感があったので、いい予感はしていたのですが、それ以上に爽快でした! 会話と地の文、主人公の葛藤と克服、非常にバランスよく小説にされています。とても素敵なお仕事小説でした。

 

「熱い汁がお好きですか?」
肉球サラダ魅力的です。牛丼食べたい!! 章が細かく分かれていますが、どんどん次を読みたくなってクリックしました。ひと続きのテキストで書くよりも効果的ですね。勉強になります。エピソードひとつひとつが魅力的で、タイトルのつけ方もいいです。あとは短い中にも起承転結があるとさらに面白かった!

 

「夜の終わりに」
観察眼と、それを文章にする能力が素晴らしい……。目の前の情景から色々と考え、思い出すこと、ありますよね。その感覚がとてもきれいに文字にされていました。

 

「生まれ変わり精査員」
創作落語を聞いているような気持ちになりました。ミル貝! コミック原作にも、連作短編集の設定にもなり得るのではないかというウェルメイドな作品でした。視点を持つ死介者が超常的な存在であり、困難を負わせることができないため、強烈な印象を残すのが難しかったかと思います。このオチであれば、いかに公平に精査をしているかを冒頭に印象付けておいてもよかったかもしれないです!

 

「さくらのさくら」
なるほどこうなるとは! 連歌のようです。言葉遊びとは一線を画すクオリティ。桜のある風景とサクラのいる光景が効果的に重なり、また冒頭から読み直したくなるような魅力のある作品でした。素晴らしい。

 

「自然の生きもの、調べます!」
非常に難しい問題を軽妙、かつわかりやすく伝えてくださいました。チャットノベルでこそ、ですね。ハルザキヤツシロランの画像を検索しましたが、力強く、美しかったです。

 

 

ひとことメッセージ

「手紙~生徒から先生へ~」
うまい!  いい生徒ですね。最後のスパイスも◎でした。

「冷たいアイスコーヒー」
微糖……! ”仕事”の定義、私も考えてみます。

「スラム探偵スルルの事件簿 シリーズ」
旅行に連れてってていただいた気持ちです。

「アーキビスト」
こんなお仕事があるとは!

「彼が今いまの仕事につくまで。」
人生とはドラマチックなものですね。

「そのマジシャンにできることは?」
マスターに惚れてしまいます。

「司法書士補助者も悪くない?」
難しいですが、もう少し具体的に仕事内容を知りたかった!

「横浜ふーこ」
リフレインが効果的!

「青の一滴」
青が広がる読後感でした。

「アクアパッツァと二丁目のケイコママの話」
最終行、名文。

「路上で革靴の靴磨き」
知らない場所のことを読めるのはいいですね!

「なんでもない魔女」
ストーリーがほしかった!

「飴のような味の夢」 
素敵なディテール。

「水着の中身は男の子か女の子か」 
推理の先に、犯人たちがどうなったのかを読みたかった!

「部屋」
いい設定ですね。

「ケーキ売りのサンタ」
彼はきっと幸せになりますね。

「消えた携帯USB扇風機」
きれいなオチ!

「オレンジ色は安さの証明」
読みやすさが魅力。

「がんばれ、俳句デカ! ~マダムQとの対決~」 
素晴らしい みなさん読んで ほしいです

「テロルの木馬」
ナイスアイデア!

「椎名さんのヌイグルミ」
訥々とした文体が沁みます。

「サラリーマン竜王戦」
二日目が気になる!

「いじめストッパー鐘鶴まなび」
よく書いてくださいました。

「『誰か』を助ける親孝行」
勉強になります!

「にじのママ」
ラスト、なるほど!

「ホテルサーヴァント〜清掃員〜」
できれば完全新作が読みたいです!

「あかないピアス」
最終行、二度見しました。

「千年」
壮大な助走からのジャンプ!

「異世界転生ビジネス始めました」
なんということでしょう!

「we are trying to be together」
人物への興味か、文章の味わいか、物語の展開か、絞ればさらに魅力的に!

 

素晴らしい作品の数々ありがとうございました!

次回の超短編コンテストのお題は、

8/15に発表いたします!